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ライオン

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 少しの休息を取ってから、時間になる前にパーク・ランドへ下見に行く事にした。祐樹は見慣れた場所であったが、事前に作戦を立てておいたほうが良いという、レオの提案によるものであった。
 大勢で行動すると目立つ為、祐樹とレオの2人で園内を探索する。
 まずは、茶原から指定された風車の前。小学校の遠足なのか写生に没頭する子供たちが大勢いた。
 園内を探索すると様々な動物が目に入る。

「可愛いい!あれは何ですか?」レオが珍しく黄色い歓声を上げる。目の前の柵の中にペンギンがいた。親ペンギンの足元に小さな赤ちゃんペンギンがいて微笑ましい。

「あぁ、あれはペンギンだよ。普通は、寒いところにいるんだけどね」祐樹はペンギンの親子を眺める、レオの表情を見て綺麗な顔だなと改めて感心した。

「へ~!」レオが食い入るようにペンギンを見ている。ほっておいたら一日中でも見ていそうな勢いである。

「レオ、あっちに行こうか・・・・・・」祐樹は他の場所も探索するように促した。

「はい・・・・・・」レオは、少し未練を残しながらも、祐樹の後に続いた。それでも、違う動物が目に入ると、同じような反応を見せた。なにもかにもが初めて見るようで興奮している様子であった。

「次は、あそこに行こう」何気なく祐樹はレオの手を握りエスコートした。自然に握られた手を見てレオは少し照れたような微笑みを見せた。祐樹が誘導したその先には、ライオンの檻があった。
 珍しくライオンがガオーと吼えた。祐樹も何度か動物園でライオンを見たことはあるが、吼えられたのは初めてだった。

「きゃ!」レオが可愛い悲鳴をあげて祐樹の腕にしがみついた。
 レオの意外な反応に祐樹は驚きと同時に可愛いと思った。祐樹は自然と微笑みながらレオを見た。

「すいません・・・・・・!」レオは慌てて、恥ずかしそうに祐樹の腕から手を離した。
 まるでデートでもしているようだと祐樹は錯覚した。
 少しの沈黙を置いてから祐樹は口を開いた。

「こいつは百獣の王と呼ばれるライオンだ。ウロウロしているのがメス、鬣があるのがオス。アフリカに生息していてメスが狩りをして、オスはずっと寝ているそうだ。ラテン語とか、ギリシャではレオって言うらしいぞ!」なんだか昔そのような話を聞いたような気がしたので、適当ではあったが祐樹は解説を試みた。

「私と同じ名前、レオですか・・・・・・百獣の王ですか・・・・・気に入りました!」レオは体を乗り出してライオンを見ていた。

「あなた、私と同じなんですね!ガオ!」レオは微笑みながら、ライオンに話しかけた。ライオンの鳴き声を真似る姿が愛らしかった。
 あまりにも、レオがライオンを気に入ったようなので、祐樹は売店でライオンのキーホルダーを買ってレオに渡した。

「えっ・・・・・・私にですか?」キーフォルダーを受け取りレオは驚いたような表情を見せた。

「せっかくだから・・・・・・、ライオン気に入ったみたいだしな」祐樹は少し照れた顔をして、鼻の頭を掻きながら空を仰いだ。

「有難うございます!一生大切にします!」レオは両手で大事そうにキーホルダーを包んだ。

 その後もしばらく二人は、パーク・ランドの中を探索した。
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