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kiss me

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 祐樹とガイダー達は、瓦礫の中を歩いている。

「本当に、良かったのですか・・・・・・」レオが唐突に問いかけた。その顔は少しうつむき気味になっている。なにか怒っているような気もする。

「えっ?」祐樹は質問の意味が判らず聞き返した。自分がなにかレオの機嫌を損ねるような事をしたか頭を回転させる。

「奈緒さんと一緒に居たかったんじゃないのですか・・・・・・?」レオが呟く。顔は祐樹と逆の方向に向けられている。その動作は明らかに、少女がやきもちを焼いている仕草であった。初めてあった頃とは、レオの雰囲気がかなり変わったなと祐樹は驚いていた。

「うーん、俺には、レオ達が居るから・・・・・・、お前達と一緒に生きていくよ!」祐樹は少し空を見上げながら返答をした。少し空が暗くなり星が見えてきていた。
 その言葉を聞いてか、レオの顔がバラの花が開くように微笑みに変わった。

「でも、あんなのを見せられたら・・・・・・」パンが少し拗ねたように呟く。腕を後ろに組んで下を向いている。

「なに?」祐樹はパンが何を言っているのか分からなかった。

「濃厚なキッスだったよな!」ダンが頭の後ろに手を組みながら歩いている。

「濃厚って・・・・・・、フレンチキッスってやつだろ!」先ほどの奈緒とのキッスのことなのかと祐樹は理解した。レオのやきもちの原因も、それかと祐樹は再確認をした。

「えっと、それよりさぁ・・・・・・」祐樹は話題を変えようと思考を巡らす・・・・・が、なにも出てこない。

「ご主人様・・・・・・パンもフレンチキッスが欲しいのです」パンが頬を赤らめて、可愛く口を突き出す。

「ニールも、ニールも! 」ポケットから飛び出したニールも同じように、唇を突き出す。

「俺は、もっと濃厚な奴がいいな」ダンが言いながら舌をだして自分の唇を舐めた後、ヨダレを手で拭っていた。

「・・・・・・・今夜は、寝かさない・・・・・・フフフフフ 」ソラが感情の無い声を漏らす。また、幸の薄い笑いを浮かべている、
祐樹はゆっくり後ずさりする。

「レオ、レオ助けて・・・・・ 」こんな時は、唯一まともなレオに助けを求めるに限る。

「私もフレンチキッス・・・・・・、羨ましいです」レオが前に手を組みモジモジしている。レオが頬を赤らめて、恥ずかしそうにしている姿を見て不覚にも可愛いと祐樹は思ってしまった。

「レオまで・・・・・・・、堪忍してくれ!」祐樹はそういうと走って逃走した。そのスピードはまるで脱兎の如く機敏であった。

「あっ、逃げた・・・・・・待て!」ダンは、祐樹の後を追いかけた。

「私も!」パンが続く、「待て・・・・・・」その後をソラも走っていく。

「フフフ!」レオも追いかけていく。その表情は幸せに満ちた少女のものであった。

「もう、だれか助けて~!」祐樹の悲鳴が空に響いた。

「もう、皆、子供なんだから・・・・・・ウフフフ 」ニールは可愛く微笑みながら宙高く舞って後を追っていった。

 空には、沢山の星が輝いていた。


                                 (おわり)
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