22 / 64
吼えろ!バーニング・エンジェルズ (ヒロイン編)
祭りの前に……。
しおりを挟む
暗い夜道。
狩屋は勤務時間を終えて帰路の途中であった。
先輩に「一杯、やっていかないか?」と誘われたが明日も早朝勤務の為、丁重にお断りした。
ネクタイが苦しくなったので、首元に人差し指を差込みネクタイを緩めた。
なんだか、喉が渇いてきた。
(やっぱり、少しアルコールが欲しいな・・・・・ )
途中で自動販売機を見つけて、狩屋はビールを一本購入した。
プルトップに手をかけて栓を開けようとしたところで人の気配がした。
ふと暗闇の中に目をやると、電信柱の辺りに人影が見える。
なんだか見覚えのある顔であった。
「君は・・・・・・!」その顔は、妹の有紀と同じ高校に通うナオミという少女であった。
ナオミは見覚えのある制服を着ていた。有紀と同じ制服だと狩屋は思い出した。
「ナオミさんだったね、どうしたの?こんな時間に」時計は夜の九時前であった。
「すいません、驚かせてしまって。散歩です」ナオミは、適当な言い訳をした。
「散歩か・・・・・・、こんな時間に制服姿で外出していると危ないよ」狩屋はビールをジャグラーのように両手の間で左右に投げた。
「すいません」ナオミは舌を出しながら会釈した。
「狩屋さんって、オジサンみたいですね」ナオミは狩屋が持つビールに目をやった。
「あぁ、格好悪いところ見せちゃったかな」狩屋は恥ずかしそうに後頭部を軽く掻いた。
「ちょっとだけ、狩屋さんとお喋りしたかったんですけど・・・・・・ 駄目ですか?」ナオミは後ろに手を組みながら軽く上目使いでお願いをした。
「俺は別に構わないけれど、家の人は大丈夫なのかい?」少し心配そうな顔をして彼女の顔を見た。
「ええ、お父さん・・・・・・達には、キチンと言って来ています」ナオミの頭の中に腕組みをするムツミの姿が浮かんだ。ナオミはその思いを掻き消すように頭を振った。
「そうか、それなら少し歩こうか」二人は、夜道を恋人のように並んで歩き出した。
初めに口を開いたのは、狩屋だった。
「有紀に聞いたよ。ナオミさんは学校で凄い人気物なんだってね。有紀は学校のアイドルだって言っていたよ」彼は眉毛の辺りをポリポリと掻いた。
「そんなことないですよ」ナオミは頬を赤らめて少し否定した。ナオミは、シオリ達のように目立った事はしていないが、そこがコアなファンを刺激して特工ミステリアスガールといわれているそうである。
狩屋はプルトップを空けるとビールがプシュと音を立てて泡を吹いた。
「あわわわわ!」狩屋は慌ててビールの泡を口で拭った。
「うふふ!やっぱりおじさん」その様子を見て、ナオミは自然と笑いがこぼれた。狩屋はそのまま、ビールを一口飲んだ。
「おじさんが酷いな!あっ、ごめんね、俺だけ・・・・・・ナオミさんも何か飲むかい?」狩屋は立ち上がり、ポケットの中の小銭を探した。
「いいえ、私は結構です」ナオミは微笑みながら軽く両手を振った。
「えっどうしたの?」笑いつづけるナオミを見て狩屋は聞いた。
「いいえ、狩屋さんもビール飲むだって思って」ナオミは少し意外そうな顔をした。
「ああ、たまにね。でも家で飲むと妹がうるさくってさ」少ししか飲んでいないはずなのに、狩屋の頬は少し赤くなっている。本来アルコールは強くないほうなのであろう。
狩屋とナオミは、公園の中へと足を運ぶ。少し園内を歩いてから、空いているベンチを見つけた。ベンチにハンカチを敷いて狩屋がナオミに座るように促す。そのフェミニストのような行動に感心しながらナオミはスカートの裾を両手で押さえ座った。その隣に狩屋が腰を下ろす。
「有紀さんはお兄さんの自慢ばかりするんです。まるで、自分の彼氏の話をするようですよ」少し口を尖らせるような仕草をした。すこしやっかみが入っているようである。
「あいつは昔からブラコンの気があったからな。彼氏でも出来れば変わるんだろうけどね」狩屋は、両肘を膝に付き前のめりの姿勢をしている。もう一度、ビールを口に含んだ。
「そういえば、この前は俺が眠っている間にナオミさんが屋上まで運んでくれたのかい?」狩屋がナオミの方に顔を向けた。
「えっ、いいえ、あれは・・・・・どこかの、男の人が助けに来てくれたんです」
ナオミは誤魔化すように目の前で両手の人差し指を、コンパスのように閉じたり開いたりしている。
「そうか、男の人か。なんだか柔らかい膝枕で眠っていたような感じがしたんだけど」
シオリが狩屋を膝枕で寝かせていたことを思い出した。少しナオミは嫉妬した感覚が蘇ってきた。
「狩屋さんは、美穂・・・・・・さんの事、どう思いますか?」ナオミは唐突に話題を変更した。
「美穂ちゃん?そうだな、妹の友達だけど、可愛い子だよね。なんだか、ほっとけないっていうか・・・・・・」
「ほっとけない・・・・・・ですか」
「なんだか危なっかしいというか、助けてあげなきゃって思わせる子だよね」ビールをもう一口飲んだ。狩屋は、「ふー」とため息をついた後、空を見上げた。
「美穂の事は、好きですか?」
「急にどうしたの? そうだな・・・・・・、彼女はもう一人の妹って感じかなぁ」
「そうですか・・・・・・、妹ですか」ナオミは足をブラブラさせている。
「今日は、星が見えるね。この辺でこんなに星が見えるのは久しぶりだ」狩屋は唐突に話題を変更した。
「本当ですね・・・・・・」ナオミの目には、天体望遠鏡で見るように、たくさんの星が見えている。
バーニの視力は人間の数倍であった。
簡易なプラネタリウムを二人で見ているよな錯覚に囚われる。
「本当に、綺麗」夢見心地でナオミはウットリとした顔で空を見上げた。
「私、そろそろ帰ります」ナオミはベンチから立ち上がった。心地よい風が吹いている。
「大丈夫かい? 送っていくよ」狩屋も立ち上がり、飲み干したビールの缶を近くのゴミ箱に捨てた。
「大丈夫です。家は近くですから、それに送り狼って事もありますし!」
「ひどいな!妹の友達にそんな事はしないよ」
「冗談ですよ、冗談」ナオミは両手を顔の前で振りながら謝った。
「それでは、失礼いたします」ナオミはスカートの裾を軽くつまんでお辞儀をした。
二人は公園の入り口まで歩いた。
「そうか。それじゃナオミさん気をつけて。 お休み!」狩屋は右手を上げた。
「はい!純一さんも・・・・・・気をつけてください。お休みなさい!」もう一度お辞儀をした後、ナオミは駅の方向に向かって走っていた。その頬は少し濡れているようであった。
「面白い子だな・・・・・・純一さんか」狩屋は微笑みながらナオミの後姿を見送った。ナオミの姿が見えなくなってから、再び帰路に戻った。
別れた二人を暗闇から見つめる二つの目があった。
「あの男が、ナオミの弱点か」そう呟くと、声の主は姿を消した。
狩屋と交わした時間の余韻に浸りながらナオミは一人、防高を目指していた。
美穂に戻る事が無くなってから研究室で寝泊りするようになった。
シオリ達も一緒に生活しており、なんだか学生寮のような雰囲気になっている。
カプセルに入る必要もなくなり塔内に部屋をあてがわれた。ちなみにナオミは、ムツミと二人部屋であった。
防高に到着したが、当然のように校門の扉は閉鎖している。ナオミは両目の涙を手の甲で拭った。
少し深呼吸をして、ナオミは軽くしゃがんでからジャンプをして学校の塀を飛び越えた。
校内に着地すると、ゆっくり別館を目指してあるいて行った。
別館の中に入ると、今晩も相変わらず二人の男が入り口を警備している。
この二人は何時、家に帰っているのだろうとナオミは感心した。
「おかえりなさい! ナオミさん」男達はにっこりと笑い挨拶をした。
「あっ、ただいまです・・・・・・」あきらかに初めの頃と対応が変わっていた。いや、美穂の時と対応が全く違うといったほうが正解であろう。
ナオミは、静脈認証の機器に手首を当ててから研究室の中に入った。
バー二の体も人間と同様に静脈のような組織が存在するようだ。出来る限り人間と同じにという北島とその父親のこだわりであったようだ。
扉を開けて研究室の中に入ると、マイクを片手に踊るミコトの姿があった。隅でため息をつく北島と野澤の姿が見えた。
「ミコトちゃん・・・・・、一体、何をしているの? 」
「あっ! ナオミお姉ちゃん、おかえり!」よく見ると、ミコトはフリルの付いた可愛らしい洋服を着ている。その姿は、流行りのアイドル歌手のようであった。
「可愛いい!」声を上げたのは、扉の外から覗き込む黒服ガードマンであった。ナオミは確認せずに馬のように後ろ足で扉を蹴り閉めた。
周りを見ると皆、個性的な衣装で発声練習をしている。
ムツミは、着物を羽織って演歌のようにコブシを回す練習をしている。その前にはろうそくが並べてあり火が灯されている。歌声で炎を消すそうだ。
イツミは、オーバーオールを着てギターを弾いている。哀愁の漂う歌を歌っている。
フタバは、バスタオルを肩に掛けて、マイクスタンドを持って熱唱している。
なぜか昭和の臭いがプンプンする。
「皆さん、何をしているのですか?」ナオミは少し後ずさりしながら、先ほどミコトに聞いた質問をもう一度した。
「あっ、ナオミちゃん!おかえり!」ムツミがマイクを口に当てて言葉を発した。おかえりの言葉がエコーしている。
「ムツミさん!一体この騒ぎはなんなのですか? 」
「ああ、これや、これ!」ムツミが壁を指差す。
その先には、今朝見た時には無かった筈のポスターが貼られていた。
(えーと・・・・・・、特工エンジェルズ・・・・・・ ファースト・ライブ? )
「なんじゃこりゃ!」ナオミは思わず叫んだ。
そのポスターには、特工のメンバーが並び、コンサートの告知がされている。
「なんですかこれは?」ポスターを指差しナオミは聞いた。指差した指が激しく震えている。
「いやー!学生の子らが企画したみたいやで。 知らん間にポスターまで作ってくれて、面白そうやからやってみよ!って話になったのよ」ムツミは、マイクを握りしめたままだ。 エコーがよく効いている。
「ちょっとムツミさん。マイクを離してください!私達、目立つなって言われていたんじゃないのですか?」バー二になった直後、北島にナオミは言われた事を思い出した。
「べつに、バー二としてではなくて、唯の女子高生としてなら、少しくらい目立っても構わないと思うけど」イツミさんがギターの弦を弾きながら意見を述べた。
「少しって・・・・・・」ナオミは少しの尺度が分からなかった。
「やりたいことをやる!それが俺達の生き方!そこんとこヨロシク!」フタバの事は無視することに決めた。
「ちょっと貴方達、騒がしくてよ」シオリの声が聞こえた。
「シオリさーん!なんとかしてください。皆が・・・・・・」そこまで言ってナオミは言葉を発する事を止めた。
ナオミの目の前に、聖子ちゃんカットのシオリが立っていた。
狩屋は勤務時間を終えて帰路の途中であった。
先輩に「一杯、やっていかないか?」と誘われたが明日も早朝勤務の為、丁重にお断りした。
ネクタイが苦しくなったので、首元に人差し指を差込みネクタイを緩めた。
なんだか、喉が渇いてきた。
(やっぱり、少しアルコールが欲しいな・・・・・ )
途中で自動販売機を見つけて、狩屋はビールを一本購入した。
プルトップに手をかけて栓を開けようとしたところで人の気配がした。
ふと暗闇の中に目をやると、電信柱の辺りに人影が見える。
なんだか見覚えのある顔であった。
「君は・・・・・・!」その顔は、妹の有紀と同じ高校に通うナオミという少女であった。
ナオミは見覚えのある制服を着ていた。有紀と同じ制服だと狩屋は思い出した。
「ナオミさんだったね、どうしたの?こんな時間に」時計は夜の九時前であった。
「すいません、驚かせてしまって。散歩です」ナオミは、適当な言い訳をした。
「散歩か・・・・・・、こんな時間に制服姿で外出していると危ないよ」狩屋はビールをジャグラーのように両手の間で左右に投げた。
「すいません」ナオミは舌を出しながら会釈した。
「狩屋さんって、オジサンみたいですね」ナオミは狩屋が持つビールに目をやった。
「あぁ、格好悪いところ見せちゃったかな」狩屋は恥ずかしそうに後頭部を軽く掻いた。
「ちょっとだけ、狩屋さんとお喋りしたかったんですけど・・・・・・ 駄目ですか?」ナオミは後ろに手を組みながら軽く上目使いでお願いをした。
「俺は別に構わないけれど、家の人は大丈夫なのかい?」少し心配そうな顔をして彼女の顔を見た。
「ええ、お父さん・・・・・・達には、キチンと言って来ています」ナオミの頭の中に腕組みをするムツミの姿が浮かんだ。ナオミはその思いを掻き消すように頭を振った。
「そうか、それなら少し歩こうか」二人は、夜道を恋人のように並んで歩き出した。
初めに口を開いたのは、狩屋だった。
「有紀に聞いたよ。ナオミさんは学校で凄い人気物なんだってね。有紀は学校のアイドルだって言っていたよ」彼は眉毛の辺りをポリポリと掻いた。
「そんなことないですよ」ナオミは頬を赤らめて少し否定した。ナオミは、シオリ達のように目立った事はしていないが、そこがコアなファンを刺激して特工ミステリアスガールといわれているそうである。
狩屋はプルトップを空けるとビールがプシュと音を立てて泡を吹いた。
「あわわわわ!」狩屋は慌ててビールの泡を口で拭った。
「うふふ!やっぱりおじさん」その様子を見て、ナオミは自然と笑いがこぼれた。狩屋はそのまま、ビールを一口飲んだ。
「おじさんが酷いな!あっ、ごめんね、俺だけ・・・・・・ナオミさんも何か飲むかい?」狩屋は立ち上がり、ポケットの中の小銭を探した。
「いいえ、私は結構です」ナオミは微笑みながら軽く両手を振った。
「えっどうしたの?」笑いつづけるナオミを見て狩屋は聞いた。
「いいえ、狩屋さんもビール飲むだって思って」ナオミは少し意外そうな顔をした。
「ああ、たまにね。でも家で飲むと妹がうるさくってさ」少ししか飲んでいないはずなのに、狩屋の頬は少し赤くなっている。本来アルコールは強くないほうなのであろう。
狩屋とナオミは、公園の中へと足を運ぶ。少し園内を歩いてから、空いているベンチを見つけた。ベンチにハンカチを敷いて狩屋がナオミに座るように促す。そのフェミニストのような行動に感心しながらナオミはスカートの裾を両手で押さえ座った。その隣に狩屋が腰を下ろす。
「有紀さんはお兄さんの自慢ばかりするんです。まるで、自分の彼氏の話をするようですよ」少し口を尖らせるような仕草をした。すこしやっかみが入っているようである。
「あいつは昔からブラコンの気があったからな。彼氏でも出来れば変わるんだろうけどね」狩屋は、両肘を膝に付き前のめりの姿勢をしている。もう一度、ビールを口に含んだ。
「そういえば、この前は俺が眠っている間にナオミさんが屋上まで運んでくれたのかい?」狩屋がナオミの方に顔を向けた。
「えっ、いいえ、あれは・・・・・どこかの、男の人が助けに来てくれたんです」
ナオミは誤魔化すように目の前で両手の人差し指を、コンパスのように閉じたり開いたりしている。
「そうか、男の人か。なんだか柔らかい膝枕で眠っていたような感じがしたんだけど」
シオリが狩屋を膝枕で寝かせていたことを思い出した。少しナオミは嫉妬した感覚が蘇ってきた。
「狩屋さんは、美穂・・・・・・さんの事、どう思いますか?」ナオミは唐突に話題を変更した。
「美穂ちゃん?そうだな、妹の友達だけど、可愛い子だよね。なんだか、ほっとけないっていうか・・・・・・」
「ほっとけない・・・・・・ですか」
「なんだか危なっかしいというか、助けてあげなきゃって思わせる子だよね」ビールをもう一口飲んだ。狩屋は、「ふー」とため息をついた後、空を見上げた。
「美穂の事は、好きですか?」
「急にどうしたの? そうだな・・・・・・、彼女はもう一人の妹って感じかなぁ」
「そうですか・・・・・・、妹ですか」ナオミは足をブラブラさせている。
「今日は、星が見えるね。この辺でこんなに星が見えるのは久しぶりだ」狩屋は唐突に話題を変更した。
「本当ですね・・・・・・」ナオミの目には、天体望遠鏡で見るように、たくさんの星が見えている。
バーニの視力は人間の数倍であった。
簡易なプラネタリウムを二人で見ているよな錯覚に囚われる。
「本当に、綺麗」夢見心地でナオミはウットリとした顔で空を見上げた。
「私、そろそろ帰ります」ナオミはベンチから立ち上がった。心地よい風が吹いている。
「大丈夫かい? 送っていくよ」狩屋も立ち上がり、飲み干したビールの缶を近くのゴミ箱に捨てた。
「大丈夫です。家は近くですから、それに送り狼って事もありますし!」
「ひどいな!妹の友達にそんな事はしないよ」
「冗談ですよ、冗談」ナオミは両手を顔の前で振りながら謝った。
「それでは、失礼いたします」ナオミはスカートの裾を軽くつまんでお辞儀をした。
二人は公園の入り口まで歩いた。
「そうか。それじゃナオミさん気をつけて。 お休み!」狩屋は右手を上げた。
「はい!純一さんも・・・・・・気をつけてください。お休みなさい!」もう一度お辞儀をした後、ナオミは駅の方向に向かって走っていた。その頬は少し濡れているようであった。
「面白い子だな・・・・・・純一さんか」狩屋は微笑みながらナオミの後姿を見送った。ナオミの姿が見えなくなってから、再び帰路に戻った。
別れた二人を暗闇から見つめる二つの目があった。
「あの男が、ナオミの弱点か」そう呟くと、声の主は姿を消した。
狩屋と交わした時間の余韻に浸りながらナオミは一人、防高を目指していた。
美穂に戻る事が無くなってから研究室で寝泊りするようになった。
シオリ達も一緒に生活しており、なんだか学生寮のような雰囲気になっている。
カプセルに入る必要もなくなり塔内に部屋をあてがわれた。ちなみにナオミは、ムツミと二人部屋であった。
防高に到着したが、当然のように校門の扉は閉鎖している。ナオミは両目の涙を手の甲で拭った。
少し深呼吸をして、ナオミは軽くしゃがんでからジャンプをして学校の塀を飛び越えた。
校内に着地すると、ゆっくり別館を目指してあるいて行った。
別館の中に入ると、今晩も相変わらず二人の男が入り口を警備している。
この二人は何時、家に帰っているのだろうとナオミは感心した。
「おかえりなさい! ナオミさん」男達はにっこりと笑い挨拶をした。
「あっ、ただいまです・・・・・・」あきらかに初めの頃と対応が変わっていた。いや、美穂の時と対応が全く違うといったほうが正解であろう。
ナオミは、静脈認証の機器に手首を当ててから研究室の中に入った。
バー二の体も人間と同様に静脈のような組織が存在するようだ。出来る限り人間と同じにという北島とその父親のこだわりであったようだ。
扉を開けて研究室の中に入ると、マイクを片手に踊るミコトの姿があった。隅でため息をつく北島と野澤の姿が見えた。
「ミコトちゃん・・・・・、一体、何をしているの? 」
「あっ! ナオミお姉ちゃん、おかえり!」よく見ると、ミコトはフリルの付いた可愛らしい洋服を着ている。その姿は、流行りのアイドル歌手のようであった。
「可愛いい!」声を上げたのは、扉の外から覗き込む黒服ガードマンであった。ナオミは確認せずに馬のように後ろ足で扉を蹴り閉めた。
周りを見ると皆、個性的な衣装で発声練習をしている。
ムツミは、着物を羽織って演歌のようにコブシを回す練習をしている。その前にはろうそくが並べてあり火が灯されている。歌声で炎を消すそうだ。
イツミは、オーバーオールを着てギターを弾いている。哀愁の漂う歌を歌っている。
フタバは、バスタオルを肩に掛けて、マイクスタンドを持って熱唱している。
なぜか昭和の臭いがプンプンする。
「皆さん、何をしているのですか?」ナオミは少し後ずさりしながら、先ほどミコトに聞いた質問をもう一度した。
「あっ、ナオミちゃん!おかえり!」ムツミがマイクを口に当てて言葉を発した。おかえりの言葉がエコーしている。
「ムツミさん!一体この騒ぎはなんなのですか? 」
「ああ、これや、これ!」ムツミが壁を指差す。
その先には、今朝見た時には無かった筈のポスターが貼られていた。
(えーと・・・・・・、特工エンジェルズ・・・・・・ ファースト・ライブ? )
「なんじゃこりゃ!」ナオミは思わず叫んだ。
そのポスターには、特工のメンバーが並び、コンサートの告知がされている。
「なんですかこれは?」ポスターを指差しナオミは聞いた。指差した指が激しく震えている。
「いやー!学生の子らが企画したみたいやで。 知らん間にポスターまで作ってくれて、面白そうやからやってみよ!って話になったのよ」ムツミは、マイクを握りしめたままだ。 エコーがよく効いている。
「ちょっとムツミさん。マイクを離してください!私達、目立つなって言われていたんじゃないのですか?」バー二になった直後、北島にナオミは言われた事を思い出した。
「べつに、バー二としてではなくて、唯の女子高生としてなら、少しくらい目立っても構わないと思うけど」イツミさんがギターの弦を弾きながら意見を述べた。
「少しって・・・・・・」ナオミは少しの尺度が分からなかった。
「やりたいことをやる!それが俺達の生き方!そこんとこヨロシク!」フタバの事は無視することに決めた。
「ちょっと貴方達、騒がしくてよ」シオリの声が聞こえた。
「シオリさーん!なんとかしてください。皆が・・・・・・」そこまで言ってナオミは言葉を発する事を止めた。
ナオミの目の前に、聖子ちゃんカットのシオリが立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました
東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。
王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。
だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。
行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。
冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。
無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――!
王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。
これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~
於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。
現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!
の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては……
(カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています)
(イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる