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吼えろ!バーニング・エンジェルズ (ヒロイン編)
ナオミの力
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指おり数えた日曜日がやってきた。
今日は、狩屋さんと一緒に映画を見に行く・・・・・・筈だったのに・・・・・・。
私はなぜか、ビルの屋上から屋上へジャンプを繰り返していた。
飛び回りながら、眼下の人混みを眺めている。
事の始まりは、シオリさん達が一騎と呼ぶ男が潜伏する拠点が判明したとの情報があったからだ。
一騎が何かを引き起こす前に先手を打つということだ。
シオリさんの話によると、一騎も元々はシオリさん達の仲間で一緒に訓練をしていたそうだ。本来、彼女達が誕生した目的は宇宙開発への進出を念頭においたものであったそうだ。
宇宙服を着用せずに、宇宙空間で生身の人間と同じ動きを実現させる。それは飛躍的に作業の効率を向上すると期待されていたらしい。
さらに個々の個体に特殊な能力を持たせることで、様々な状況に対応できるように設計されたそうだ。
しかし、彼女達は一騎の反乱によって宇宙に出ることは無く、北極の氷のなかに十年弱の間、眠り続けることになった。
「ナオミちゃん・・・・・・」今回、ペアを組んだムツミさんが呟いた。
「えっ、はい!」
「この前、ウチが見ていたパソコンの電源を切るのを忘れていたと思うねんけれど・・・・・・あのデータを・・・・・もしかして見てもうたんとちがう?」
「あっ、・・・・・・ええ見てしまいました」
「そうか、やっぱり・・・・・・そしたら・・・・・・ 」
「バーニ被験者の名前の中に、一人だけ男性の名前がありました・・・・・・吉冨 健一」
吉冨 健一。その名は、私にとっては忘れられない名前だった。
「私の父の名前です・・・・・・」
大久保は、母方の姓。
父が亡くなった後、母も跡を追うかのように病で亡くなったそうだ。私はまだ乳飲み子だったので父母の記憶は全く無い。
幼い私は母方の祖父母に引き取られて育ったために、大久保の姓を名乗るようになった。
「知ってしまったんやなぁ・・・・・・」ムツミさんの声のトーンが珍しく低くなっている。
「はい・・・・・・」一騎が自分の父親だと私は、確信していた。
あの後、私は一騎に関して現存する資料を手当たりしだい調べた。ただ、私の知識では理解は到底不可能であった。
「あんたのお父さんは、信念を持った男気の溢れる人やった。それが、あんな事になってしまって・・・・・」少し目を伏せがちにムツミさんは言った。
「でも、死んでしまって、二度と会える事が出来ないと思っていた父が、まだ生きていると思ったら、・・・・・・私、考えがまとまらなくて・・・・・・」
「運命は皮肉やなあ。まあ今は、仕事に集中することやわな」ムツミさんは私の肩をポンと叩いた。
「はい!」私は思いを切り替えて集中することにした。のだが・・・・・・「あっ!」
「どうかしたん? 」
「いいえ・・・・・・別に・・・・・・」狩屋さんに行けないと連絡するのを忘れていた。
そういえば、一騎が潜伏しているといわれる廃ビルと、ビックビジョンはすぐ近くだった。
狩屋さんに連絡をしなくちゃ!今、ちょうど十時。
指定された待機場所に到着するや否や慌てて、スカートのポケットから携帯端末を取り出して、狩屋さんのスマホをコールした。
この携帯端末は、すべての通信網に侵入することが可能で、一般のスマホのように使用することも可能との説明を受けた。発信番号を偽造する事も可能で、さらに料金も掛からないそうだ。私の携帯通信費がかなり削減できるようになった。
「はい、狩屋ですけど・・・・・・」コール音が途切れて狩屋さんの声がスピーカーから聞こえる。
「ごほん・・・・・・ ごほん・・・・・・、美穂です」少し大げさに咳きをしながら話す。
「すいません・・・・・昨日から、熱が下がらなくて・・・・・・」下手な言い訳で対応する。
ビッグビジョンのあたりが見える場所から、狩屋さんがいないか確認した。
「大丈夫!薬は飲んだのかい?」携帯を片手に少し慌てたような仕草をして喋っている男性の姿が見えた。
(純一さんだ!)
「はい・・・・・・家に、保管分がありましたので・・・・・ごほん・・・・・・ごほん・・・・・・」少し苦しそうに演技してみた。
「熱はあるの・・・・・・暖かくしているの?」優しい声で心配してくれる。
「はい、すいません。今日は、誘っていただいたのに・・・・・・行けそうに・・・・・・行けそうにありません・・・・・・」実は、すぐ近くまできているのですが・・・・・・。
「しかたないよ。今度また、改めて。ゆっくり体を休めるんだよ」
「ありがとうございます・・・・・・」電話の通話表示が消えた。ああ、もう二度と誘ってくれないかもしれない。狩屋さんの優しさに目がウルウルしてきた。
「あんた、何しているの?」ムツミさんが不思議そうな顔でこちらを見ている。
「ちょっと、私事です・・・・・・!」慌てて、携帯端末をポケットに収めた。
廃ビルを囲み少女達は指定場所に待機している。
彼女達はムツミとナオミ、シオリとミコト、フタバとイツミの三チームに分かれていた。
「どうして、避難処置を取らないのですか? 」
日曜日の人混みを見ながら、ナオミはムツミに質問した。
「うちも同感や・・・・・・まぁガセかもしれへんからなぁ。ウチらも、こちらから攻め込むのは本当は、本意ではないんやけどな・・・・・・」耳に小指を差し込んで耳の穴をポリポリと掻いた。
シオリから突入を意味するサインが出た。
少女たちは三方より廃ビルの中へ飛び込み、体制と整えたあと攻撃に備えて構えを取った。
少し長い沈黙の時間が流れた。
人影は無く、いっこうに攻撃を仕掛けてくる様子は無い。
「やっぱり、ガセネタやったんや」ムツミが構えを解き前方を見つめる。
「ちょっと、まだ早くてよ。ムツミ・・・・・」シオリは構えを継続したままムツミと同じ方向に目を凝らして注視している。
赤い光がチカチカと点滅している。
「あれは?」ミコトが目を細めた。「サーモバリック・・・・・・!」暗い部屋の中央に大きな爆弾が固定してある。それは動物園の象ほどの大きさであった。
「罠よ!爆発までに時間が無い!あの規模だと一キロ四方は火の海になるわ!」ミコトが叫んだ。
爆弾の表面に赤い文字がカウントダウンしている。
残り時間は、十五秒!
「逃げている暇は無いわ!私の傍に集まって!」シオリの背中から大きな翼が現れる。
「これで、直撃は回避できるわ!」皆、シオリの翼の中に身を潜める。
「でも、下にいる人達は!」ナオミは狩屋の顔が浮かんだ。
「もう無理や。早く隠れるんや、ナオミちゃん!」ムツミがナオミの手を引っ張る。
「ナオミ、早く!」「ナオミさん!」口々にナオミの名を口にする。
「いや!」ナオミはムツミの手を払い駆け出した。
「ナオミお姉ちゃん!」
「間に合わない!ムツミ戻りなさい!」シオリの翼は大きく広がり、皆を包み丸いボールのように変形した。それはまさにシェルターであった。
「ナオミちゃん・・・・・・」ムツミは唇を噛んだ。 その肩をフタバ握った。
爆弾のカウントダウンが進む。残り・・・・・5・3・2・・・・・・!
ナオミの頭の中を狩屋の顔が走馬灯のように流れていく。
「いや、いや! 純一さん、皆を死なせたくない!」
カウントが0!
「時間よ、止まって!」ナオミは自分の両肩を抱きしめて祈った。その瞬間ナオミの体からピンク色の強烈なオーラが発生した。
同じタイミングで爆弾本体の中心から白い光が放たれた!
・・・・・・。
爆発音はしなかった。
ナオミは恐る恐るゆっくり目を開けた。
周りは無事である様子であった。爆発は回避できたのか・・・。
ナオミは爆弾の方向に目をやる。
「えっ!」
爆弾は弾けている途中であった。まるでスーパースローカメラの静止画のように止まっている。
振り返るとシオリ達を包み込んだ丸いシェルターが転がっている。ビルの眼下の人々も静止画のように途中で静止している。時間が止まっているようだった。
「これは・・・・・・ まさか、私の力!」
ナオミは両手を広げて凝視した。体からピンク色のオーラが湧き出るのが見えた。
「でも、このままじゃ・・・・・・ 」
いくら、時間を止める能力があっても永遠に爆発を止めることは不可能だ。ナオミの視覚の中にカウントを数える文字が表示されている。
三十秒。
それが時間を止めることが出来る限界のようだ。「止まっている時間の制限時間が存在するなんて・・・・・・」ナオミは素朴な疑問を口にした。
(何か、爆発を止める方法はないのから? )考えを巡らしながら、自然と右手を爆弾に向けかざした。その瞬間、爆弾を包むようにピンク色のバリアのようなものが表れた。
「なに、これは?」バリアは右手を移動させると同調して移動する。バリアの中の爆弾もナオミの右手の動きに合わして同様に移動する。
「いける!・・・・・・かも」掌を握ると爆弾を包むバリアの大きさも小さくなった。
ナオミはゆっくりと掌を握り小さくしていった。その瞬間時間が動き出した。
バリアの中で爆弾が弾けた。爆発の振動が波となって微かに空中に響いた。
一向に爆発する様子の無い爆弾を確認する為、シオリがゆっくりと翼を開いた。
その中からムツミ達が姿を現す。
「爆弾はどうなったの・・・・・・お姉ちゃんは? 」ミコトが辺りを見回す。
そこには爆弾があった方向に手をかざしながら、座り込んでいるナオミの姿があった。
「ナオミちゃん、あんたが・・・・・・、すごいやんか!」ムツミがナオミの体に抱きついた。
ナオミは、力が抜けたようにその場にフニャフニャと倒れこんだ。
「きゃー!」外から悲鳴が聞こえる。皆、上空を見て逃げるように走り出した。
上空を見上げると何か巨大な物がブラブラとぶら下がっている。
爆弾が爆発した波動により、ビルに設置しようと吊るされていた看板のワイヤーが切れて、いゆっくりと下に落ちようとしているのだ。
「あっ危ない!」
看板が落ちていった。その下には人形を抱いた小さな女の子が呆然と立っていた。
女の子の頭上に看板が落ちていく。目を見開く少女に大きな影が近づいていく。
「あー!」母親らしき女性の悲鳴が響く。
女の子の危機を察知した男が、看板の下に飛び込んだ。その瞬間、女の子の体が看板の下から弾き飛ばされた。ナオミの体が再びピンクのオーラに包まれた。
時間が止まったように辺りの物体、人がオブジェのように動かなくなった。
ナオミはフラフラになりながら立ち上がり歩きだした。
シオリ達も動かないマネキンのように固まっている。
ナオミはビルの上から看板の下に飛び降りた。そして、男の前にしゃがみ込み顔を見上げた。
「・・・・・・純一さん・・・・・・」少女を助けた男は狩屋だった。看板は狩屋に激突する寸前であった。
「助けなきゃ!」
ナオミはゆっくりと狩屋の体を抱えあげると前方にある路地に飛び込んだ。
今日は、狩屋さんと一緒に映画を見に行く・・・・・・筈だったのに・・・・・・。
私はなぜか、ビルの屋上から屋上へジャンプを繰り返していた。
飛び回りながら、眼下の人混みを眺めている。
事の始まりは、シオリさん達が一騎と呼ぶ男が潜伏する拠点が判明したとの情報があったからだ。
一騎が何かを引き起こす前に先手を打つということだ。
シオリさんの話によると、一騎も元々はシオリさん達の仲間で一緒に訓練をしていたそうだ。本来、彼女達が誕生した目的は宇宙開発への進出を念頭においたものであったそうだ。
宇宙服を着用せずに、宇宙空間で生身の人間と同じ動きを実現させる。それは飛躍的に作業の効率を向上すると期待されていたらしい。
さらに個々の個体に特殊な能力を持たせることで、様々な状況に対応できるように設計されたそうだ。
しかし、彼女達は一騎の反乱によって宇宙に出ることは無く、北極の氷のなかに十年弱の間、眠り続けることになった。
「ナオミちゃん・・・・・・」今回、ペアを組んだムツミさんが呟いた。
「えっ、はい!」
「この前、ウチが見ていたパソコンの電源を切るのを忘れていたと思うねんけれど・・・・・・あのデータを・・・・・もしかして見てもうたんとちがう?」
「あっ、・・・・・・ええ見てしまいました」
「そうか、やっぱり・・・・・・そしたら・・・・・・ 」
「バーニ被験者の名前の中に、一人だけ男性の名前がありました・・・・・・吉冨 健一」
吉冨 健一。その名は、私にとっては忘れられない名前だった。
「私の父の名前です・・・・・・」
大久保は、母方の姓。
父が亡くなった後、母も跡を追うかのように病で亡くなったそうだ。私はまだ乳飲み子だったので父母の記憶は全く無い。
幼い私は母方の祖父母に引き取られて育ったために、大久保の姓を名乗るようになった。
「知ってしまったんやなぁ・・・・・・」ムツミさんの声のトーンが珍しく低くなっている。
「はい・・・・・・」一騎が自分の父親だと私は、確信していた。
あの後、私は一騎に関して現存する資料を手当たりしだい調べた。ただ、私の知識では理解は到底不可能であった。
「あんたのお父さんは、信念を持った男気の溢れる人やった。それが、あんな事になってしまって・・・・・」少し目を伏せがちにムツミさんは言った。
「でも、死んでしまって、二度と会える事が出来ないと思っていた父が、まだ生きていると思ったら、・・・・・・私、考えがまとまらなくて・・・・・・」
「運命は皮肉やなあ。まあ今は、仕事に集中することやわな」ムツミさんは私の肩をポンと叩いた。
「はい!」私は思いを切り替えて集中することにした。のだが・・・・・・「あっ!」
「どうかしたん? 」
「いいえ・・・・・・別に・・・・・・」狩屋さんに行けないと連絡するのを忘れていた。
そういえば、一騎が潜伏しているといわれる廃ビルと、ビックビジョンはすぐ近くだった。
狩屋さんに連絡をしなくちゃ!今、ちょうど十時。
指定された待機場所に到着するや否や慌てて、スカートのポケットから携帯端末を取り出して、狩屋さんのスマホをコールした。
この携帯端末は、すべての通信網に侵入することが可能で、一般のスマホのように使用することも可能との説明を受けた。発信番号を偽造する事も可能で、さらに料金も掛からないそうだ。私の携帯通信費がかなり削減できるようになった。
「はい、狩屋ですけど・・・・・・」コール音が途切れて狩屋さんの声がスピーカーから聞こえる。
「ごほん・・・・・・ ごほん・・・・・・、美穂です」少し大げさに咳きをしながら話す。
「すいません・・・・・昨日から、熱が下がらなくて・・・・・・」下手な言い訳で対応する。
ビッグビジョンのあたりが見える場所から、狩屋さんがいないか確認した。
「大丈夫!薬は飲んだのかい?」携帯を片手に少し慌てたような仕草をして喋っている男性の姿が見えた。
(純一さんだ!)
「はい・・・・・・家に、保管分がありましたので・・・・・ごほん・・・・・・ごほん・・・・・・」少し苦しそうに演技してみた。
「熱はあるの・・・・・・暖かくしているの?」優しい声で心配してくれる。
「はい、すいません。今日は、誘っていただいたのに・・・・・・行けそうに・・・・・・行けそうにありません・・・・・・」実は、すぐ近くまできているのですが・・・・・・。
「しかたないよ。今度また、改めて。ゆっくり体を休めるんだよ」
「ありがとうございます・・・・・・」電話の通話表示が消えた。ああ、もう二度と誘ってくれないかもしれない。狩屋さんの優しさに目がウルウルしてきた。
「あんた、何しているの?」ムツミさんが不思議そうな顔でこちらを見ている。
「ちょっと、私事です・・・・・・!」慌てて、携帯端末をポケットに収めた。
廃ビルを囲み少女達は指定場所に待機している。
彼女達はムツミとナオミ、シオリとミコト、フタバとイツミの三チームに分かれていた。
「どうして、避難処置を取らないのですか? 」
日曜日の人混みを見ながら、ナオミはムツミに質問した。
「うちも同感や・・・・・・まぁガセかもしれへんからなぁ。ウチらも、こちらから攻め込むのは本当は、本意ではないんやけどな・・・・・・」耳に小指を差し込んで耳の穴をポリポリと掻いた。
シオリから突入を意味するサインが出た。
少女たちは三方より廃ビルの中へ飛び込み、体制と整えたあと攻撃に備えて構えを取った。
少し長い沈黙の時間が流れた。
人影は無く、いっこうに攻撃を仕掛けてくる様子は無い。
「やっぱり、ガセネタやったんや」ムツミが構えを解き前方を見つめる。
「ちょっと、まだ早くてよ。ムツミ・・・・・」シオリは構えを継続したままムツミと同じ方向に目を凝らして注視している。
赤い光がチカチカと点滅している。
「あれは?」ミコトが目を細めた。「サーモバリック・・・・・・!」暗い部屋の中央に大きな爆弾が固定してある。それは動物園の象ほどの大きさであった。
「罠よ!爆発までに時間が無い!あの規模だと一キロ四方は火の海になるわ!」ミコトが叫んだ。
爆弾の表面に赤い文字がカウントダウンしている。
残り時間は、十五秒!
「逃げている暇は無いわ!私の傍に集まって!」シオリの背中から大きな翼が現れる。
「これで、直撃は回避できるわ!」皆、シオリの翼の中に身を潜める。
「でも、下にいる人達は!」ナオミは狩屋の顔が浮かんだ。
「もう無理や。早く隠れるんや、ナオミちゃん!」ムツミがナオミの手を引っ張る。
「ナオミ、早く!」「ナオミさん!」口々にナオミの名を口にする。
「いや!」ナオミはムツミの手を払い駆け出した。
「ナオミお姉ちゃん!」
「間に合わない!ムツミ戻りなさい!」シオリの翼は大きく広がり、皆を包み丸いボールのように変形した。それはまさにシェルターであった。
「ナオミちゃん・・・・・・」ムツミは唇を噛んだ。 その肩をフタバ握った。
爆弾のカウントダウンが進む。残り・・・・・5・3・2・・・・・・!
ナオミの頭の中を狩屋の顔が走馬灯のように流れていく。
「いや、いや! 純一さん、皆を死なせたくない!」
カウントが0!
「時間よ、止まって!」ナオミは自分の両肩を抱きしめて祈った。その瞬間ナオミの体からピンク色の強烈なオーラが発生した。
同じタイミングで爆弾本体の中心から白い光が放たれた!
・・・・・・。
爆発音はしなかった。
ナオミは恐る恐るゆっくり目を開けた。
周りは無事である様子であった。爆発は回避できたのか・・・。
ナオミは爆弾の方向に目をやる。
「えっ!」
爆弾は弾けている途中であった。まるでスーパースローカメラの静止画のように止まっている。
振り返るとシオリ達を包み込んだ丸いシェルターが転がっている。ビルの眼下の人々も静止画のように途中で静止している。時間が止まっているようだった。
「これは・・・・・・ まさか、私の力!」
ナオミは両手を広げて凝視した。体からピンク色のオーラが湧き出るのが見えた。
「でも、このままじゃ・・・・・・ 」
いくら、時間を止める能力があっても永遠に爆発を止めることは不可能だ。ナオミの視覚の中にカウントを数える文字が表示されている。
三十秒。
それが時間を止めることが出来る限界のようだ。「止まっている時間の制限時間が存在するなんて・・・・・・」ナオミは素朴な疑問を口にした。
(何か、爆発を止める方法はないのから? )考えを巡らしながら、自然と右手を爆弾に向けかざした。その瞬間、爆弾を包むようにピンク色のバリアのようなものが表れた。
「なに、これは?」バリアは右手を移動させると同調して移動する。バリアの中の爆弾もナオミの右手の動きに合わして同様に移動する。
「いける!・・・・・・かも」掌を握ると爆弾を包むバリアの大きさも小さくなった。
ナオミはゆっくりと掌を握り小さくしていった。その瞬間時間が動き出した。
バリアの中で爆弾が弾けた。爆発の振動が波となって微かに空中に響いた。
一向に爆発する様子の無い爆弾を確認する為、シオリがゆっくりと翼を開いた。
その中からムツミ達が姿を現す。
「爆弾はどうなったの・・・・・・お姉ちゃんは? 」ミコトが辺りを見回す。
そこには爆弾があった方向に手をかざしながら、座り込んでいるナオミの姿があった。
「ナオミちゃん、あんたが・・・・・・、すごいやんか!」ムツミがナオミの体に抱きついた。
ナオミは、力が抜けたようにその場にフニャフニャと倒れこんだ。
「きゃー!」外から悲鳴が聞こえる。皆、上空を見て逃げるように走り出した。
上空を見上げると何か巨大な物がブラブラとぶら下がっている。
爆弾が爆発した波動により、ビルに設置しようと吊るされていた看板のワイヤーが切れて、いゆっくりと下に落ちようとしているのだ。
「あっ危ない!」
看板が落ちていった。その下には人形を抱いた小さな女の子が呆然と立っていた。
女の子の頭上に看板が落ちていく。目を見開く少女に大きな影が近づいていく。
「あー!」母親らしき女性の悲鳴が響く。
女の子の危機を察知した男が、看板の下に飛び込んだ。その瞬間、女の子の体が看板の下から弾き飛ばされた。ナオミの体が再びピンクのオーラに包まれた。
時間が止まったように辺りの物体、人がオブジェのように動かなくなった。
ナオミはフラフラになりながら立ち上がり歩きだした。
シオリ達も動かないマネキンのように固まっている。
ナオミはビルの上から看板の下に飛び降りた。そして、男の前にしゃがみ込み顔を見上げた。
「・・・・・・純一さん・・・・・・」少女を助けた男は狩屋だった。看板は狩屋に激突する寸前であった。
「助けなきゃ!」
ナオミはゆっくりと狩屋の体を抱えあげると前方にある路地に飛び込んだ。
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