振り返るといつもの君がいたような気がした。僕が助けた少女は有名なシンガーソングライターだった。『君の歌と僕の夢……。』

上条 樹

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君とハイヒール

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 大学の講義が終わる。本日は美桜はまだ受講するものが残っているので、先に帰る事とする。
 学校の門を抜けると目の前から黒いスーツに身を包んだ綺麗なスタイルの女の人が歩いてくる。ちょうどすれ違いの瞬間、彼女がよろけた。

「大丈夫ですか?」俺は彼女の体を受け止めた。

「だ、大丈夫だ……、ありがとう」ボーイシュな感じの雰囲気。歳は、二十代後半といったところか。どうやら、履いていたハイヒールの踵がマンホールの隙間に挟まって折れてしまったようである。

「あっ、これ!」俺はマンホールに突き刺さるように立っている踵を取り彼女に渡す。

「参ったな……」頭をポリポリ掻いた。「この辺あたりに靴の修理が出来る店は知らないかい?」あるにはあるが、ここからは結構な距離であった。

「ありますけど、結構歩かないと駄目ですよ」

「ああ、タクシーを拾うよ」踵を受け取るとケンケンするように道の隅に移動した。

「ここは、まずタクシー来ませんよ。大きな道路まで結構距離ありますし……」靴の店に行くのとほぼ変わらない距離であった。

「そうか……、仕方ない……、ありがとう」彼女はそう言うと、不自由そうに歩いていく。

「仕方ないな……」俺は彼女を追いかけて、その前にしゃがむ。「結構な距離ですから、その調子で歩いていくのは無理ですよ」

「えっ!そんな……」彼女は顔を赤らめて断る。

「大丈夫ですよ!困った時はお互い様です。気にしないでください」

「ありがとうございましゅ……」彼女は俺の背中に体重を預けた。なんだか言葉の最後が聞き取れなかった。乙女チックな声に聞こえた。この人は男に負けないように自分を演出しているのだなと感じる。しかし、見た感じはスレンダーな感じであったが背中に当たる胸の感触はたいしたものであった。俺も少し恥ずかしくなって顔が赤くなっていだろう。

「女の人って凄いですよね。ハイヒールってやつ、滅茶苦茶いたそうですよね」

「そうなんだ、でもハイヒールくらいキチンと履けないと仕事も出来ないからね。運動靴じゃあ、なんだかね……」

「いつも、ハイヒールなんですか?」

「い、いいや、普段着はもっとカジュアルだよ……」とりとめのない会話を続けていく。

 そうこうしているうちに靴の修理の店に到着した。彼女をゆっくりと店先に下ろした。

「大変助かったよ。これ、お礼に……」彼女はマネークリップから一万円を外して渡そうとする。

「結構ですよ。そんなつもりではないですから……」その申し出を丁寧に断る。

「しかし……」なんだか納得しないかんじであった。

「じゃあ、もしまた会うことがあったら、飯でも奢ってください」まあ、二度と会うことはないだろうが……。

「解った。私は小野寺おのでら綾あやと言うんだが、……君の名前を教えてもらっても良いかい?」少し顔が赤くなっているような気がする。

「ああ、俺は亮介、滝山亮介といいます」

「滝山……君か、本当にありがとう。きっと一緒にご飯しようね!」年上に失礼ではあるが最後は乙女らしい可愛い笑顔だった。

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