振り返るといつもの君がいたような気がした。僕が助けた少女は有名なシンガーソングライターだった。『君の歌と僕の夢……。』

上条 樹

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君と枕営業

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「金ちゃん、どこかにでかけるの?」桃子が出かけようと玄関で準備をしている。

「金ちゃんて言うな!・・・・・・ちょっとね」彼女はミニのスカートを履き、胸元が少し空いた服を着ている。一瞬ステージ衣装かと思ったが、こんな格好を家からしていく必要はないのではないかと思ったが、一応眼鏡をかけて招待は隠しているようではあった。

「えらいセクシーな恰好で出かけるんだな」ちょっと冷やかすように言ってみた。

「ちっ!」彼女の舌打ちを久しぶりに聞いたような気がした。そのまま無言で立ち上がるとドアを勢いよく玄関を飛び出していった。

「なんなんだよ、一体・・・・・・」俺は不条理な対応に憤慨した。

「桃山桃子は、出かけたのか・・・・・・」唐突に声がしたので、振り返るとそこには小野寺社長が立っていた。珍しくカジュアルなシャツにジーンズであった。白いシャツが大きな彼女の胸を激しく強調している。

「どうかしたんですか?」彼女が何かを知っているように感じた。

「前にも少し言ったが・・・・・・・・、彼女の所属するダークファンタジーっていうプロダクションなんだが、良い噂を聞かなくてな・・・・・・・。いいにくいのだが、どうやら・・・・・・自分の処のタレントに枕営業を強要しているって話を聞くのだが・・・・・・」小野寺社長は少し言いにくそうに頭をポリポリと掻かいた。

「えっ!?」彼女の言葉の意味が一瞬理解出来なかった。枕営業とは、体を使って仕事を取る事なのか。雑誌やテレビで聞いた事はあるが本当にそんな世界があるなんて俺は想像したことも無かった。

「ど、どうして金ちゃんがそんな事を!?」

「それは解からない・・・・・・・、人にはそれぞれ事情があるからな。単純に有名になりたい者、お金の為にやる者・・・・・・、単純に断れない者・・・・・・」柱に体重を預けて姿勢を保っている。小野寺社長のように、芸能界に長く身を置いていると、こういう話は珍しくないのかもしれない。ただ淡々と語る彼女の言葉に俺は少し嫌悪感を感じた。

「ちょっと、俺欽ちゃんの事を探しに行ってきます!」俺は慌てて靴を履くと玄関を飛び出す。

「えっ!?何処へ探しに行くの!」小野寺社長が引き留めるように叫んだようだが、俺の耳には届かなかった。

「どっちだ!?」ひとまず駅のほうに走っていく。いない、どこにもいない。それじゃああのショッピングセンターは!いや、そんな場所に行くわけはない!一体どこに行ったんだ・・・・・・・。そうだ、スマホだ、桃子はスマホを持っていたはずだ。ズボンのポケットからスマホを出して桃子の番号を検索する。こういう時に限ってなかなかアドレス帳にたどり着かないものだ。「あ、あった!これだ」桃子の番号を見つけた。人差し指で彼女の名前を押す。



 桃子のスマホのコール音が鳴る。

「も、もしもし・・・・・・、なに・・・・・・」桃子の声がした。

「あっ、金・・・・・・・、いや桃子、今どこにいるんだ!?」俺は半分怒鳴りつけるように声を出してしまった。

「な、なによ唐突に・・・・・・」桃子は驚いたように声を上げる。

「何処にいるのか教えろ!俺が迎えにいってやるから!」

「一体何を・・・・・・、あっ!?」通話が切れてしまった。いや最後の雰囲気からして切られたという感じであった。何度かコールを繰り返すが二度と彼女が出る気配がない。「くそ!!」俺は考えを巡らせる。そういえば桃子が沈黙した時に小さい音ではあったは音楽が聞こえた。あれは・・・・・・・、一駅向こうの商店街で流れているテーマ曲だ。間違いない!俺は慌てて家に戻りZX10Rに乗り込み目的地に向かって走らせた。

「絶対に見つけてやるからな!!」歯ぎしりでキリキリと音が鳴った。
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