振り返るといつもの君がいたような気がした。僕が助けた少女は有名なシンガーソングライターだった。『君の歌と僕の夢……。』

上条 樹

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君と家族

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「私どうしたらいいのか・・・・・・・本当にごめんなさい」桃子が号泣しながらもう土下座しそうな勢いで泣いている。そのあまりにも悲壮《ひそう》な感じを見て美桜はもらい泣きしていた。

「桃子ちゃん・・・・・・・、もういいから・・・・・・・」美桜はギュッと桃子の体を抱きしめた。

「そうだ、桃子君。君が謝る必要は無いんだよ。悪いのはあのダークファンタジーの糞オヤジだ」綾は吐き捨てるように言った。

「いや・・・・・・、俺もカッとなってしまって、さっきはすいませんでした。綾さんにあんな事を言わせてしまって・・・・・・・、本当に情けないです」俺がレポーターの胸ぐらを掴んで抗議しようとしたのは、彼らにとっては最高の収穫であったであろう。明日のワイドショーとかでは挙《こぞ》って放送するであろう。

「気にしなくていいよ。君がやらなかったらきっと私があのレポーターを殴っていたさ」綾はまるで俺の行動を褒めるかのように微笑んだ。彼女はそうは言ったが決してそんな行動はとらないであろう。きっと、俺に必要以上の責任を感じさせないために言った言葉だとさすがの俺にも解った。

「私のせいで・・・・・・・、私のせいで、亮ちゃんまで・・・・・・・」桃子は美桜に抱きしめられたまま泣いている。

「あれは金ちゃんのせいじゃない・・・・・・、俺のせいだ・・・・・・・」俺は取り返しのつかない事をしてしまったと後悔している。皆で桃子を支えてやらないといけないのに、事務所全体を境地に陥れてしまった。俺の責任だ。

「ただいま!」昌子が元気に帰ってきた。

「お帰り・・・・・・・、外は・・・・・・・、大丈夫だったのか?」俺は昌子に対してもあのレポーター達は何か言ったのかと危惧した。

「ああ、桃子ちゃんの・・・・・・・、でも嘘なんでしょ?」練習の後で喉がカラカラのようで昌子は真っすぐに冷蔵庫に向かい扉を開けたと思うと牛乳のパックを取り出して豪快に飲んだ。

「・・・・・・・はい」桃子は小さくうなずいた。

「ぷはっ!じゃあ、いいじゃない。私達はそれを知っているんだから・・・・・・もう、私達家族みたいなものでしょう?桃子ちゃんの問題は私達の問題。それに桃子ちゃんの喜びは私達の喜びだよ。ねえ、社長!」昌子は同意を求めるかのように綾に向かって牛乳パックを乾杯でもするかのように見せた。

「そ、そうだ。桃子君は我が小野寺プロダクションの大切な仲間だ。どーんと私に任せておきなさい!」綾はゴリラがドラムリングするかのように胸を叩いた。

「ありがとう・・・・・・・、ありがとうございます・・・・・・・」桃子は美桜の胸に顔をうずめて泣いた。美桜も自分の事のように泣いている。

「でも、ダークファンタジーが倒産したなら桃子ちゃんの移籍費もチャラなんじゃないのですか?」昌子はリビングに牛乳パックを手にしたまま移動してきた。

「いや、それは無いだろう。ダークファンタジーの債権を管理する会社があるだろうから、そこから請求が来ると思うよ」さすがに、そう都合よくいかないようであった。

「私・・・・・・、私、歌います。今までご迷惑をお掛けしていた分を取り返すくらいに・・・・・・・」美桜が決意したように言い放つ。

「ありがとうMION。お前が歌ってくれたら百人力だよ・・・・・・・、本当に歌えるようになって良かったね」綾は、優しく美桜の頭を撫でた。「私達は一枚岩で頑張るしかないんだ。誰一人かける事無く。昌子君の言う通り、桃子君は後ろ指を差される事が無いのなら堂々と行くんだ。いいね!」反対の手で今度は桃子の頭を撫でる。

 それはまるで優しい母親のように見えた。
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