振り返るといつもの君がいたような気がした。僕が助けた少女は有名なシンガーソングライターだった。『君の歌と僕の夢……。』

上条 樹

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君とカラオケ

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「美桜ちゃん、凄かったな・・・・・・・」俺は昌子との帰り道に自然と呟いた。美桜はコンサートの後の打ち上げがあるので帰りが遅くなるそうである。俺達も誘われてはいたが今日は遠慮することにした。

「そうね・・・・・・、美桜さん素敵ね・・・・・・」昌子は少し地面を見たままであった。

「歌で人を感動させるって本当にあるんだな・・・・・・・。俺、今日は最高だったよ。今まで言ったコンサートの中でも一番良かった」俺の興奮は収まらなかった。

「そうね・・・・・・・」昌子は相変わらず俯うつむいている。

「昌子?どうかしたのか」昌子の様子があからさまにおかしいと感じて俺は彼女の顔を覗き込んだ。

「うん・・・・・・・、そうね。今日はなんだか思い知らされちゃった・・・・・・・・、美桜さんには・・・・・・」その後の昌子の言葉が聞き取れなかった。

「ん?なんだって」

「ううん。、いいの。ねえ、カラオケ行かない?」唐突に提案してきた。そういえば昌子とカラオケなんて一度も行ったことなどなかった。そして彼女の歌も聞いた事などなかった。

「そうだな、まだ時間も早いし・・・・・・・、たまには行こうか」なんだか昌子がいつもと違う感じなのが気になっていた。俺達は駅の近くにあるカラオケチェーンの店舗に入った。

「亮介・・・・・・、歌ってよ」昌子がデンモクを手渡してくる。

「俺から・・・・・・、まあ、いいけれど」少し美桜の歌を聞いてテンションが高めになっているのか、俺も歌いたい気持ちになっていた。ひとまずいつも歌う十八番《おはこ》の歌を歌う。昌子が微笑みながらテンポを取っている。

「意外と上手なのね・・・・・・・・」昌子は少し驚いているようであった。まあ、人並みには歌える方であるとは思っていたが、褒められると悪い気はしない。

「次は、昌子の番だぞ」言いながらマイクを手渡した。そのタイミングに合わせるかのように伴奏が流れる。そのイントロを聞いて俺はハッとする。

『晴れの日、あなたに会いたい・・・・・・』今日、美桜のコンサートで最後に歌った曲。そして彼女の最大のヒット曲である。

「う、うまい・・・・・・・・」昌子の歌が始まる。思いのほか綺麗な声で歌うので驚いた。正直、今日の美桜のコンサートの後でなければ絶賛するところであった。彼女の歌声が部屋の中を響く、それは心地のよいメロディーであった。そして一番の歌詞が終わる。

「昌子・・・・・・・・!お前上手いんだな!!」俺は大きな拍手をする。しかし彼女の顔色は冴えない、二番の歌詞が始まるが彼女は歌おうとしない。「昌子・・・・・・・?どうしたんだ、始まっているぞ」俺は不思議に思い彼女の顔を見る。照明を落としてはいるが、なんだか悲しそうにしている彼女の表情が読み取れた。「昌子・・・・・・・?」

「ごめんね・・・・・・・、やっぱり帰ろうか・・・・・・・」彼女はテーブルにマイクを置くと立ち上がり部屋を出て行った。

「昌子・・・・・・・、一体・・・・・・・!?」俺は訳が解らずに彼女を追いかけた。レジで精算をしているようであるが、あまりの短い時間に退室してきた客に店員も驚いているようであった。少し涙ぐんだ目で料金を払う昌子を対応しながら、少し俺の顔を軽蔑でもするような目で見る。まさか痴話げんか・・・・・・・、いや俺がなにか嫌らしい事でもしたと勘違いされたのでは・・・・・・・・。昌子は精算を終えてエレベーターに飛び込んだ。もちろん俺も追いかけるように乗る。

「ごめんね・・・・・・・、変な風に思われたかもしれないわね・・・・・・・」昌子は相変わらず下を向いている。

「そんな事はいいけれど・・・・・・・、どうしたんだ。俺、なにか気に障るような事をしたか?」心当たりは無いが一応聞いてみる。

「うん・・・・・・・、した」ポツリと一言。

「えっ?」彼女の言葉の意図を俺は読み取ることが出来なかった。
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