振り返るといつもの君がいたような気がした。僕が助けた少女は有名なシンガーソングライターだった。『君の歌と僕の夢……。』

上条 樹

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君と決意

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「この間、すげえ体した女連れてたじゃないですか?もう、やちゃったんですか」下品な会話が聞こえてくる。

「なんだ、お前見てたのか?まだやってねえよ。でも時間の問題だな。ありゃ、俺に抱かれたくて今にも涎垂らしそうな感じだぜ」聞き覚えのある声。

「北浜さんばっかりズルいっすよ。俺にも回してくださいよ」その名前を聞いて頭に血が上った。

 今日は空手の練習の為に、樹心館にやってきた。その男達の会話は男子更衣室の中から聞こえてきた。更衣室の扉を開くと目の前に、上半身裸の北浜と腰ぎんちゃくのような男が会話していた。

「なんだ・・・・・・、お前か」北浜は俺の顔を見て、鬱陶しそうな顔をした。この男はすでに練習を終えて帰り支度をしているようであった。

「・・・・・・」俺は怒りに拳を握りしめて、北浜の顔を睨みつけた。

「文句でもあるのか?」北浜はシャツを荒っぽく被ると吐き捨てるように呟く。

「昌子を泣かせたら・・・・・・・、殺すぞ」俺の口はまるで別の生き物のように動いた。あまりの過激な言葉に俺も内心驚いたほどであった。

「あん!?」北浜は俺の胸ぐらを掴むと壁にたたきつける。

「おい!何を騒いでるんだ!!」滝野師範の声が聞こえる。俺達の会話は道場の中まで聞こえていたようだ。

「ちっ!弱いくせに意気ってんじゃねえよ。いい女は強い男に魅かれるんだよ!昌子は俺がいい女にしてやるよ!!」奴は俺の耳元で小さく呟くように言う。しかし、その言葉には強い悪意が込められていた。

 俺は北浜の顔面目掛けて殴りかかる。しかし、奴は近距離にも関わらず顔を逸らしてその拳をかわした。そのまま俺の腕を引っ張りと、床に体ごと引きずり落とした。

「くっ!!」俺は四つん這いの状態で北浜の顔を睨みつける。

「やっぱり雑魚じゃねえか。三下!あの女飽きたらお前に回してやってもいいんだぜ」北浜は俺の頭を踏みつけた。俺は、絶望感でその足を払い除ける事が出来なかった。

「北浜さん!そ、それなら、あの女俺にくださいよ!!」腰ぎんちゃくの男がアピールする。

「はははは!気が向いたらな!」二人は俺を蔑むような目で見てから更衣室から出て行った。俺はそのまま呆然としていた。そのまま更衣室の住みに移動すると、三角座りで頭を抱えた。

 俺は、俺は何をやっているんだ。こんな俺では、昌子を守れない。あの男の勝ちたい。勝たなければ・・・・・・・。しかし、今の俺ではどう足掻こうとあの男に勝つことは出来ない。
 
「どうした!?」更衣室が騒がしかったので、竜野師範が様子を見に来たようであった。

「師範・・・・・・・、俺に師範の空手を教えてください・・・・・・・、誰にも負けない位強くなりたいんです」師範の顔を見て、俺は立ち上がってから深々と頭を下げた。

「なにかあったのか・・・・・・・。まあ、君の事は神山監督から頼まれているからな。でも、君は役者さんじゃないのか?」きっと、神山監督からは、体験程度に教えてくれと頼まれていたんだと思う。しかし、今の俺には正直、映画よりなにより強くなりたいという気持ちが大きくなっていた。俺は無言のまま、頭を下げ続けた。

「解った。それなら休みの日は朝から来て練習しなさい。徹底的に鍛えてよるよ。二度と空手をやりたくないくらいにな」竜野師範は嬉しそうに鼻の下を指で掻いた。
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