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幸 恵
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「ただいま……」俺は電車に乗って家に帰ってきた。
昼間の雨で時間を消耗したこともあり、帰宅した時刻は夜の10時過ぎになっていた。
「お帰りなさい、遅かったのね……、ご飯は?」俺の妻、幸恵《さちえ》の声がキッチンの方から聞こえた。
それは張りの無い声だった。
遅くなった事を怒っているのだろうか。
「食べていないよ。実家に行く途中に凄い豪雨に合って、ごめん帰るのが遅くなってしまって……」一応謝ってみる。
「別に構わないけれど、遅くなるなら遅くなるって初めから言ってもらっていたら私だって……、いいえ、すぐに、ご飯を食べるの?」幸恵はなにかを言いたげではあったがそれを飲み込んだようだ。
夕食を作ってくれていたようで、覆《おお》いを被せた食事が食卓の上に置いてあった。
「いや、先にシャワーを浴びるよ」そう告げてから、俺は玄関から浴室に直行した。
「そう、それじゃあ、私は先に寝るわね……おやすみなさい」幸恵は酷く疲れている様子で大きなアクビをしながら寝室に姿を消した。
「ああ……、おやすみ」最近、夫婦での会話が激減した。寝室もそれぞれ違う部屋である。
毎日の家事が大変なのだなと思い、彼女のことはそっとしておくことにする。
幸恵と俺が、結婚してそろそろ3年。
俺たちの間に子供はまだいない。
彼女とは同じ職場で出会った。
同じ年に同期として入社、俺は大卒で彼女は短大卒、歳は2つ離れている。
なんとなく雰囲気で付き合い始めて、なんとなくそういう関係になって、それは熱愛という訳でも無かった。
幸恵がそろそろ仕事を辞めたいと言い出した事をきっかけに、ケジメをつけることにした。
当然のように彼女は結婚を期に職場を円満退職し、今は専業主婦をしている。
仕事を辞めた直後は晴々としていた様子であったが、少しずつ外部との交流が少なくなり最近ではストレスが溜まっているようであった。
それこそ、子供でも出来ればママさん同士の交流も生まれてストレス発散になるのかもしれない。ただ、今は積極的に子供を作る気持ちも今は無いらしい。
少し前までは、小さな行き違いで急に機嫌が悪くなったり、突然実家に帰ってしまったりすることもあった。
最近は友達でも出来たのか、たまに外出して気晴らしをしている様子だ。
俺は、今の生活に特に不満は無いが、なんとなく少しマンネリになりつつあった。
そういう意味では、昼間の少女との会話は久しぶりにときめくものを感じた。
未成年の子供に、女を感じるとは我ながら呆れる。
「色即是空……」俺は修行僧のように水を浴びた。
思いの外、冷水は冷たくて、飛び上がりそうになった。
昼間の雨で時間を消耗したこともあり、帰宅した時刻は夜の10時過ぎになっていた。
「お帰りなさい、遅かったのね……、ご飯は?」俺の妻、幸恵《さちえ》の声がキッチンの方から聞こえた。
それは張りの無い声だった。
遅くなった事を怒っているのだろうか。
「食べていないよ。実家に行く途中に凄い豪雨に合って、ごめん帰るのが遅くなってしまって……」一応謝ってみる。
「別に構わないけれど、遅くなるなら遅くなるって初めから言ってもらっていたら私だって……、いいえ、すぐに、ご飯を食べるの?」幸恵はなにかを言いたげではあったがそれを飲み込んだようだ。
夕食を作ってくれていたようで、覆《おお》いを被せた食事が食卓の上に置いてあった。
「いや、先にシャワーを浴びるよ」そう告げてから、俺は玄関から浴室に直行した。
「そう、それじゃあ、私は先に寝るわね……おやすみなさい」幸恵は酷く疲れている様子で大きなアクビをしながら寝室に姿を消した。
「ああ……、おやすみ」最近、夫婦での会話が激減した。寝室もそれぞれ違う部屋である。
毎日の家事が大変なのだなと思い、彼女のことはそっとしておくことにする。
幸恵と俺が、結婚してそろそろ3年。
俺たちの間に子供はまだいない。
彼女とは同じ職場で出会った。
同じ年に同期として入社、俺は大卒で彼女は短大卒、歳は2つ離れている。
なんとなく雰囲気で付き合い始めて、なんとなくそういう関係になって、それは熱愛という訳でも無かった。
幸恵がそろそろ仕事を辞めたいと言い出した事をきっかけに、ケジメをつけることにした。
当然のように彼女は結婚を期に職場を円満退職し、今は専業主婦をしている。
仕事を辞めた直後は晴々としていた様子であったが、少しずつ外部との交流が少なくなり最近ではストレスが溜まっているようであった。
それこそ、子供でも出来ればママさん同士の交流も生まれてストレス発散になるのかもしれない。ただ、今は積極的に子供を作る気持ちも今は無いらしい。
少し前までは、小さな行き違いで急に機嫌が悪くなったり、突然実家に帰ってしまったりすることもあった。
最近は友達でも出来たのか、たまに外出して気晴らしをしている様子だ。
俺は、今の生活に特に不満は無いが、なんとなく少しマンネリになりつつあった。
そういう意味では、昼間の少女との会話は久しぶりにときめくものを感じた。
未成年の子供に、女を感じるとは我ながら呆れる。
「色即是空……」俺は修行僧のように水を浴びた。
思いの外、冷水は冷たくて、飛び上がりそうになった。
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