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親 友

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 まどかは、放課後の体操クラブの練習が終わり帰宅しようとする。

「まーどかー」昌子が、まどかの体に飛びつく。

「きゃー、驚いた!」突然の出来事にまどかは驚く。とは言っても、これは毎日繰り返されている儀式のような物なのだが……。

「昌子ちゃん、どうしたの?」こんなクラブ活動の終わる時間まで、自分を待っていた昌子の行動を不思議に思った。

「うーん、ちょっと話があるんだけど……」昌子が改まって、少しだけ真面目な顔をする。

「なに?」まどかは、何の事なのか見当がつかなかった。

「この前あった……、近藤せ、近藤さんって人の事なんだけど……」昌子の口から、その名前を聞いたまどかは少し頬を赤らめた。

「む、睦樹さんの事を、昌子ちゃん知っているの?」まどかが、睦樹を下の名前で呼ぶ事に、少しだけ嫉妬する自分が要ることを昌子は自覚している。

 しかし、今の自分は、睦樹と恋人同士だった時の自分とは違うと自ら言い聞かせる。

「あの人……、あまり歳が離れ過ぎている人と付き合っているまどかを見ると、大丈夫かなと思って……」昌子はうまく自分の気持ちを伝える事が出来ないでヤキモキしている。

「睦樹さんはね、なんて言うのかな……、他の男の人と違うっていうか……、私も解らないのだけど、落ち着くのよ」まどかは、好きと言う言葉を使わずに、睦樹の存在を説明しようと試みているようであった。

「でも、あの人と一緒に居ると、まどかが辛い思いをするかもしれないのよ」昌子にとって、それは確信に近いものであった。きっと、まどかはこのままでは、不幸になる。彼女にそんな思いをさせたくない、それが昌子の気持ちであった。

「ありがとう、昌子ちゃん。でも、大丈夫だよ、私はあの人といると、ほっとするの。今は、ずっと睦樹さんの事だけ……、彼の事だけ、見ていたい」その言葉を聞いて、昌子は何も言い返せなくなった。

「そうか……、じゃあ仕方ないな。俺のまどかを他の男に取られたく無かったんだけどなぁ」昌子は、先程までとは全く別人のような雰囲気で喋りだした。

「大丈夫だよ。私、昌子ちゃんの事も大好きだよ」まどかは、頭を少しだけ傾けて、その言葉を言った。

 昌子は、そのまどかの姿を見て、更に彼女の事が心配になった。

「でもね、でもね……、なにかエッチな事とか変な事とかされたら、すぐに言うんだよ。私がボコボコにしてやるから!」言いながら、昌子は指をボキボキ鳴らした。

「うん、解った!」二人は手を繋ぎ学校を後にした。
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