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ニューリアンの未来
新しい朝が明ける2
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「あなたは何を目論んでいるのですか」
ジャスミンによる詮索に「何もない」はもちろん通用しなかった。
「ディレイトが考えた政策だ。英雄の名前を使って好感度でも上げたら兵士採用が上手くいくだろうって」
「そんなことは聞いていません。アルマンダイト・クロスフィルの目的を聞いているんです」
ピシャリと断られてしまった。
「……別に何も嘘は言ってないんだけど」
「嘘だと咎めているんじゃありません。あなたの目的を知りたいだけです」
じっと見つめられる。俺はもう何度もその瞳の色を覗いて、この女の素性を探ろうとしていた。
「はぁ……」
女の素性を知ったところで俺には別に意味もないか。
俺は机の上の新聞紙を畳んでジャスミンに向ける。ジャスミンはそれを手を伸ばして受け取るが、俺の答えもよこせと相変わらず強気だった。
「別に。俺がどうこうしようって目的なんか何にもない」
椅子にもたれかかって窓の方を見やる。
セルジオ城では感じることのできない風に揺れる木々が見えていたり。今はもう誰もいなくなったけど、食堂のメニューについて楽しそうに論議する兵士たちの声が聞こえたり……。
「そうだな。なんだろうな」
「分からないってことで良いですか?」
思いにふける俺とは違って、現実の中にいるジャスミンがキッパリと横槍を突いてきた。
「え、なに? そんな答えで良いの?」
「はい。あなたの本心なら聞けてよかったです。それに……」
ジャスミンが抱いている新聞紙に力が入り、クシャッと音を鳴らす。
「私も分からないのです。テレシア様の最後の命令が『あなたに仕えること』私はこの命令を遂行するべきなのか。分からないから、あなたの気持ちが知りたかった」
「へえー。で、どう?」
正直、俺ひとりで国ひとつ分の土地や人をまとめていくのは無理だった。そこで、なんでもやりますと言ってくれる補佐が居てくれたら助かるのはそうなんだけど。
「ひとまず保留で」
「保留か」
俺は、ははっと少し笑いつつ、やっぱりなと思ってしまう。
「ガレロさんにはお会いしましたか?」
「いや?」
「保管庫の鍵はガレロさんが持ってるはずですよ?」
川沿いを上流に向かって歩いていく。生暖かい風が吹いたら、どこからか花びらが飛んでいた。綺麗な景色を見ながら女と二人で歩いているなんて素敵だろうが、今はなんとなくそう思えなかった。
「風が止めば良いんですけどね」
ジャスミンもそう言ったぐらいだ。この舞っている花びらの色を見て、俺たちが思い出す事はどうやら同じらしい。
ずっと無言で歩いていくと森を切り開いたところに鉄の建物が見え出した。本来なら塀で囲んであって奥は見えなくしてあるはずだが。何者かが怒りに任せて破壊したんだろうか、一角が崩れて見渡せるようになってる。
そこはニューリアン領地内に置くセルジオの基地。もう中身は空っぽで、いずれ壊される建物だ。
そんな場所に何の用があるのか、ひとりの男が上半身を剥き出してグラウンドに立っていた。よくよく近づくと、その辺で拾った鉄の塊を両手に持って振っている。
さっそく俺は声をかける。
「ここは運動場じゃないんだけど?」
人を寄せ付けないはずの塀をヨイショと跨いで近付いた。
ガレロは俺とジャスミンのことを交互に見ると、鉄の塊は足元に落とした。
「何の用だ」
「保管庫の鍵を持ってるって聞いたから。渡してくれないかと思って」
頭から滝の汗を流すガレロだ。「ああ」と小さく言ってから、履き物のポケットに手を入れる。
取り出したものは無言で投げられた。保管庫の鍵だけで良いのに、きっと館のあらゆる部屋の鍵がまとめられたものだ。ジャラジャラと言わせながら俺の手に渡った。
「とっとと消えてくれ」
それがガレロにとって、俺とはこれ以上関わることはない。という意味だ。あとはでかいのに小さい背中を向けて再び鉄の塊を両手で拾い上げている。
何を頑張ってそんなに鍛えているのか。呆れる思いがするけど、そっとしておこうと思った。
俺は引き返そうと後ろを向く。歩き出すとジャスミンも付いてくるようだった。
「ジャスミン」
そう呼んだのは俺じゃなくガレロだ。ジャスミンは足を止めて、俺も一緒に振り返る。ガレロは鉄の塊を持たずにこっちを向いていた。
「クロノスに付いていくことにしたのか?」
「いえ。今は保留です」
「保留か……」
それを言うとガレロは後ろを向く。もう話は済んだのか。また鉄の塊を持ち上げようと腰を下ろし出していた。
「行きましょう」と、ジャスミンが俺より先に歩き出した。
「お、おう」
なんだか後味が悪いけど。そうするか……。
しかし、塀の残骸に足を置いて越えようとした時だ。原型をとどめてある塀の部分がいきなり大破した。轟音とともに石が粉々になり、粉塵が舞っている。
俺もジャスミンも咳をしながらどうにか風上の方へ逃げられた。
「なんだよっ」
爆弾でも仕掛けてあったか。いやいや、殺意を向けている奴がいる。盛り上がった筋肉を見せつけるガレロの手には鉄の塊が一個しかない。
鉄の塊を軽々と片手で持ち、今度は俺が見ているのも気にしないで利き手を後ろに引きだした。
「投げてくるぞ!!」
「ええっ!?」
槍を投げる姿勢にて放たれた鉄の塊は、ものすごい威力で飛んだ。それはまた塀を破壊し、粉塵を撒き散らす。俺とジャスミンは覆い被さるようにして地面に倒れたから助かった。
「おおい!! 殺す気か!? ジャスミンも居るんだぞ!?」
流れる粉塵の奥から巨人のように見えるガレロがずかずかと歩いてくる。主人を殺されたことでタガが外れたのか。殺人鬼にでもなったのか。
そいつの一歩は大きく、すぐに俺とジャスミンの目の前まで来た。そこで立ち止まったら無言で見下ろしてくる。
「……」
「……なんだよ。いつもいつも睨んできて。なんなんだよ」
「ガレロさんは実は視力が悪いんです」
命拾いしたジャスミンが言う。
「はあ!?」
絶対それが理由じゃないだろ。
視力が悪いというガレロは二人いる人物のうち、ちゃんと俺を選んで襟を持ち上げた。鼻で荒い息をしながら、今度こそ俺を殺してやると殺意に燃えた目で睨んでいる。だが、それだけだ。
「どうした? 息の根を止めてみろよ」
「……」
やっぱりガレロは弱い。俺の襟からそっと手を離してる。
「私は……ずっと後悔してきた。お前がテレシア様に近付いた時から、今日に至るまで。散々機会はあった。機会はあったのだ……」
拳を握るだけ。それを俺に振るえない自分が憎いか。
そもそも俺のこと自体も憎いよな。
こうなってしまった運命を止められなかったことも、もう主人が死んだことも、これからどうしたらいいかも。何もかも憎くて考えられない。
そりゃあ塀も壊して当然だ。何かに当たらなくっちゃやっていけないだろ。
ジャスミンみたいに利口になれない。
一番辛い男だ。お前は。
(((次話は最終話。\明日/17時に投稿します
(((最終話は途中で区切るのが難しくて
(((2話分の文字量になってしまいましたwすみませんwお楽しみに!
Threads → kusakabe_natsuho
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ジャスミンによる詮索に「何もない」はもちろん通用しなかった。
「ディレイトが考えた政策だ。英雄の名前を使って好感度でも上げたら兵士採用が上手くいくだろうって」
「そんなことは聞いていません。アルマンダイト・クロスフィルの目的を聞いているんです」
ピシャリと断られてしまった。
「……別に何も嘘は言ってないんだけど」
「嘘だと咎めているんじゃありません。あなたの目的を知りたいだけです」
じっと見つめられる。俺はもう何度もその瞳の色を覗いて、この女の素性を探ろうとしていた。
「はぁ……」
女の素性を知ったところで俺には別に意味もないか。
俺は机の上の新聞紙を畳んでジャスミンに向ける。ジャスミンはそれを手を伸ばして受け取るが、俺の答えもよこせと相変わらず強気だった。
「別に。俺がどうこうしようって目的なんか何にもない」
椅子にもたれかかって窓の方を見やる。
セルジオ城では感じることのできない風に揺れる木々が見えていたり。今はもう誰もいなくなったけど、食堂のメニューについて楽しそうに論議する兵士たちの声が聞こえたり……。
「そうだな。なんだろうな」
「分からないってことで良いですか?」
思いにふける俺とは違って、現実の中にいるジャスミンがキッパリと横槍を突いてきた。
「え、なに? そんな答えで良いの?」
「はい。あなたの本心なら聞けてよかったです。それに……」
ジャスミンが抱いている新聞紙に力が入り、クシャッと音を鳴らす。
「私も分からないのです。テレシア様の最後の命令が『あなたに仕えること』私はこの命令を遂行するべきなのか。分からないから、あなたの気持ちが知りたかった」
「へえー。で、どう?」
正直、俺ひとりで国ひとつ分の土地や人をまとめていくのは無理だった。そこで、なんでもやりますと言ってくれる補佐が居てくれたら助かるのはそうなんだけど。
「ひとまず保留で」
「保留か」
俺は、ははっと少し笑いつつ、やっぱりなと思ってしまう。
「ガレロさんにはお会いしましたか?」
「いや?」
「保管庫の鍵はガレロさんが持ってるはずですよ?」
川沿いを上流に向かって歩いていく。生暖かい風が吹いたら、どこからか花びらが飛んでいた。綺麗な景色を見ながら女と二人で歩いているなんて素敵だろうが、今はなんとなくそう思えなかった。
「風が止めば良いんですけどね」
ジャスミンもそう言ったぐらいだ。この舞っている花びらの色を見て、俺たちが思い出す事はどうやら同じらしい。
ずっと無言で歩いていくと森を切り開いたところに鉄の建物が見え出した。本来なら塀で囲んであって奥は見えなくしてあるはずだが。何者かが怒りに任せて破壊したんだろうか、一角が崩れて見渡せるようになってる。
そこはニューリアン領地内に置くセルジオの基地。もう中身は空っぽで、いずれ壊される建物だ。
そんな場所に何の用があるのか、ひとりの男が上半身を剥き出してグラウンドに立っていた。よくよく近づくと、その辺で拾った鉄の塊を両手に持って振っている。
さっそく俺は声をかける。
「ここは運動場じゃないんだけど?」
人を寄せ付けないはずの塀をヨイショと跨いで近付いた。
ガレロは俺とジャスミンのことを交互に見ると、鉄の塊は足元に落とした。
「何の用だ」
「保管庫の鍵を持ってるって聞いたから。渡してくれないかと思って」
頭から滝の汗を流すガレロだ。「ああ」と小さく言ってから、履き物のポケットに手を入れる。
取り出したものは無言で投げられた。保管庫の鍵だけで良いのに、きっと館のあらゆる部屋の鍵がまとめられたものだ。ジャラジャラと言わせながら俺の手に渡った。
「とっとと消えてくれ」
それがガレロにとって、俺とはこれ以上関わることはない。という意味だ。あとはでかいのに小さい背中を向けて再び鉄の塊を両手で拾い上げている。
何を頑張ってそんなに鍛えているのか。呆れる思いがするけど、そっとしておこうと思った。
俺は引き返そうと後ろを向く。歩き出すとジャスミンも付いてくるようだった。
「ジャスミン」
そう呼んだのは俺じゃなくガレロだ。ジャスミンは足を止めて、俺も一緒に振り返る。ガレロは鉄の塊を持たずにこっちを向いていた。
「クロノスに付いていくことにしたのか?」
「いえ。今は保留です」
「保留か……」
それを言うとガレロは後ろを向く。もう話は済んだのか。また鉄の塊を持ち上げようと腰を下ろし出していた。
「行きましょう」と、ジャスミンが俺より先に歩き出した。
「お、おう」
なんだか後味が悪いけど。そうするか……。
しかし、塀の残骸に足を置いて越えようとした時だ。原型をとどめてある塀の部分がいきなり大破した。轟音とともに石が粉々になり、粉塵が舞っている。
俺もジャスミンも咳をしながらどうにか風上の方へ逃げられた。
「なんだよっ」
爆弾でも仕掛けてあったか。いやいや、殺意を向けている奴がいる。盛り上がった筋肉を見せつけるガレロの手には鉄の塊が一個しかない。
鉄の塊を軽々と片手で持ち、今度は俺が見ているのも気にしないで利き手を後ろに引きだした。
「投げてくるぞ!!」
「ええっ!?」
槍を投げる姿勢にて放たれた鉄の塊は、ものすごい威力で飛んだ。それはまた塀を破壊し、粉塵を撒き散らす。俺とジャスミンは覆い被さるようにして地面に倒れたから助かった。
「おおい!! 殺す気か!? ジャスミンも居るんだぞ!?」
流れる粉塵の奥から巨人のように見えるガレロがずかずかと歩いてくる。主人を殺されたことでタガが外れたのか。殺人鬼にでもなったのか。
そいつの一歩は大きく、すぐに俺とジャスミンの目の前まで来た。そこで立ち止まったら無言で見下ろしてくる。
「……」
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「はあ!?」
絶対それが理由じゃないだろ。
視力が悪いというガレロは二人いる人物のうち、ちゃんと俺を選んで襟を持ち上げた。鼻で荒い息をしながら、今度こそ俺を殺してやると殺意に燃えた目で睨んでいる。だが、それだけだ。
「どうした? 息の根を止めてみろよ」
「……」
やっぱりガレロは弱い。俺の襟からそっと手を離してる。
「私は……ずっと後悔してきた。お前がテレシア様に近付いた時から、今日に至るまで。散々機会はあった。機会はあったのだ……」
拳を握るだけ。それを俺に振るえない自分が憎いか。
そもそも俺のこと自体も憎いよな。
こうなってしまった運命を止められなかったことも、もう主人が死んだことも、これからどうしたらいいかも。何もかも憎くて考えられない。
そりゃあ塀も壊して当然だ。何かに当たらなくっちゃやっていけないだろ。
ジャスミンみたいに利口になれない。
一番辛い男だ。お前は。
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