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Ⅱ.拓かれる秘境国
セルジオ潜入‐関所モドキ‐
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「ところで情報が筒抜けだけど良いのかい?」
マルク王は俺の後ろを指して言った。
シャーロットも参戦したこのやりとりをどういう気持で見ていたかは知らないが、俺の監視役二号が立ち尽くしている。
相変わらず機械のようで感情の読めない顔つきだ。俺のことばかりに注目していた。
マルク王は「よく出来た兵士だ」と褒めたような言い方をしていたが、シャーロットは素直で「気味が悪いわ」と言う。
「本部に伝わる前に用事は済ませた方が良いね。大使の件はシャーロットと話し合っておくから、君は先にセルジオに渡って何とかしてみせなさい」
「はい。承知致しました」
「君が失敗する可能性だってゼロじゃ無い」
いつものおだやかなマルク王で告げられた。
ただし最後の一言には、まだ俺の事を許していないという意思が汲み取れもする。
ニューリアン郊外から馬に乗ってセルジオ領土へと入った。
そのまま関所を通って都市部へ行けたら問題は無いのであるが、そう上手くはいかないとマルク王の策を授かっている。
「関所は厳重だ。たとえ荷車の木箱に隠れたとしても、入口付近で内部まで点検が入るよ。一旦南下して山脈を辿って行きなさい。闇市の関所モドキがあるから」とのことだ。
「関所モドキ……」
声に出してみても得体は知れない。
「民間が作った門か何かでしょうか?」
カイセイが馬を寄せて答えてきた。
少し離れたところではセルジオ王国の国旗である真っ赤な単色が天高い位置ではためいている。
『汚れなき血の色は誇りの証』と自負する血気盛んな連中らによる本物の関所があるのだ。
「とにかく見て回るしか無い」
ここは謎が残るがマルク王の言う通りに動くことにしよう。
俺達はローブで顔を隠した。三頭の馬は言われた通りの道を走らせ、急ぐよう手綱を引いた。
途中で振り返ると、真っ赤な旗はまだ俺たちを見ているようだ。
あれはセルジオ戦士の決意であるのだろうが、外部者からすれば対敵意識を突きつける威嚇の色にも見えた。
痩せた土が広がるだけの遠く見渡せる平地である。敵が居ても分かるし、逆に敵からも俺達のことは丸見えだ。
肝を冷やしながらとにかくスピードで駆け抜け、山脈の麓で向きを変えた。
我が国を囲むような剣山の山脈ではなく、大きなコブを並べただけの山脈だった。
幾つかトンネルが開通していたり、山肌に畑をこしらえていたりと、開発が進んでいるようである。
「お前の言う通り、戦いは川岸でされているみたいだな。ここはあまりに平和だ」
馬を止めて少し周りの景色を眺めた。
家ひとつ建たぬ低い草がぽつぽつ生えるこの土地に、野生のヤギの群れが行き先を迷っているばかりだ。
畑をするにも土が枯れすぎているから人間などは好んで寄り付かん。
「都心から離れすぎましたか? こんな場所に関所なんて無いでしょう」
「うーむ。山脈を辿れと言っていたが……」
軽く馬を歩かせながらも不安になるばかりであった。
そろそろこの山脈が北の方角を向き、このまま辿っていくとセルジオ北部まで行ってしまうぞというところ。
道を間違えたか引き返そうかと口々に話していると、山脈のトンネルから一台の馬車が出てくるのが前方に見えた。
何を運んでいるかは知らんが、ずいぶんと大荷物を二匹の馬に運ばせているのである。
「武器でしょうか?」
「いや。それにしては運び方が雑だ」
決して悪い道では無いのに、その馬車はガタガタ揺れながら大急ぎで都市部へ駆けていく。
俺達の馬もその馬車を見失わないようにと後に続いた。
押し固めた道のような筋には、馬車から落ちたと思われる鉄板のようなガラクタが落ちている。
急ぐ馬車が向かった先には小屋があった。
都市部までにはまだ距離があり、その小屋はぽつんと一軒建っているのである。
何度も増築と改造を繰り返した手芸品のような建物であり、何やら文字の剥げた看板を掲げていた。
馬車はその道の上に置いたままで、人間は建物内に入ったようだ。俺も馬から降りて入ってみることにする。
「……らっしゃい」
入るなり不機嫌な声で出迎えられた。
中は灯りが付けられていなく、外の日差しだけで灯りを賄っていて薄暗い。
何の店かは分からんがカウンターがあり、店主とおそらく御者である若い男が会話をしていた途中だった。
「セルジオ都市部に入りたい。関所モドキと言われているのはここか?」
尋ねると店主が怪しむ目つきで俺のことを見てくる。
肌色も分からん暗い店内だが、店主の顔にある無数のピアスが不気味に光っている。
無口でじっと睨みを効かされており言葉が通じんのかと思った。
「あれはお前んとこの馬か?」
ようやく喋ってくれたと思うと、俺のことを通り越して窓から三頭の馬のことを見て言っているようだ。
「ああ、そうだが」
飼い主では無いが、乗ってきたのだから、そうだと答えた。
すると店主がレジ台から金を集めて袋に入れだした。
小ぶりな袋は先客の御者に。もうひとつ一回り大きな袋は俺にだろう。それぞれカウンターに置いた。
「三頭まとめた値段だ。都市に行きたいなら金を仕舞って付いて来な」
店主はレジ台の鍵を閉めて店を出て行く。
金袋をくすねるみたいに懐へ仕舞った御者も、店主と共に店の外へ出て行った。
マルク王は俺の後ろを指して言った。
シャーロットも参戦したこのやりとりをどういう気持で見ていたかは知らないが、俺の監視役二号が立ち尽くしている。
相変わらず機械のようで感情の読めない顔つきだ。俺のことばかりに注目していた。
マルク王は「よく出来た兵士だ」と褒めたような言い方をしていたが、シャーロットは素直で「気味が悪いわ」と言う。
「本部に伝わる前に用事は済ませた方が良いね。大使の件はシャーロットと話し合っておくから、君は先にセルジオに渡って何とかしてみせなさい」
「はい。承知致しました」
「君が失敗する可能性だってゼロじゃ無い」
いつものおだやかなマルク王で告げられた。
ただし最後の一言には、まだ俺の事を許していないという意思が汲み取れもする。
ニューリアン郊外から馬に乗ってセルジオ領土へと入った。
そのまま関所を通って都市部へ行けたら問題は無いのであるが、そう上手くはいかないとマルク王の策を授かっている。
「関所は厳重だ。たとえ荷車の木箱に隠れたとしても、入口付近で内部まで点検が入るよ。一旦南下して山脈を辿って行きなさい。闇市の関所モドキがあるから」とのことだ。
「関所モドキ……」
声に出してみても得体は知れない。
「民間が作った門か何かでしょうか?」
カイセイが馬を寄せて答えてきた。
少し離れたところではセルジオ王国の国旗である真っ赤な単色が天高い位置ではためいている。
『汚れなき血の色は誇りの証』と自負する血気盛んな連中らによる本物の関所があるのだ。
「とにかく見て回るしか無い」
ここは謎が残るがマルク王の言う通りに動くことにしよう。
俺達はローブで顔を隠した。三頭の馬は言われた通りの道を走らせ、急ぐよう手綱を引いた。
途中で振り返ると、真っ赤な旗はまだ俺たちを見ているようだ。
あれはセルジオ戦士の決意であるのだろうが、外部者からすれば対敵意識を突きつける威嚇の色にも見えた。
痩せた土が広がるだけの遠く見渡せる平地である。敵が居ても分かるし、逆に敵からも俺達のことは丸見えだ。
肝を冷やしながらとにかくスピードで駆け抜け、山脈の麓で向きを変えた。
我が国を囲むような剣山の山脈ではなく、大きなコブを並べただけの山脈だった。
幾つかトンネルが開通していたり、山肌に畑をこしらえていたりと、開発が進んでいるようである。
「お前の言う通り、戦いは川岸でされているみたいだな。ここはあまりに平和だ」
馬を止めて少し周りの景色を眺めた。
家ひとつ建たぬ低い草がぽつぽつ生えるこの土地に、野生のヤギの群れが行き先を迷っているばかりだ。
畑をするにも土が枯れすぎているから人間などは好んで寄り付かん。
「都心から離れすぎましたか? こんな場所に関所なんて無いでしょう」
「うーむ。山脈を辿れと言っていたが……」
軽く馬を歩かせながらも不安になるばかりであった。
そろそろこの山脈が北の方角を向き、このまま辿っていくとセルジオ北部まで行ってしまうぞというところ。
道を間違えたか引き返そうかと口々に話していると、山脈のトンネルから一台の馬車が出てくるのが前方に見えた。
何を運んでいるかは知らんが、ずいぶんと大荷物を二匹の馬に運ばせているのである。
「武器でしょうか?」
「いや。それにしては運び方が雑だ」
決して悪い道では無いのに、その馬車はガタガタ揺れながら大急ぎで都市部へ駆けていく。
俺達の馬もその馬車を見失わないようにと後に続いた。
押し固めた道のような筋には、馬車から落ちたと思われる鉄板のようなガラクタが落ちている。
急ぐ馬車が向かった先には小屋があった。
都市部までにはまだ距離があり、その小屋はぽつんと一軒建っているのである。
何度も増築と改造を繰り返した手芸品のような建物であり、何やら文字の剥げた看板を掲げていた。
馬車はその道の上に置いたままで、人間は建物内に入ったようだ。俺も馬から降りて入ってみることにする。
「……らっしゃい」
入るなり不機嫌な声で出迎えられた。
中は灯りが付けられていなく、外の日差しだけで灯りを賄っていて薄暗い。
何の店かは分からんがカウンターがあり、店主とおそらく御者である若い男が会話をしていた途中だった。
「セルジオ都市部に入りたい。関所モドキと言われているのはここか?」
尋ねると店主が怪しむ目つきで俺のことを見てくる。
肌色も分からん暗い店内だが、店主の顔にある無数のピアスが不気味に光っている。
無口でじっと睨みを効かされており言葉が通じんのかと思った。
「あれはお前んとこの馬か?」
ようやく喋ってくれたと思うと、俺のことを通り越して窓から三頭の馬のことを見て言っているようだ。
「ああ、そうだが」
飼い主では無いが、乗ってきたのだから、そうだと答えた。
すると店主がレジ台から金を集めて袋に入れだした。
小ぶりな袋は先客の御者に。もうひとつ一回り大きな袋は俺にだろう。それぞれカウンターに置いた。
「三頭まとめた値段だ。都市に行きたいなら金を仕舞って付いて来な」
店主はレジ台の鍵を閉めて店を出て行く。
金袋をくすねるみたいに懐へ仕舞った御者も、店主と共に店の外へ出て行った。
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