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II.セルジオの落とし穴
公開告白
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数日経って僕はまたいつも通りに図書館へ向かった。
アルゼレアに会って何をするというわけでもない。じゃあ何で通っているんだろうと道端で足を止めて考えるけど、結局何も浮かばなくまた足を進めている。
ぼんやりと腑に落ちたのは彼女の安否確認という理由かな。ずいぶんお節介だなと自分でも思う。
ヴィレッジサンド店に通うのとは全然心持ちが違うんだけど、こちらも日課になってしまってか足が遠のくことはなかった。
ビルの階段を上がって返却窓口で借りていた本を返す。
作業をお願いしてもらっている間、僕はそっと奥の従業員室の窓を覗いた。けどアルゼレアは居ないようだった。
「アルゼレアさんなら四階に上がりましたよ」
貸し出し手帳が返ってくるのと一緒に、従業員による知らせも一緒だった。
僕は素直に驚いている。
「あの。僕、何か口に出してました?」
「いいえ? でも、ほぼ毎日アルゼレアさんに会いに来ていますよね?」
笑顔を向けられるけど、その笑顔はどっちなんだと僕は疑った。
新聞やニュースでも稀に見るストーカ行為や事件。僕ってまさか、そういう風に見られているんじゃないかって、初めて気付いた。
気付いてみて、遅いんじゃないかって思えてきた。
「僕、帰ります」
「ええっ!? なんで!!」
また警察に追われるのは嫌なんで。とは言えなく、それよりこの従業員は鍛え上げた筋肉質の腕でカウンタードアをぶち破り、難なく僕を取り押さえた。
連行される! 逮捕される!
そう、もがく僕を従業員は力づくで押さえつける。握力も怪力で、筋肉に自慢が無い僕はすぐに観念した。
でも僕が暴れなくなるとスッと解放してくれる。
「アルゼレアさんに会ってきてくださいよ。ね?」
「はい……」
投げ出していたカバンを拾い、僕はとぼとぼと階段を登っていく。
返却カウンター前で起こった騒ぎに対しては従業員がなだめてくれている。
四階に到着し、ちょうどアルゼレアは返却された本を本棚に戻しているところだった。
「僕ってストーカなのかな」
背後からかける言葉を間違って、アルゼレアは小さな悲鳴を上げながら振り返った。
そこに元気のない男がいると「何かあったんですか?」と、聞いてほしい。彼女は本を強く抱いたまま固まっているばかりだった。
……さあ。僕がアルゼレアに構う理由が分かったということで、最後に別れの挨拶でもしておこうかな。
告げる言葉を探していたら、アルゼレアが作業途中の本を一旦棚の上に置いている。
いつもの無表情から急にしかめっ面になった。こんな感情的な顔をするんだ、と感心している場合じゃない。彼女はずいずいと距離を詰めてくる。
「アル……ゼレア?」
叩かれても仕方がない距離まで来ると、アルゼレアは怒った形相のままで言う。
「フォルクスさん、私と付き合ってください!」
俯く僕がアルゼレアへ顔を上げたし、この階にいる他の利用者も全員本から顔を上げた。
「……え?」
ずいっとアルゼレアが僕の方へ踏み込んで来る。
人にはパーソナルスペースというものがあって、見ず知らずの人、親しい友人、恋人や家族といったカテゴリーによって不快を感じる距離が実はある。
それにより、アルゼレアが近づいて来たことで僕は一歩後ろに下がった。
「付き合うって……どこに……?」
「恋人です。恋人同士になるという意味の方です」
分かりきったことを説明され、また一歩近付かれて一歩下がった。
「私、あなたのことがずっと好きです! 上手く話せなくなったり顔が熱くなってしまうのは、あなたが好きだからです!」
「えっ、いやあの。ありがとう。う、嬉しいなそんな風に思ってくれて」
「手だって二回も繋ぎましたよね!?」
すごく情熱的な愛の告白をされている。けどそれだけは確信犯の裏付けを突きつけるような言い方だ。もしかして僕は責任を取れと怒られているのか?
彼女の発言に動揺しているのは僕だけじゃない。周りもだった。いつの間にか何だかざわめいている。
「手を繋いだんだって」「二回はさすがに脈ありか」「あの男の方の下心なんじゃ?」知らないうちに物見客がどんどん集まってきた。
図書館のような公共の場では静かにが鉄則。それを従業員であるアルゼレアが自ら破っている。おかげで物見客は何事かと下の階からも様子を見に来たらしい。
僕が周りについて言葉を出す間もくれず、アルゼレアは僕に攻責めるように言った。
「私の側にいたいって言いましたよね。私を恋人にしてくれるんですよね?」
攻防戦は止まっている。だってもう僕の背後は本棚だ。逃げられない。
「……うん」
僕の答えに会場が沸いた。
しかしアルゼレアの追撃は続く。
「じゃあキスしてください!!」
「え、ええ!? ここで!? それはちょっと急過ぎない!?」
彼女らしくないことを言うので僕が驚いたら、アルゼレアはそこでようやく僕が目を向けるものを初めて追ったらしかった。
周りは大勢の物見客に囲まれている。何があってか突然強気だったアルゼレアだったけど途端にたじろいだ。
いつものアルゼレアだ、と僕は安心できるけど、周りからしてみたら、どうしたんだろう? と、思っているだろう。
「じゃ、じゃあ。私はこれで……」
「う、うん……」
アルゼレアが階段を降りて去ると、物見客の見る方向は彼女を追ってから僕へ。
公開告白後に僕へのインタビューを投げかける他人なんて居なくて、代わりにパラパラと拍手が起こる結末になる。
(((次話は来週月曜17時に投稿します。
Twitter →kusakabe_write
Instagram →kusakabe_natsuho
アルゼレアに会って何をするというわけでもない。じゃあ何で通っているんだろうと道端で足を止めて考えるけど、結局何も浮かばなくまた足を進めている。
ぼんやりと腑に落ちたのは彼女の安否確認という理由かな。ずいぶんお節介だなと自分でも思う。
ヴィレッジサンド店に通うのとは全然心持ちが違うんだけど、こちらも日課になってしまってか足が遠のくことはなかった。
ビルの階段を上がって返却窓口で借りていた本を返す。
作業をお願いしてもらっている間、僕はそっと奥の従業員室の窓を覗いた。けどアルゼレアは居ないようだった。
「アルゼレアさんなら四階に上がりましたよ」
貸し出し手帳が返ってくるのと一緒に、従業員による知らせも一緒だった。
僕は素直に驚いている。
「あの。僕、何か口に出してました?」
「いいえ? でも、ほぼ毎日アルゼレアさんに会いに来ていますよね?」
笑顔を向けられるけど、その笑顔はどっちなんだと僕は疑った。
新聞やニュースでも稀に見るストーカ行為や事件。僕ってまさか、そういう風に見られているんじゃないかって、初めて気付いた。
気付いてみて、遅いんじゃないかって思えてきた。
「僕、帰ります」
「ええっ!? なんで!!」
また警察に追われるのは嫌なんで。とは言えなく、それよりこの従業員は鍛え上げた筋肉質の腕でカウンタードアをぶち破り、難なく僕を取り押さえた。
連行される! 逮捕される!
そう、もがく僕を従業員は力づくで押さえつける。握力も怪力で、筋肉に自慢が無い僕はすぐに観念した。
でも僕が暴れなくなるとスッと解放してくれる。
「アルゼレアさんに会ってきてくださいよ。ね?」
「はい……」
投げ出していたカバンを拾い、僕はとぼとぼと階段を登っていく。
返却カウンター前で起こった騒ぎに対しては従業員がなだめてくれている。
四階に到着し、ちょうどアルゼレアは返却された本を本棚に戻しているところだった。
「僕ってストーカなのかな」
背後からかける言葉を間違って、アルゼレアは小さな悲鳴を上げながら振り返った。
そこに元気のない男がいると「何かあったんですか?」と、聞いてほしい。彼女は本を強く抱いたまま固まっているばかりだった。
……さあ。僕がアルゼレアに構う理由が分かったということで、最後に別れの挨拶でもしておこうかな。
告げる言葉を探していたら、アルゼレアが作業途中の本を一旦棚の上に置いている。
いつもの無表情から急にしかめっ面になった。こんな感情的な顔をするんだ、と感心している場合じゃない。彼女はずいずいと距離を詰めてくる。
「アル……ゼレア?」
叩かれても仕方がない距離まで来ると、アルゼレアは怒った形相のままで言う。
「フォルクスさん、私と付き合ってください!」
俯く僕がアルゼレアへ顔を上げたし、この階にいる他の利用者も全員本から顔を上げた。
「……え?」
ずいっとアルゼレアが僕の方へ踏み込んで来る。
人にはパーソナルスペースというものがあって、見ず知らずの人、親しい友人、恋人や家族といったカテゴリーによって不快を感じる距離が実はある。
それにより、アルゼレアが近づいて来たことで僕は一歩後ろに下がった。
「付き合うって……どこに……?」
「恋人です。恋人同士になるという意味の方です」
分かりきったことを説明され、また一歩近付かれて一歩下がった。
「私、あなたのことがずっと好きです! 上手く話せなくなったり顔が熱くなってしまうのは、あなたが好きだからです!」
「えっ、いやあの。ありがとう。う、嬉しいなそんな風に思ってくれて」
「手だって二回も繋ぎましたよね!?」
すごく情熱的な愛の告白をされている。けどそれだけは確信犯の裏付けを突きつけるような言い方だ。もしかして僕は責任を取れと怒られているのか?
彼女の発言に動揺しているのは僕だけじゃない。周りもだった。いつの間にか何だかざわめいている。
「手を繋いだんだって」「二回はさすがに脈ありか」「あの男の方の下心なんじゃ?」知らないうちに物見客がどんどん集まってきた。
図書館のような公共の場では静かにが鉄則。それを従業員であるアルゼレアが自ら破っている。おかげで物見客は何事かと下の階からも様子を見に来たらしい。
僕が周りについて言葉を出す間もくれず、アルゼレアは僕に攻責めるように言った。
「私の側にいたいって言いましたよね。私を恋人にしてくれるんですよね?」
攻防戦は止まっている。だってもう僕の背後は本棚だ。逃げられない。
「……うん」
僕の答えに会場が沸いた。
しかしアルゼレアの追撃は続く。
「じゃあキスしてください!!」
「え、ええ!? ここで!? それはちょっと急過ぎない!?」
彼女らしくないことを言うので僕が驚いたら、アルゼレアはそこでようやく僕が目を向けるものを初めて追ったらしかった。
周りは大勢の物見客に囲まれている。何があってか突然強気だったアルゼレアだったけど途端にたじろいだ。
いつものアルゼレアだ、と僕は安心できるけど、周りからしてみたら、どうしたんだろう? と、思っているだろう。
「じゃ、じゃあ。私はこれで……」
「う、うん……」
アルゼレアが階段を降りて去ると、物見客の見る方向は彼女を追ってから僕へ。
公開告白後に僕へのインタビューを投げかける他人なんて居なくて、代わりにパラパラと拍手が起こる結末になる。
(((次話は来週月曜17時に投稿します。
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