執事がヤンデレになっても私は一向に構いません

恵美須 一二三

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エピローグ

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 夢のような結婚式から、もう二ヶ月が経つ。

 今日は、お忍びでリモルソ様がニグラ公爵家にいらしていて、私が応対している。ルベルはジョナス様とお仕事中だから、いない。

「やあ、ニグラ公爵夫人。急に訪ねてしまって、悪いね」

 ニグラ公爵夫人と呼ばれるのはまだ慣れなくて、気恥ずかしい。

「いいえ。わざわざお越しいただいて、光栄ですわ」

 挨拶をしている間に、紅茶とお茶菓子をイレーネが配膳する。

 イレーネは聖地アドラディオには帰らず、私の侍女になることを志願した。使徒の役目はすでに終わっているから、無理に私に仕える必要は無いと伝えたけれど。

『どれだけこき使われても構いませんので、ぜひ私を侍女に!新鮮な純愛を毎日浴びたいんです!』と、本人が熱く語るから。その要望を叶えることにした。

「今日は」

「リヴ!!」

 リモルソ様が話し始めようとしたら、扉が壊れそうな勢いでルベルが部屋へ入ってきた。

「ルベル、お客様がいるのよ」

 いきなり失礼じゃない。

「知っています。さっき聞いて、走って来ました。俺以外の男と二人きりで会うなんて……」

「旦那様、私もおります。安心してください。奥様と旦那様の純愛は、私が命にかえても守りますので!」

 嫉妬に燃えるルベルと、使命感に燃えるイレーネ。
 
「ああ、イレーネもいたのか。頼りにしているぞ」

「はい!」

 恋愛オタクのイレーネのことをルベルは何故かとても信用していて、私の侍女にすると決めた時も喜んでいた。

「全く、リモルソ様にも奥様がいるのよ?何も起きるはずが無いのに、騒ぎ立てないで」

「はははっ!仲睦まじいようで何よりだ。それに、お前にも関係のある話しだから、むしろ来てくれて良かったよ」

 リモルソ様、ずっと会えなかった弟に会えて嬉しいのか、だいぶルベルに甘いのよね。今も、微笑ましいものを見たような顔で笑っている。

「で、一体なんの用だ?」

 ルベルはちゃっかり私の隣に座って、話しを聞く態勢になり、すかさずイレーネが追加の紅茶とお茶菓子を出した。

 用意がいいわね。もしかして、最初からルベルが来るとわかっていたの?
 
「今日の本題はね、二人の新婚旅行だよ」

「「新婚旅行!?」」

 ルベルと顔を見合わせる。

 新婚旅行……想像しただけで心が踊るわ。

「公爵位を継げば、気軽に旅行するのは難しくなるからね。新婚旅行に行くなら、公爵位を継ぐ前の今がチャンスだ。もともと旅をしている途中だったんだろう?また旅に出て、君達が救った世界を見て来たらどうだい?ニグラ公爵にも話してみたら、一年くらい行って来ても大丈夫だと言っていたし」

 ルベルも私も、もちろん行きたい。でも、今ルベルは公爵位を継ぐ為に勉強中の身。そんな状況で新婚旅行なんて、本当に行っていいのかしら?

 私達が迷っていると、扉をノックする音が響き。

「失礼します」

「ご機嫌よう、リモルソ陛下。先日ぶりですね」

 真面目な顔のティグレと、微笑みを浮かべたジョナス様が部屋へ入って来た。

 ティグレもイレーネと同じくエマーティノスに残り、今はニグラ公爵家の見習い家令として働いている。トマスさんとそっくりのジョナス様を見たら、離れがたくなってしまったみたい。

「ああ、ニグラ公爵。ちょうど例の件について話していたんですよ」

「なるほど。二人とも、私に遠慮せず行って来なさい。治療してもらったおかげで、最近は体の調子が良いんだ。まだまだ公爵として頑張れるよ」
  
 アウローラとしての記憶を取り戻した私は、以前よりも回復魔法の腕前がさらに上がり、生まれつき虚弱きょじゃくだったジョナス様の体質改善にも成功した。
 
 今の私なら、チェーリアの視力も回復させてあげられそうなのよね。それに、アンジェロに結婚の報告もしたいわ。

「リヴ、お言葉に甘えて新婚旅行に行きましょう」

 口に出したわけでは無いのに。アンジェロ様にも会いに行きましょうね、と耳元でルベルがささやく。私、そんなにわかりやすかったかしら?

「リモルソ様、ジョナス様。お心遣いづかい深く感謝いたします。ありがたく、新婚旅行に行かせていただきますね」

 ルベルと新婚旅行に行けるのが嬉しくて、自然と笑顔になる。

「奥様、ぜひ私もお供させてください!お二人のラブラブ新婚旅行のサポートは、このイレーネにお任せを!!」 

 キラキラと瞳を輝かせて張り切るイレーネは、とても頼もしい。
 
「……」

 一方ティグレは『一緒に行きたい』という目をして、遠慮がちにこちらを見つめている。
 
「ふふっ、いいよ。君も行って来なさい」

 ジョナス様がそう言うと、ティグレは嬉しそうにパァッと明るい顔になった。

「ありがとうございます!」

「こき使ってやるから、覚悟しろ」

 そんなことしないくせに。相変わらず、ルベルは素直じゃない。

「おう、上等だ!」

 まるで自分の息子のようにルベルとティグレを可愛がっているジョナス様は、二人を優しく見守っている。あっ、リモルソ様もジョナス様と同じ表情をしているわ。

「そうと決まれば、早速準備をしましょうか」

「ええ、楽しみね」

 行きたいところも、やりたいことも、たくさんある。次にまた人間として下界に生まれるのは、数百年後。人間の一生は短いから、精一杯ルベルと今回の人生を楽しまないと!

 



 fin.
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。




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