執事がヤンデレになっても私は一向に構いません

恵美須 一二三

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国外逃亡することになっても一向に構いません

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「それで、一体ルベルは何をしたの?」

 部屋で食事を食べながら、ずっと聞きたかった質問をする。

 温かいスープを飲み込むと、空っぽだったお腹にじんわりと優しく染み込んだ。

「端的に申しますと、フラウド王子とフーリー嬢は駆け落ちしたことに仕立て上げ、貧民街に眠らせた状態で放置。公爵は、書斎で自死したように細工しました」

「げほっげほっ」

 驚き過ぎて、スープを変に飲み込んでしまったわ。

「大丈夫ですか?」

 いや、大丈夫じゃないのはあなたでしょう?

「……ちゃんと詳しく教えてちょうだい」

「はい。まずは昨夜、王城に侵入してフラウド王子とフーリー嬢を魔法で眠らせ、豪奢に着飾らせてから貧民街まで運んで置いて来ました」

「どうして、わざわざ着飾らせて貧民街に運んだの?」

 ルベルなら、その場ですぐに殺すことも出来るはずなのに。

「もちろん、あの二人を苦しませる為ですよ。貧民街で着飾った状態で眠らせて放置すれば、必ず追い剥ぎにあいますから」

「フラウド様はこの国の王子なのよ?そんな人を追い剥ぎしようなんて思うかしら?」

 そんな命知らずなことをするような人がいるとは、ちょっと思えないわ。

「ふふっ。生きるのに必死な貧民街の人間には、いちいち王族の顔なんて覚える余裕はありません。それに、貧民街に王子がいるだなんて思わないでしょう。誰もフラウド王子とは気づきませんよ」

 貧民街に住んでいる人達は明日をも知れぬ暮らしをしている、と聞いたことはあるけれど。自分が住んでいる国の王族の顔すら分からないのね。

「じゃあ、フラウド様とカルメン様は今どうなっているの?まだ眠っている、というわけでは無いわよね?」

「魔法は解きましたから、起きているとは思います。まあ、起きない方が幸せでしょうけど」

「えっ?」
 
「おそらく二人は追い剥ぎされたあげく、すでに売り払われているでしょう。ちなみに、両手両足の骨を折っておいたので、逃げることも出来ません」
 
「売り、払われた?」

「はい。二人はそこそこ整った顔立ちですから、高く娼館に売れるはずです。ろくな治療もされずに、早速客の相手をさせられているかも知れませんね。フフフッ」

 ご機嫌な様子で笑うルベル。

 私が知らない間に、なんて恐ろしいことをしたの。もしも誰かにルベルの仕業だと知られたら、大変なことになるのよ。

「フラウド様がいなくなって、王宮は大騒ぎでしょう。きっと、血眼になって探しているわ……」

「ああ、それについてはご心配無く。捜索に駆り出されている者達も、真剣には探さないでしょうから。王子が見つかる可能性は、限りなく低いかと。なんせ、王子は愛する男爵令嬢と駆け落ちした、ということになっていますので」

「駆け落ち!?」

「フラウド王子の筆跡を真似て、書き置きを残してきました。王宮では、フラウド王子は駆け落ちした、ということになっているでしょう」

 それならきっと、捜索も国境付近や王都から離れた場所で重点的に行われることになる。しかも、捜索に駆り出される人達も、王族の責務を捨てて男爵令嬢と駆け落ちした王子の捜索なんて、やる気が出ない。

 駄目押しで、さらに見つかりづらくする為に。わざと、王都から近い貧民街を選んで置き去りにしたのね。駆け落ちした二人が、まだ王都の近くにいるとはなかなか考えないだろうから。
 
 フラウド様とカルメン嬢の件は、誰かに怪しまれる可能性がほぼ無さそう。良かったわ。

 次は、お父様について聞かないと。

「ルベル、お父様は……」

「公爵とは楽しく追いかけっこをした後、書斎に隠されていた毒薬を飲んで頂きました。何かに備えて用意していたんだと思いますが。まさか、自分が飲むことになるとは思わなかったでしょうね。ああ、多少痛めつけましたが、回復魔法で治して痕跡は消したので、安心して下さい」

 にっこりされても、そこは全然安心ポイントじゃないわよ。ルベルの服についていた血のシミは、お父様のものだったのね。



「ねえ、これからどうしましょうか?」

 話しを聞きながら食事を終え、ルベルに問いかけた。

 婚約破棄になって、お父様も死んで。自由の身になったのはいいけれど。これからどうすればいいのか、私にはよくわからない。

「そうですね。リヴィアンナ様には、二つの選択肢があります。一つは、このまま公爵家で過ごすこと」

 お父様が死んだので、隣国に留学しているお兄様が新しい公爵に今後はなる。でも、お兄様はお父様とよく似た性格だから。お父様と同じく、私を都合の良い道具のように扱うに違いないわ。公爵家で過ごす選択肢は、無しね。

「もう一つは?」

「俺と一緒にこの家を出て国外逃亡して旅をする……なんて、どうでしょう?」

「とっても素敵!!そうしましょう!」

 私がはしゃぐと、ルベルは安心したようにほっと息を吐いた。

 馬鹿ね。私が断るとでも思ったのかしら?

 昔から冒険小説が好きで、旅には憧れていたけれど。公爵令嬢というだけでなく、フラウド様の婚約者にもなってしまったから、諦めていた。

 昔の憧れをルベルと実現出来るなんて、最高じゃない!愛する人と国外逃亡するって、刺激的でドキドキするわ。


 喜ぶリヴィアンナをじっと見つめるルベルは、やはり公爵を殺したのは正解だったな、と満足気に微笑む。公爵の無様な死に様を思い出しながら……。




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