20 / 47
旅の仲間が増えても一向に構いません
しおりを挟む人懐っこさを感じる笑顔でこちらに近づいて来る彼は、オレンジ色の髪が陽の光を浴びてキラキラ輝いている。
金色の瞳からは、ルベルへの親しみを感じるのに。そんな視線を向けられている張本人は、酷く殺気立っていた。
「よほど死にたいらしいな。今すぐ殺してやる」
ルベルは無表情で、いつの間にか両手にナイフを持っていた。今にも飛びかかりそう。
睨みつけていた時よりも、無表情の今の方が凄みがある。
「怒るなって。ちょっとした挨拶みたいなもんだろ?許せよぉ」
「黙れ、殺す」
「ルベル、落ち着いて。相手の話しを聞きもしないで殺しては駄目よ。まずは、あの人の話しを聞いてみましょう。殺すかどうかは、それから決めたらいいわ」
「……わかりました。リヴがそう言うなら、しょうがないですね」
私の言葉にしぶしぶ納得してくれたルベルは、とりあえずナイフを下ろしてくれた。
「いや、待って?それって、俺を殺す可能性はまだあるってこと!?」
「さあ?それはあなた次第ね」
せっかく良い雰囲気だったのに邪魔をされたし、ルベルとどんな関係なのかもわからない。まだ、信用は出来ないわ。
「うわぁ。まともに見えて、意外とお嬢ちゃんもヤバイんだな。ルベリウスほどじゃないけど」
どういう意味かしら?なんとなく、失礼なことを言われているような気がする。
「おい、三秒以上見るな。リヴが汚れる」
私の姿を隠すように、ルベルは両手を広げて私の前に立った。
「はあ?お前、それは酷すぎだろ!俺とお前の仲なのに!!」
「どんな仲だ。俺とお前はただの赤の他人。それ以上、特に何も無い」
嫌そうに顔をしかめるルベル。
「馬鹿言うなよ!同じ屋根の下で寝食を共にした仲間で、兄弟弟子だろうが!」
「兄弟弟子?」
そういえば、ルベルがどんな環境で育ったのかはあまり詳しく聞いたことが無いわ。
「誤解しないで下さい。たまたま同じ男に拾われて育てられただけで、親しくしていたわけではありませんので」
「そういうドライなところ、全然変わってないな。とりあえず、またお前に会えてよかったよ。ずっと探してたんだぞ。何も言わずに消えやがって」
「まあ!ルベルったら何も言わずにいなくなってしまったの?まるで野良猫みたい」
髪が黒いから黒猫ね。
「俺が猫だとしたら野良じゃなく、飼い主はあなたでしょう」
むっとしたような表情で、私を見つめるルベルが愛おしい。
「ふふっ、お馬鹿さんね。そんなことわかっているわ。ちょっとした例えよ」
「リヴ……」
私とルベルは微笑み合った。
「えっ?特殊ないちゃつき方するのやめてくれない?お前、そんな顔も出来たんだ……ていうか、俺もいるってこと忘れるなよな!」
彼の存在を忘れかけていたわ。
「ああ、まだいたのか。なんだ、暇なのか?」
「暇じゃねーよ!お前のことずっと探してたって言っただろうが。俺はお前に用があるんだ!」
「聞いてあげたら?」
あまりにもルベルに相手にされていなくて、少し可哀想。
「そうですね、リヴがそう言うなら。ほら、さっさと済ませろ」
「あー、なんていうか……んー、あれだよ。あの、えーとぉ、ほら……」
言いづらいことなのかしら?
視線を泳がせて、ずいぶん言いよどんでいる。
「ふざけているのか?」
「ふざけてない!けど……久しぶりに会ったばかりだから。いきなりは言いづらいなぁ、みたいな?」
気まずそうに困ったような顔をして、ルベルを上目遣いで見る彼。何か事情がありそうね。
「私達、聖地アドラディオに向かうの。良かったら、あなたも一緒に来る?」
「いいのか!!」
「リヴ!?」
嬉しそうなティグレとは対照的に、信じられないという目で私を見るルベル。こんなにびっくりしているところは、あまり見たことが無い。貴重ね。
「一緒に過ごしているうちに、きっとあなたもルベルに言いたいことが言えるようになるでしょう」
「こいつと一緒にいるから、どんなヤバイ奴かと思ってたけど。あんた結構良い奴だな!」
「おい、リヴを『あんた』呼ばわりするな。殺すぞ」
「こら、ルベル」
「申し訳ありません」
すぐに殺そうとするんだから。
「いやあ、悪い悪い。そういえば、まだ自己紹介もしてなかったな。俺は、ティグレ。よろしくな!」
「よろしくね、ティグレ。私は」
「リヴ、こんな奴に自己紹介なんてしなくていいですよ」
「でも……」
威嚇するように、ルベルはティグレを睨む。
「名前くらい聞いておかなきゃ、呼ぶ時に困るだろ」
「なら、リヴのことはお嬢様と呼べ。先に言っておくが、もしもリヴに何か良からぬことをしたら……」
「したら?」
ティグレは首を傾げた。
「とりあえず、生きたまま足先から魔物に食わせるかな」
「こっわ!!とりあえずでやることじゃないし、ゆっくり痛めつけるところにめちゃくちゃ悪意を感じる」
「この程度のことで怯えるなんて、相変わらず臆病者だな」
「いやいやいや、俺はぜーんぜん臆病じゃないから!お前がおかしいだけ。そこんとこ誤解すんなよな!」
まあ、表情一つ変えずに人を殺めるルベルと比べてしまえば。大抵の人は、臆病者ということになってしまうかも知れないわね。
「はぁー。とにかく、リヴに迷惑をかけるようなことは絶対にするなよ」
ため息まで吐いちゃって。そんなにティグレを連れて行くのが嫌なのかしら。
「オーケー、オーケー。わかってるって」
眉間にしわを寄せるルベルを見ながら、ティグレは嬉しそうにヘラヘラしている。
二人きりになると思っていた私達の旅に、新たな仲間が加わった。
10
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる