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15 デートではありません

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 (ねむぅ...)

 さんざん昨日ぽちを観察したおかげで、あち子はいつもより寝るのが遅くなってしまった。
 しかし今日の対決の事を思い緊張していたせいか、早く起きてしまった。

 「おはよう~」

 あち子が下に降りていくと、家族はみなもう起きていた。
 休みでも早起きの両親は起きており、母親は朝食の準備、父親は新聞、弟の健太までリビングでテレビを見ていた。

 あち子はご飯を食べながら、ふと今日は何を着ようかな~と考えた。
 ぽちがらみとはいえ、男の子と待ち合わせするのは人生初めてだと考えたら、なんだか緊張してきた。
 しかも相手はあのイケメン坂村だ。

 こんな状況じゃなかったらもっとドキドキするのにと思ったが、よく考えればこんなことでもなければ、あんなイケメンと会うことなんかないんだと思いなおしたら、なんだかがっくりきた。
 ただそれがよかったのかさっきの緊張はなくなり、洋服もまあいいかってことにして、いつも紗枝と会うような気軽な格好になった。

 「じゃあ、行ってくる」

 リビングにいる家族に告げ、玄関に向かった。
 もちろんぽちも、肩にのってついてくる。

 「ねえちゃん、どこいくのー」

 健太が玄関までついてきた。
 あち子が靴を履いていると、なぜかあち子の全身をくまなくみてからぽつんと言った。

 「な~んだ!デートじゃないのか」

 あち子が、思わず健太のほうを見ると

 「だってさ、いつもと同じ格好じゃん!デートだったらもっとかっこつけるかと思ってさ。あーあ、きて損しちゃったよ!」

 勝手に見に来たくせに健太はそうつぶやくと、なんだかがっくりした感じでリビングに戻っていった。

 あち子は、なんだかおもしろくなくてひとりふんと鼻を鳴らして外に出た。

 (この服装って変かなあ~)

 家を出てしばらく歩いているとあち子は、さきほどの健太の反応を思い出して急に心配になった。
 デートなんてしたこともないし、どういう洋服がいいのかもわからない。
 やっぱりもうちょっと考えればよかったかなあと、公園へ歩きながら悶々としてしまった。
 しかしあまり気の張った洋服でいったら反対に坂村だって困るだろう、デートじゃないんだからと考えまあいいかと思い直した。

 ただ公園に近づくにつれカップルばかりが目に入り、特に女の子のほうの洋服がとっても気になるあち子だった。


 公園には、予定時刻の10分前には着いた。
 公園は広いので、入り口近くがいいかなと思いながらも、通る人が多いのでなんだかおなじ学校の子たちに見られるのも嫌で、昨日話をした噴水広場に行くことにした。

 急に肩にのっていたぽちが、ふわりと浮き上がった。
 そして先に噴水広場のほうへ、ふわふわと飛んで行ってしまった。

 「おっわっ_!」

 噴水広場のほうで、変な声がした。

 声の主は坂村だった。
 ぽちが、坂村の前をふわふわと飛んでいる。
 坂村はぽちに気を取られていて、こちらに気が付いていない。

 「坂村君!」

 あち子は、あわてて坂村君のほうに駆け出した。
 ぽちを回収しなくてはと思ったのだ。

 坂村は声が聞こえたのか、あち子をみて妙にほっとしたような顔をした。

 そこであち子は、ふと視線が気になりあたりを見渡すと、いろいろなところから視線を感じた。
 特に女の子から。

 この噴水広場は、よく待ち合わせの場所になっている。
 だからか今日も結構人がいる。
 坂村は目立つから、周りにいた女の子たちも誰が来るのか気になっていたのだろう。
 待ち合わせした女の子があまりに平凡な子で、びっくりしたのかもしれない。
 二人はどういう関係なのか知りたいのか、あち子はなぜか皆に凝視されていたのであった。

 しかもあち子はぽちを捕まえようと走ったのだが、周りから見れば坂村に駆け寄ったように見える。
 当の本人坂村も、実際にはぽちを捕まえてくれるあち子にほっとしたのだが、知らない周りはあち子が来たからほっとしたように見えたのかもしれない。

 あまりの視線の多さに、あち子はなんだか居心地がわるくなって坂村に小さな声でいった。

 「遅くなってごめんね。どこいくの?」

 坂村はぽちがあち子の肩にのったのを見て、先ほどのあせりはどこへやら急にクールにもどっていった。

 「いいよ、俺が早く来すぎだ。まだ待ち合わせ時間になってない。今から俺んちに行こう」

 それだけ言うと、一人すたすたと歩きだした。

 周りは何を誤解したのか、さっきのあせった姿とクールになった姿のギャップにやられたのか、みな一応に顔を赤らめていた。

 それを冷静に見ていたあち子は思った。

 (すごいな~!坂村君。学校だけじゃないんだ。いつもあんなに、注目浴びてるんだ~)

 坂村とあち子の足のコンパスが違いすぎるのか、いつの間にか坂村はずいぶん先を、たすた歩いていたのだった。
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