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22 連休は映画です

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 (休みだーーー!)

 待ちに待った、ゴールデンウィークがやってきた。
 お休みに入って数日たった。

 今日は、紗枝と映画に行く約束をしている。
 近くにショッピングセンターがあり、その中に映画館もある。
 自転車でも行けるので、とっても便利なのだ。

 ピンポーン

 チャイムが、鳴る。
 紗枝がお迎えにきてくれたのだ。
 急いで外に出る。

 「あっちゃんかわいい!そのワンピ」

 すかさず紗枝がほめてくれる。
 今着ているあち子のワンピースは、昨日母の美佐子と一緒にデパートに行って、買ったばかりのものだ。
 ちょっとお値段はお高かったけれど、あち子も母の美佐子も気に入って買ってもらった。
 ちょっと小柄な花模様がついていて、膝下までありふわりとしている。
 だがウエストはしっかりシェイプされていて、なんだかウエストが細くなったような気がするすぐれものだ。
 薄い若草色の、カーディガンまでついていて、単品でもつかえるということが買う大きな要因となった。

 紗枝といえば、やはりスレンダーな体形に合ったパンツにおしゃれなセーターを着ていて、靴のスニーカーもあいまってまるでモデルのようだとあち子は思った。

 「紗枝ちゃんもかっこいい!素敵!」

 2人でほめあい、気持ちよくなって自転車で出かけた。


 映画館は大きくスクリーンもいくつもあり、いろいろな映画をやっている。
 今日は、二人で決めていたファンタジー映画を見ることになっていた。

 映画館に着くと、やはりゴールデンウィークのため混んでいた。
 券を買おうと並んでいる列につこうとしたとき、後ろから声がした。

 「吉田さ~ん!」

 2人でそちらを振り返れば、同じクラスの岡田と坂村が来るところだった。
 紗枝を呼んだのは岡田だった。

 「吉田さんに鈴井さん、こんにちは!二人とも映画だよね。何見るの?」

 さわやかに岡田が言う。

 「ファンタジー映画だよ。岡田君たちは?」

 紗枝が答える。

 「僕たちもだよな」

 岡田が、坂村をちらっと見て言う。

 「じゃあ、いっしょに見ようよ」

 岡田は、あたりまえのことのようにさらっというと、紗枝とあち子と一緒に列にならんだ。
 もちろん坂村もならぶ。

 岡田と坂村は、やはり目立っっていた。
 ふたりとも、ごく普通のジーパンにシャツを着ているだけだというのに、まわりの女の子たちの視線を釘づけにしている。
 まあよく見ればシャツはちょっとおしゃれで、デパートに売っているような高級品に見えるが。
 あち子以外の3人は、周りの視線を気にも留めていないようだったが、あち子には初めての経験でちょっと緊張してしまった。
 ただ今日は、ちょっとほっとしていた。
 なぜなら今日は、ちょっとかわいいワンピースをきていたからだ。
 いつもの洋服だったら、みんなの視線に居心地が悪かっただろう。

 
 映画は、面白かった。
 しかしである。
 一方の横には紗枝が、もう一方の横には坂村がすわったのだ。

 岡田がどうせなら女の子の横に座ろうと言い出し、紗枝の横に座ってしまった。
 あち子は紗枝の隣にいたので、坂村があち子の隣になった。
 おかげで今まで男の子と映画を見に行ったことなんてないあち子は、はじめ緊張してしまい、映画どころではなかったのである。

 しかもぽちまで、やらかしてしまった。
 そのせいであち子は、よけい映画に集中できなかった。
 というのもぽちは、はじめあち子の肩にのっていた。

 しかし映画が始まるとすぐ大きい音にびっくりしたのか、あち子の膝に移ってきた。
 その状態も五分ほど続いただけで、急にもぞもぞと動き出した。

 コロコロコロコロ__。

 あっという間に、転がるように隣の坂村の膝の上に、のってしまったのである。

 これにはあち子もびっくりしたのだが、当の本人坂村もびっくりしたのだろう。
 隣で見ていてもわかるぐらい、一瞬びくっとなっていた。
 しかしぽちは、坂村の膝の上が心地よかったのだろう。
 動こうとしない。
 仕方なくあち子は、ぽちを連れ戻そうと坂村に手を伸ばした。

 「いいよ。このままで」

 坂村が小さな声でいってくれたので、手を引っ込めたのだが気が気ではなかった。
 はじめはびっくりしていた坂村も慣れてきたのか、いつの間にかぽちをなでながら映画を見ていたのでほっとしたあち子だった。
 ただ隣の紗枝に変に思われないかちらっと見たが、紗枝は映画に夢中のようでこちらを気にしていなかった。

 その隣の岡田にばっちりみられていたことに、気づいていなかったあち子だった。
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