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24 図書館に行きました
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ゴールデンウィーク最終日になった。
あち子は、一人図書館に行くことにした。
朝から連休疲れか、リビングで家族みんなぐた~としている。
健太は連日の野球の試合で。
父牧夫は、ゴールデンウィーク中健太の野球の送迎・応援や、一人で趣味の釣りに行った。
母の美佐子も、野球の応援の他、あち子と買い物に行ったり、実家に行ったりとあち子以外三人とも忙しそうにしていた。
あち子はそこまで疲れてはいないので、ひとりで出かけることにしたのだ。
「じゃあ、いってくるね~」
あち子が玄関から声をかけると、疲れたような声がかえってきた。
「気を付けてね~」
「気を付けるんだぞ~」
母と父だった。
(何冊借りようかな。あんまり借りても、学校始まったら読めないしなあ)
何冊かすぐ候補が上がったのだか、今日のところは二冊にしておこうと決めている。
あち子は閲覧用のテーブルに、本を四冊並べて悩んでいた。
一冊づつちょこっとだけ読んでみる。
あち子がうんうん悩んでいると、肩の上のぽちがふわふわと飛んで行った。
あれっと思ったが、すぐに戻ってくるだろうとほっておいた。
「きてたんだー」
真正面から声がするので、びっくりして本から目を上げると坂村が立っていた。
ぽちは、なぜか坂村の肩に乘っている。
「ぽちでわかったよ。図書館に入ったら、すぐきたからさ」
坂村は、なぜかぽちのお気に入りになった。
はじめの警戒はどこへやら、かくいう坂村もぽちが肩にのっていても文句も言わない。
だからだろうか、ぽちもこんなに懐いているんだろう。
「坂村君は勉強しに来たの?それとも本を借りに?」
「まあね、ちょっと暇つぶしかな。それより鈴井は本を借りに来たの?」
坂村は、テーブルに置いてある本たちを見ていった。
「そうなの、どの本借りようかと考えている最中」
「じゃあ俺もここで本読もうかな。いい?」
「もちろん、いいよ。ぽちおいでー」
あち子は、小声でぽちをよんだ。
ぽちは薄情にも、まだ坂村の肩にのっていたそうだったが、仕方なくとばかりにあち子のもとというより、テーブルの上にぐでんと横になった。
坂村は荷物をおいて、本を探しに行った。
あち子はその様子をみてから、自分もまたずいぶん坂村に慣れたものだと思った。
ちょっと前ならこんなに気軽に話せなかっただろう。
ある意味ぽちのおかげかなと思いながら、いつの間にか本選びに夢中になっていた。
気づけば、あち子は借りるはずの本一冊を半分読んでしまっていた。
ぽちはどこかなあと探すと、ぽちが坂村の手元にいて、体をなでられて頭がゆらゆらしていた。
最近ぽちは、うれしいと体をふわふわさせたり、頭をゆらゆらゆするようになったのだ。
なんだかそんな仕草は、犬のしっぽを思い起こさせるなあとあち子は思っている。
坂村は本を読みながらなでているので、たぶん読んでいる最中に本の上にのったりして、さわってアピールをしてたんだろう。
「ごめんね、ぽちが邪魔しちゃって」
「いいよ、本読みながらでもなでられるしさ」
坂村はあち子のほうをむいて、柔らかな笑顔で言った。
ぽちが癒しになってるのだろう。
いつものクールな顔じゃない坂村に、ちょっとだけドキドキした。
ふと横を見ると、ちょっと離れたところに座っているほかの人たちも、坂村をぼーと見つめており、坂村のやわらかい笑顔にやられてしまったようだった。
お昼のチャイムが聞こえたので、二人は帰る支度を始めた。
あち子は結局本をだけ二冊借り、後の二冊は次回に借りることにした。
「そんなに悩んでるんなら全部借りたら。ここ10冊まで借りれるんだから」
「そうなんだけど借りたら借りですぐ読んじゃいたくなるんだよね。それに寝不足で、またこの前みたいなこと起こっても困るしね~」
あち子の顔が、さそ情けない顔になっていたのだろう。
坂村は、思わす吹き出していた。
そしてぽちをなでながら、小声で言ったのだった。
「もう大丈夫だよなぽち。ずいぶん成長したもんな」
坂村はずいぶんぽちに肩入れしたものだ。何を基準に成長したってわかるのか、思わずあち子は坂村に聞き返したくなった。
しかしぽちがなでられて嬉しそうに頭を揺らしていたのでやめておいたのだった。
あち子は、一人図書館に行くことにした。
朝から連休疲れか、リビングで家族みんなぐた~としている。
健太は連日の野球の試合で。
父牧夫は、ゴールデンウィーク中健太の野球の送迎・応援や、一人で趣味の釣りに行った。
母の美佐子も、野球の応援の他、あち子と買い物に行ったり、実家に行ったりとあち子以外三人とも忙しそうにしていた。
あち子はそこまで疲れてはいないので、ひとりで出かけることにしたのだ。
「じゃあ、いってくるね~」
あち子が玄関から声をかけると、疲れたような声がかえってきた。
「気を付けてね~」
「気を付けるんだぞ~」
母と父だった。
(何冊借りようかな。あんまり借りても、学校始まったら読めないしなあ)
何冊かすぐ候補が上がったのだか、今日のところは二冊にしておこうと決めている。
あち子は閲覧用のテーブルに、本を四冊並べて悩んでいた。
一冊づつちょこっとだけ読んでみる。
あち子がうんうん悩んでいると、肩の上のぽちがふわふわと飛んで行った。
あれっと思ったが、すぐに戻ってくるだろうとほっておいた。
「きてたんだー」
真正面から声がするので、びっくりして本から目を上げると坂村が立っていた。
ぽちは、なぜか坂村の肩に乘っている。
「ぽちでわかったよ。図書館に入ったら、すぐきたからさ」
坂村は、なぜかぽちのお気に入りになった。
はじめの警戒はどこへやら、かくいう坂村もぽちが肩にのっていても文句も言わない。
だからだろうか、ぽちもこんなに懐いているんだろう。
「坂村君は勉強しに来たの?それとも本を借りに?」
「まあね、ちょっと暇つぶしかな。それより鈴井は本を借りに来たの?」
坂村は、テーブルに置いてある本たちを見ていった。
「そうなの、どの本借りようかと考えている最中」
「じゃあ俺もここで本読もうかな。いい?」
「もちろん、いいよ。ぽちおいでー」
あち子は、小声でぽちをよんだ。
ぽちは薄情にも、まだ坂村の肩にのっていたそうだったが、仕方なくとばかりにあち子のもとというより、テーブルの上にぐでんと横になった。
坂村は荷物をおいて、本を探しに行った。
あち子はその様子をみてから、自分もまたずいぶん坂村に慣れたものだと思った。
ちょっと前ならこんなに気軽に話せなかっただろう。
ある意味ぽちのおかげかなと思いながら、いつの間にか本選びに夢中になっていた。
気づけば、あち子は借りるはずの本一冊を半分読んでしまっていた。
ぽちはどこかなあと探すと、ぽちが坂村の手元にいて、体をなでられて頭がゆらゆらしていた。
最近ぽちは、うれしいと体をふわふわさせたり、頭をゆらゆらゆするようになったのだ。
なんだかそんな仕草は、犬のしっぽを思い起こさせるなあとあち子は思っている。
坂村は本を読みながらなでているので、たぶん読んでいる最中に本の上にのったりして、さわってアピールをしてたんだろう。
「ごめんね、ぽちが邪魔しちゃって」
「いいよ、本読みながらでもなでられるしさ」
坂村はあち子のほうをむいて、柔らかな笑顔で言った。
ぽちが癒しになってるのだろう。
いつものクールな顔じゃない坂村に、ちょっとだけドキドキした。
ふと横を見ると、ちょっと離れたところに座っているほかの人たちも、坂村をぼーと見つめており、坂村のやわらかい笑顔にやられてしまったようだった。
お昼のチャイムが聞こえたので、二人は帰る支度を始めた。
あち子は結局本をだけ二冊借り、後の二冊は次回に借りることにした。
「そんなに悩んでるんなら全部借りたら。ここ10冊まで借りれるんだから」
「そうなんだけど借りたら借りですぐ読んじゃいたくなるんだよね。それに寝不足で、またこの前みたいなこと起こっても困るしね~」
あち子の顔が、さそ情けない顔になっていたのだろう。
坂村は、思わす吹き出していた。
そしてぽちをなでながら、小声で言ったのだった。
「もう大丈夫だよなぽち。ずいぶん成長したもんな」
坂村はずいぶんぽちに肩入れしたものだ。何を基準に成長したってわかるのか、思わずあち子は坂村に聞き返したくなった。
しかしぽちがなでられて嬉しそうに頭を揺らしていたのでやめておいたのだった。
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