かん子の小さな願い

にいるず

文字の大きさ
9 / 46

かん子の兄俊史 その2

しおりを挟む
 ついこの前まで、俊史から見てもかん子は元気がなかった。いつもお気楽、のんきに生きるのがモットーなかん子がである。
 原因は分かっている。就職活動がうまくいってないからだ。このまえはこともあろうに高い英語教材に手を出していた。

 玄関に行くと、大きな箱を持ったままぼ~っとたっているかん子には正直びっくりした。

 俊史は社会人であるし、そこそこお金もある。かん子に貸してあげることにしたのだが、もう少し元気になればいいと思う。

 それからはお金を貸してやった弱みという名目で、かん子にはかん子の好きなお菓子や本を買いに行かせたりした。かん子はSFものが好きだ。かん子は俊史が好きだと思い込んでいるが、俊史自身そう特別好きではない。でもかん子が少しでも元気が出るなら我慢して見てやっている。

 この前は、母親美絵子が趣味にしているサークルの踊りのお披露会があった。母親は、なぜかかん子に送り迎えをしてもらいたがっていた。
 かん子がいない時母親にこっそり聞くと、どうやら就職をお世話してくれたお友達が会いたがっているらしい。

 おやっと思ったが、よもやお披露会でなにかあるとは考えにくい。就職をお世話してくれたことでもあるし、ここは母親の顔を立ててやることにしよう。

 さりげなく誘導しかん子をいかせることにしたが、いなり寿司を大事に抱えて戻ってきたかん子の様子が少しおかしい。何やら独り言をぶつぶついっている。

 「なんなのよ~あれは。ちゃんとチケットでかえたし、盗んできたんじゃあないんだからね...」

 なんだかよくわからないことをいっている。かん子は変わってるから、時々何を考えているのかよくわからないときもあるが、そう心配はいらないだろう。

 俊史はそう結論づけた。



 そんなかん子もやっと就職が決まり、4月から社会人になる。就職先はあいつのもくろみ通りで、兄としてはちょっと不満だが。かん子も元気になったことだしこの際仕方ない。
 入社式はホールでおこなわれるようだ。

 俊史は心配でかん子にいやがられながらも、会場までついていってやることにした。
 兄の俊史から見ても、妹かん子はかわいい部類に入ると思っている。きゃしやではかなげな風情が、守ってやりたいという気をおこさせるようだ。

 案の定一緒に乗った電車の車内でも、ちらちらとかん子をみる男たちの視線と出会う。俊史は混雑する車内では、まるで恋人にするようにやさしくかん子を守ってやる。
 しかも自分のものだと言うような態度で。おまけに周りの男どもを視線でけん制しておく。

 男たちはそんな様子を見て、みな肩をおとしていった。


 入社式会場前でかん子と別れる。さりげない態度で、自分とかん子の関係をアピールしながら。やはりここでもかん子にむける新入社員の男たちの視線を感じる。だがさっきのアピールで、変な虫も寄りにくくなっただろう。それにこの顔のおかげで、同じ新入社員の女たちの視線も自分にむけられているのを感じる。きっといろいろな噂をしてくれることだろう。

 俊史は自分のやった成果に満足していた。かん子といえば、俊史のやっていたことなどまったく気づきもせずに、ここまでついてきてくれたお礼までいっていた。

 こうしてかん子の周りから容赦なく男どもをけちららしている俊史だが、ひとりだけ一目置いている男がいる。どうやらそいつも行動に出るらしい。
 しかもかん子は気づいていないが、外堀から徐々に埋めているようだ。

 (がんばれよ!)

 俊史は後ろを振り返り、入社式会場に向かうかん子にそうつぶやいた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

処理中です...