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かん子の入社式 その3
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入社式が終わった。
明日から研修のためにしばらく恋人に会えなくなるから、これからデートだとうれしそうに話す松田とロビーで別れた。松田のあんなに楽しそうな顔をみて、かん子も少しだけうらやましくなった。
こんな時は寝るに限る。早く帰って明日に備えて寝ようと歩き出したかん子に、後ろから声がかかった。
「ねえちょっと君!」
かん子はなんだろうかと後ろを振り向くと、そこにはきらきらした王子様のような男の人が立っていた。髪は柔らかそうな明るい茶色、瞳も同じ色。肌の色も白いから、もともと色素が薄いのかもしれない。
背も高くて180センチはあるだろう。すらーっとした体形で、まるで絵本の中の王子様のようだ。顔立ちも美形で、目は切れ長まつ毛もながく鼻筋もきれいに通っている。
「これからみんなでお茶に行こうかという話があるんだけど、君もどう?明日もあるから1時間ぐらいだけどね」
その王子様のような人は、話終えた後きらきらした王子スマイルで微笑んだ。普通の女の子が見たら、この王子スマイルだけでやられてしまうだろう。
しかしそこはかん子である。美形には兄俊史で免疫済みだ。それに王子スマイルの中に、なんとなく腹黒いものを感じた。
しかもなぜか王子の後ろのほうからも黒いオーラを感じる。後ろをみると王子のほかに男性が2人、女性が3人うちひとりはお姫様って感じの巻き巻きカールの華やかな人。どうも黒いオーラは、その女性から出ているようにみえる。
男性陣からは、おもしろっがっているような様子しか感じなかったが。
(こっれってやばくない!?わたしがいったらお邪魔虫じゃん。てか王子空気読めよ。今日から同僚なんだよ、おい。こんなのにのこのこついていったら、明日から女の子たちに何言われるか丸わかりじゃん)
かん子は、考えている間王子を無意識にみていたのだろう、気がつくと後ろの女子達特にお姫様の顔がどんどん
険しくなっていくのが見えた。そこでやっと王子をがん見していたのに気がついたが、王子は顔を見られることには慣れているのだろう。気にもせずにまた微笑んで、無言で返事を催促した。
かん子は決意した。
(ここはふんばって、明日からの平穏な日々を勝ち取らなくてはいけない!こんな腹黒王子なんかで私の毎日を邪魔させてたまるか)
「すみません、今から用事があるんです」
ここでにこっと微笑んでみる。
思った通り王子は、今までNOという言葉はきいたことがないのだろう。少し顔が歪んで、仮面がちょっとだけ剥がれた気がした。
(おいそこの彼女たち、この顔を見ておくれよ。けっして優しい王子様じゃないよ)
かん子は後ろの彼女たちにそういってやりたかったが、なにしろ彼女たちは王子の後ろにいる。だから彼女たちから王子の表情は見えない、残念だ!
(よし、今からが本番よ。いけかん子ー!)
かん子は、自分で心の中で勝をいれて次の言葉をいった。しかもちょっと首をかしげながら。
「残念ですぅ~。私、踊りを習ってるんですけど、今日そのお着物をとりにいかなくてはいけなくてぇ~」
案の定王子の表情が緩む。心の中でやっぱりこの魅力には勝てないだろうと思っているに違いない。反対に後ろの彼女たちの怒りはマックスのようだが。
はやくつっこんでほしいとかん子が思っていると、王子は、かん子が願っていたことを口にしてくれた。
「そうなんだー。踊りやってるんだ。君に似合ってるね。それじゃあ仕方ないね残念だけど。でもまた同じ会社だし次回は一緒に行こうね!」
かん子は思った通りのことを王子が言ってくれてほくそ笑んだ。
「ありがとうございますぅ~。今度踊るのは星四郎の“どっこい浪花節”なので、イワケンサンバのイワケンも真っ青のスパンコールいっぱいのきらきら着物なんですぅ~。老人会の慰問には評判良くってぇ~」
どうだまいったか!してやったりと、かん子はいいはなった。
王子の顔を見ると呆然としていた。もちろん後ろの人々も同様である。まだかん子のいったことを、理解しきれていないらしい。
かん子はあっけに取られている面々をその場に残して、ひとり挨拶して駅へと向かった。
少し歩いたところで誰の笑いだろうか、後ろからひときわ大きな笑いが聞こえてきた。
かん子は思った。
(かん子よくやった!グッドジョブ!)
明日から研修のためにしばらく恋人に会えなくなるから、これからデートだとうれしそうに話す松田とロビーで別れた。松田のあんなに楽しそうな顔をみて、かん子も少しだけうらやましくなった。
こんな時は寝るに限る。早く帰って明日に備えて寝ようと歩き出したかん子に、後ろから声がかかった。
「ねえちょっと君!」
かん子はなんだろうかと後ろを振り向くと、そこにはきらきらした王子様のような男の人が立っていた。髪は柔らかそうな明るい茶色、瞳も同じ色。肌の色も白いから、もともと色素が薄いのかもしれない。
背も高くて180センチはあるだろう。すらーっとした体形で、まるで絵本の中の王子様のようだ。顔立ちも美形で、目は切れ長まつ毛もながく鼻筋もきれいに通っている。
「これからみんなでお茶に行こうかという話があるんだけど、君もどう?明日もあるから1時間ぐらいだけどね」
その王子様のような人は、話終えた後きらきらした王子スマイルで微笑んだ。普通の女の子が見たら、この王子スマイルだけでやられてしまうだろう。
しかしそこはかん子である。美形には兄俊史で免疫済みだ。それに王子スマイルの中に、なんとなく腹黒いものを感じた。
しかもなぜか王子の後ろのほうからも黒いオーラを感じる。後ろをみると王子のほかに男性が2人、女性が3人うちひとりはお姫様って感じの巻き巻きカールの華やかな人。どうも黒いオーラは、その女性から出ているようにみえる。
男性陣からは、おもしろっがっているような様子しか感じなかったが。
(こっれってやばくない!?わたしがいったらお邪魔虫じゃん。てか王子空気読めよ。今日から同僚なんだよ、おい。こんなのにのこのこついていったら、明日から女の子たちに何言われるか丸わかりじゃん)
かん子は、考えている間王子を無意識にみていたのだろう、気がつくと後ろの女子達特にお姫様の顔がどんどん
険しくなっていくのが見えた。そこでやっと王子をがん見していたのに気がついたが、王子は顔を見られることには慣れているのだろう。気にもせずにまた微笑んで、無言で返事を催促した。
かん子は決意した。
(ここはふんばって、明日からの平穏な日々を勝ち取らなくてはいけない!こんな腹黒王子なんかで私の毎日を邪魔させてたまるか)
「すみません、今から用事があるんです」
ここでにこっと微笑んでみる。
思った通り王子は、今までNOという言葉はきいたことがないのだろう。少し顔が歪んで、仮面がちょっとだけ剥がれた気がした。
(おいそこの彼女たち、この顔を見ておくれよ。けっして優しい王子様じゃないよ)
かん子は後ろの彼女たちにそういってやりたかったが、なにしろ彼女たちは王子の後ろにいる。だから彼女たちから王子の表情は見えない、残念だ!
(よし、今からが本番よ。いけかん子ー!)
かん子は、自分で心の中で勝をいれて次の言葉をいった。しかもちょっと首をかしげながら。
「残念ですぅ~。私、踊りを習ってるんですけど、今日そのお着物をとりにいかなくてはいけなくてぇ~」
案の定王子の表情が緩む。心の中でやっぱりこの魅力には勝てないだろうと思っているに違いない。反対に後ろの彼女たちの怒りはマックスのようだが。
はやくつっこんでほしいとかん子が思っていると、王子は、かん子が願っていたことを口にしてくれた。
「そうなんだー。踊りやってるんだ。君に似合ってるね。それじゃあ仕方ないね残念だけど。でもまた同じ会社だし次回は一緒に行こうね!」
かん子は思った通りのことを王子が言ってくれてほくそ笑んだ。
「ありがとうございますぅ~。今度踊るのは星四郎の“どっこい浪花節”なので、イワケンサンバのイワケンも真っ青のスパンコールいっぱいのきらきら着物なんですぅ~。老人会の慰問には評判良くってぇ~」
どうだまいったか!してやったりと、かん子はいいはなった。
王子の顔を見ると呆然としていた。もちろん後ろの人々も同様である。まだかん子のいったことを、理解しきれていないらしい。
かん子はあっけに取られている面々をその場に残して、ひとり挨拶して駅へと向かった。
少し歩いたところで誰の笑いだろうか、後ろからひときわ大きな笑いが聞こえてきた。
かん子は思った。
(かん子よくやった!グッドジョブ!)
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