かん子の小さな願い

にいるず

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かん子の研修所生活 その3

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 結局かん子は、そのまま正也の隣に座ることになった。前には五条薫子と笹瀬敦彦が座っている。すぐに新入社員でバスの中はいっぱいになった。なぜかかん子の周りの席から埋まっているのは気のせいだろうか。
 バスに乗り込む人たちの男女問わずほとんどが、前の席の二人やかん子の隣に視線を向けていく。その中には妙に熱い視線が向けられているのもある。
 ふだん色恋にはにぶにぶのかん子でさえ気づかされるほど、あからさまなのもあった。

 (なんだか微妙な席になっちゃったなあ)

 かん子は、無意識に溜息をついていたのだろう。

 「おいっ!なに溜息なんてついてるんだよ。俺が横にいてやるのに。また缶づめかん子って呼んでやるぞ!」

 にやにやしながらかん子のほうを見ていった。

 「横にいてやるって何??誰かが、ここにいるから溜息が出ちゃうのに。それにねえ~。いい大人が人のことあだ名で呼ばないでよね!ほんとお子様なんだから~」

 いちいち正也の言うことに、目くじらを立てるのもどうかと思う自分もいるのだが、いざとなると反論したくなってしまう。

 (自分も子供の時とちっとも変わってないなあ。ひとのこといえないなあ)

 「うっふっふっふっ」
 
 かん子は、そう考えたらつい笑いがこみあげてきてしまった。

 「お前、忙しいやつだなあ。おこったり笑ったり」

 「ねえ。おまえおまえって呼ばないでよね。ちゃんと名前あるんだから!」

 やっぱりいちいち反論してしまうかん子だった。

 ただそんな正也に食ってかかっているかん子の様子を、なぜかいとおしそうに見ている正也にかん子本人が少しも気づくことはなかった。

 研修所に向かうバスの中で、日程や一緒に行動するメンバーが書かれた用紙が配られた。
 かん子はまずメンバーの名前を見た。自分の名前を確認すると、そこには自分以外に6人の名前があった。

 しかも!しかも!・・・。

 (え___!なにこれ?!)

 思いっきり叫んでしまいそうだった。それくらい自分を抑えるのに必死だった。

 (どうしてメンバーの中に、知ってる名前が三人もいるのよ!)

 そう、メンバーの名前には、もれなくあの人たちがいる。そう前の席のふたりととなりのやつだ。いったい自分は何の罰を受けているのだろう。
 思わず隣を見れば、こちらを見ていた目とあった。いつからこちらを見ていたんだろう?

 「よかったな一緒で。若干気に入らないやつがいるが」

 「はあぁ___」
 
 正也といえばえらくご機嫌な様子だ。しかしかん子は、今度こそ盛大に溜息をついたのだった。

 「おまえな。これみよがしに溜息なんてつくなよな」

 正也は怒ったようにいうが、顔がにやけていてちっともおこっている感じがしない。 

 バスの前にいる担当者が、日程について話しをはじめた。話しているのはさっき正也が“一成さん”といった人だった。
 突然かん子は思いだした。

 (あの人、確か入社式で受付していた人だ)

 このメンバーになぜか疑問を感じたかん子だった。







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