明日は明日の夢がある

にいるず

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12 恋に落ちた私

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 学活では、運動会のクラス代表応援団長も決めなくてはいけなかった。昨年のクラスでは、確か体育会系の男の子がみんなからの要望でやっていた。
 今年もそうかなと思っていると、クラスの一人が言った。

 「応援団長は、岡本君でいいよな」

 その一言にみんなが激しく同意した。もちろん私もである。彼ならおでこにはち巻きして、ちょっとおおきな学生服を着て・・・・・似合いすぎる!ぐふっふっとひとり心の中で身もだえていると、名前を呼ばれた。

 「笹竹さんどうしたの?」

 「い”え”な”ん”で”も”な”い”で”す”」

 岡本君が私の心の悶えにまた具合が悪くなったのかと心配してくれたのか、私に聞いてきた。私はまた声が裏返ってしまった。
 
 「じゃあ僕がクラスの応援団長をやります」

 岡本君の応援団長発言にクラス中が拍手した。もちろん私も拍手する。やはり岡本君はみんなに信頼されているようだ。

 次の日からうちのクラスでは、岡本君の指揮のもと、運動会の練習が始まった。私はといえば、私がボ~としている間に、私はいつの間にか運動会の花形である男女混合クラス対抗リレーに選出されていた。
 
 リレーの練習もしようということで、リレーメンバーも集まることになった。男女合わせて4人だ。
 
 小さいころから男の子とばかり遊んでいた私は、足が速い。もう一人の選手の女の子は、仲のいい田野村美香ちゃんだった。彼女は見かけは色白できゃしゃな感じだけれど、ところがどっこい運動神経が抜群だ。陸上部でも短距離選手だ。
 そして男子は、岡本君が入っていた。昨年も選手だったらしい。私も昨年も選ばれていたが、岡本君の事を覚えていなかった。あとのもう一人の男子は、美香ちゃんと同じく陸上部の子だった。
 四人で走る順番を決めた。美香ちゃんがトップバッターで、そのあと同じ陸上部男子、そして私、アンカーは岡本君になった。

 「岡本、お前アンカーやって」

 「えっ、おまえ陸上部じゃん」

 「俺、陸上部っていったって、砲丸投げだし。アンカーは緊張しすぎる。お願い!」

 正義感の強い岡本君は、結局アンカーになったのだった。その男子のやり取りを気楽に見ていたのだが、よく考えると私は岡本君にバトンを渡す役だ。自然に握りこぶしに力が入った。

 その日から放課後が楽しくなった。部活の前ほんのちょっとだけど、四人で練習するのが楽しかった。最近顔の筋肉が緩んでいるのかみんなから、何か楽しいことあった?って言われることが多くなった。
 
 もちろんクラスの応援団の練習も張り切った。私は日ごろのずぼらな性格から一新して、みんなにボンボンを作ろうと提案して女子たちでボンボンを作った。あと手先の器用な子たちに、応援の紙も書いてもらった。放課後の練習では岡本君が前に出て、応援の練習をする。私はボンボンの一部がちぎれるほどボンボンを振りまくって、大声も出して張り切って応援した。

 運動会当日には応援の練習に力が入りすぎて、声がガラガラになってしまった私がいた。それでも気分は絶好調だ。運動会はそれはそれは私の中で盛り上がり、とうとうリレーの時がやってきた。

 クラスのみんなの応援に見送られて、リレー選手たちが集まる場所へと向かった。そしてそれぞれの場所に分かれるとき岡本君が言った。

 「実力を出し切ろう!」

 「おー!」
 
 岡本君の言葉に私はついこぶしを振り上げて叫んでしまった。あとの二人がぷっと笑いながら私を見た。岡本君はそんな私を見ていってくれた。

 「笹竹さん頑張ろうね」

 この時の私は、月まで行けるほど力がみなぎった。
 しかしあまりの力の入りすぎで、トップでバトンを受け取ったのはいいものの、カーブのところで足がもつれてしまった。転ばなかったものの一人に抜かされてしまい、二位で岡本君にバトンを渡す羽目になってしまった。
 岡本君にバトンを渡すときには、悔しくて岡本君がにじんで見えた。

 「頑張るから!」 

 岡本君はバトンを受けとるとき私に言ってくれた。その約束通り岡本君は、一人抜いて再び一位になりゴールしたのだった。
 私は走った後美香ちゃんに慰められていたのだが、岡本君の快挙に出ていた涙もすっこんでしまい、みんなで岡本君のところに飛んで行った。

 「笹竹さんやったよ!」

 岡本君が私にそう言ったとき、私は恋に落ちた。岡本君に。

 
 その日から私は変わった。気持ち的に。

 「ねえ、日曜日買い物に行かない?」

 日曜日に部活がない私は、近くのショッピングセンターに美香ちゃんを誘った。

 「いいよ。なんか買うの?」
 
 私は恥ずかしくてついもじもじしてしまった。その様子に何かを察した美香ちゃんが何も言わずに一緒にいってくれることになった。
 家に帰ると、すぐ母に言った。

 「お母さん、今度の日曜に美香ちゃんとお買い物に行くから」

 「あらっ、何買うの?」

 私はまたちょっともじっとしていった。

 「洋服。ジーパンしかないから...」

 そういった私に美香ちゃんと同じで何かを感じた母が、にこっと笑ってカンパしてくれた。ホクホクした私は買い物が楽しみだった。
 
 淡い恋心をいだいた私は、全力で突き進んでいくのだった。
 
 
 
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