恋する魔法少女 〜敵だから、容赦します〜

古亜

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橘拓人

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橘拓人には、人には言えない秘密があった。

「……で、昨日の夜の幹部殿がそれはもう……よかったんです!」

「へぇ……そうなんだ。そこちょっと音違う」

拓人の正面に座り、輝くばかりの笑顔を浮かべているのは凛香である。
凛香の所属する吹奏楽部の先輩である拓人は、凛香が魔法少女であることを知っている唯一の人物であった。そのためこうして部活のたびに話を聞かされていた。

「すみません……でも、幹部殿の仮面の下の顔気になりません?どんな感じなんでしょうね。やっぱりイケメン!?」

(……目の前にあるだろ)

「いつか絶対に外させてみせます!その時はどんな感じだったか先輩にお話ししますね!」

(いや、言われなくても知ってる。毎日見てる)

彼は、必死に平静を装っていた。
橘拓人こそ、敵の「幹部殿」である。
普段は町を探るために高校生として振舞っているが、その正体はライクの言う「向こう」の存在であり、祠を狙う敵である。
後輩として入学してきた凛香が、幹部殿の正体に気付いていないのをいいことに近付いたのだが、凛香の魔法の強さの秘密を探るうちに、知りたくなかった事実を知ってしまったのだ。

(何かに対する好きという思いを魔法に変えているのは理解していた。だがなんでその対象が、よりによって俺なんだよっ!)

好きの対象こそが魔法少女の弱点。だからそこを突こうとしていたのに。

(なんで俺?敵だよな?)

わけがわからなかった。
幹部殿が好かれるほど凛香は強くなる。敵である魔法少女が強いのは自分のせいなのだ。
勝手に好かれて強くなられて、理不尽である。

(なんでだよ!なんで俺のせいで強くなってんだよっ!)

この妙な事実を知るまでは、拓人は凛香の好きの対象を知らなかったし、気付いていなかった。
当然である。まさか敵そのものが好きだなど、誰が思うだろうか。
そしてこの事実は同時に、普段の戦いでは手を抜かれていることを示していた。

(この事はムカつくが、本気出されたら一瞬で灰……)

他の敵が一瞬で倒されている中、唯一魔法少女と渡り合う拓人は、元々候補ではあったのだが幹部に昇格した。
八百長もいいところである。

(気に入らねぇ)

油断しきっているこの隙に殺してしまうのが早いのではと思ったこともあるが、もし反撃されればひとたまりもないし、そもそもそんな戦い方は拓人の矜持に反する。

「あー、ちなみにどこがいいんだ?一応敵なんだろ?」

だから拓人は嫌われる事にしたのだ。
嫌われれば魔法少女の力は弱まり、拓人も勝てる。そのためにこうして話をして、嫌われる糸口を探っていた。

しかし、そんなにうまくいくはずもない。

「自分をちゃんと持ってて、筋が通ってるところです!敵なのに無関係な人には極力危害を加えようとしないし、言うことが正論なので」

「……へぇ」

そう言いながら、拓人はどきりとしていた。

(いや、喜ぶな俺!そうゆう性分なんだよ!直そうにも、ってか直すところでもないだろ!?悪くすればいいのか?いやでもそれは……)

拓人は思わず自分の胸を撫でる。少し大きくなった鼓動を押しとどめようにも、勝手に心臓は動いていた。

(落ち着け、嫌われるんだろ?そのためにこうしているんだろ?)

気を取り直し、拓人は尋ねた。

「敵なんだから、嫌いになりそうなもんだけどな。悪口とか言われたりしないのか?」

(言ってるだろ?昨日も嫌味言ったろ?悪口言われたんだぞ、嫌うよな?)

「言われますけど、全部的を射ているというか、ちゃんと正しいこと言ってくれるんですよね。昨日だって、言われた時はムカついたけど、確かに悪いとこだったから、弱いところをちゃんと見てくれているんだなってむしろ尊敬したくらいです」

拓人は笑顔のままピシッと凍りつく。

(くっ……的を射すぎただと!?)

無茶苦茶な悪口を言ったところでダメージはないと思い、事実をかなり嫌味ったらしく伝えたのだが、逆効果だったようだ。
かといって根も葉も無い無茶苦茶な悪口を言うのは拓人のポリシーに反する。

「でも昨日はちょっとイラっとしたから、思わず攻撃しちゃったんです。割と本気だったんですけど、好きな相手のこと悪く思ったからか威力もスピードも落ちてて、簡単に避けられちゃった」

てへ、っと凛香は笑った。
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