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白石凛香
しおりを挟む「ふぅ……」
家に帰った凛香は、ばたりとベッドに倒れ込む。そのまま動かず大きく息を吐き、しばらく沈黙したあと、突然足をバタつかせ始めた。
「あああ……!やっぱりイイわぁ。うん。もうなんというか、語彙力がっ!語彙力足りないっ!」
枕に顔を埋めたまま、2分ほどずっと呻き続ける。時折、枕の隙間から「尊い」「最高」などの言葉が漏れてきた。
その様子を呆れた様子でライクが見下ろしている。
「大方答えはわかるにけど、さっきから何を言ってるに?」
その言葉に凛香はパッと顔を上げ、真顔で言った。
「幹部殿、最高」
そして再び突っ伏し、大きくため息をついた。
「いや、わかってるよ?敵だって。でもさー、そう思うほどなんかこう……燃えない?萌えない?」
凛香の問いかけに、ライクは間髪入れず答えた。
「何がだに?燃えないに。というかむしろ早く燃やせだに!そこまで重症の恋の病なら、一瞬で燃やし尽くせるに?」
「確かにこのくらい好きだったら、一瞬で燃やせる気がするよ?というか燃やせる!塵にできる!」
「じゃあさっさとそうしろに!」
「だってそしたら幹部殿死んじゃうもん。無理。仮面の下のご尊顔、拝見させて頂くまで絶対トドメ刺さない」
「拘束して無理矢理ひっぺがせばいいに!そして燃やせばいいに!」
「拘束してっていうのもそそるけど……やっぱりそういうのは自ら外して欲しいの!それか攻撃時にほんと偶然外れちゃったーみたいな感じがいい!」
「めんどくさいに!なんでそんな凛香は拗れてるに?」
「……そりゃあ、ね。拗れるよ。この年まで魔法少女名乗ってるくらいだよ?そこは中二病拗らせるでしょう。ただでさえ中二病拗らせてたのに、そこで魔法少女になっちゃったんだから。プラスそこにオタク属性追加で、萌えシュチュとか勝手に頭が考えちゃうんだよ!」
ライクは頭を抱えた。
(絶対間違えたに。魔法与える相手間違えたに……でも今更変えられにーし、思い自体は好きの思いで本物だから、敵の撃墜率はボクの知る限り1番に……)
そもそも、1人の魔法少女に敵の幹部クラスを退ける力があるだけでも十分なのだ。
幹部殿が相手の時はトドメを刺さないだけで、それ以外の敵に対しては容赦がないのだ。大抵、幹部殿じゃないからと、その場合の戦いは一瞬で終わってしまう。
そのため、むしろよい魔法少女を見つけたと、ライクの葛藤など知らない上からの評価はうなぎ登りである。
悶々としているライクをよそに凛香は続ける。
「でもね、幹部殿に引かれてる気がするんだよねー。少女名乗れる年齢かよ、って。ほら、少女って言ったらだいたい中学生までじゃない?高1ってギリギリじゃない?いくら日本人が童顔でも少女は、ねえ?」
同意を求めるように凛香はライクを見るが、何を言っても無駄とわかっているライクは視線を無視して毛づくろいを始めた。
「いいもん。この話は拓人先輩とするから」
「……こんな話に付き合わされるその拓人先輩は哀れだに」
「向こうから聞いてくれるんだもん。ライクも見てるでしょ?」
「凛香は気付いてないだけだに。あいつ時々微妙な顔してるに?」
ライクは毛づくろいをしながらジトっとした目で凛香を見る。
「でもライクは幹部殿のこと真面目に聞いてくれないし、ライク以外に私が魔法少女してるの知ってるの先輩だけなんだもん!」
「凛香が幹部を倒す気になったなら聞いてやってもいいに。塵にできるなら早くしてほしいに。毎回中途半端に生殺しにされてる幹部殿の気にもなってやれだに!」
(考えてみれば、1番哀れなのは幹部殿に。本人はわりと本気なのに、好かれてるばっかりに凛香は強いし、毎回逃げられる程度に負かされてる……に?)
自分の主張を聞き何かを考えている様子の凛香に、少しは考え直してくれたのかと期待したライクだったが、その期待はあっさり打ち砕かれる。
「私のせいで哀れな幹部殿……イイ」
その時、ライクは敵であるはずの幹部殿に本気で同情した。
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