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第七章 「初恋」
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何かおかしい。
それともまだ夢でも見ているのだろうか。
時刻はすっかり昼を回っている。それに眠い訳でもない。ジュースがワインだったとか、そんな古典的なオチも待っていない。全くの正常だ。それなのに、蕁麻疹も出ない。
「先生。わたし、結城先生のこと、その……実は」
その時だった。
インタフォンが鳴らされる。
「ちょっとごめん」
慌てて立ち上がると、応答に出た。
受話器から聴こえてきたのは知らない男の声だ。
「結城貴司先生ですよね。わたくし、ライターの習志野という者です。ウェブ・サンシャインはご覧になられましたか?」
記者のようだ。
原田は何も答えられないまま、
「ちょっと待ってくれ」
そう言って、慌ててパソコンを見に戻る。
ブラウザを起動して検索をする。すぐ週刊誌のウェブサイトが開いた。
派手な記事の見出しがいくつも踊っている中に、結城貴司の名前があった。
そこを、クリックする。
「……村瀬さんたち、何も言ってなかったのに」
そこには桜庭美樹とのツーショットだけでなく、原田のマンションに彼女が出入りする様子や、原田が彼女を玄関先まで送っていった時の写真など、複数枚、明らかに付き合っているんじゃないかと見た人間が確信するような角度で、撮られたものが掲載されていた。
「桜庭さん。これ」
「先生……」
彼女も驚いているようだ。
「わたし、どうしたら」
今度は原田の電話が鳴る。村瀬ナツコからだった。
「もしもし、村瀬さん。今ウェブ版のサンシャインを見たんだけど」
「こっちも大変ですよ。今から車を回します。とにかくそのマンションを出て下さい。マスコミが駆けつけてます。何とかするんで、折り返し電話するまで、絶対に外に出ないで下さい。いいですね」
そこまで言うと、電話は慌てて切られた。
「なんか、マスコミが来てるって……」
原田が彼女に困惑の表情を向けると、続いて玄関ドアを叩く音が響いた。
「結城さん? いるんですよね? ひょっとして彼女もご一緒なんですか? ちょっと取材に答えてもらいたいんですけど」
先程の男だ。どうやって中に入ったのだろう。
「先生」
「分かってる」
そう答えたものの、原田はスマートフォンを握ったまま、その場から動き出すことが出来なかった。
それともまだ夢でも見ているのだろうか。
時刻はすっかり昼を回っている。それに眠い訳でもない。ジュースがワインだったとか、そんな古典的なオチも待っていない。全くの正常だ。それなのに、蕁麻疹も出ない。
「先生。わたし、結城先生のこと、その……実は」
その時だった。
インタフォンが鳴らされる。
「ちょっとごめん」
慌てて立ち上がると、応答に出た。
受話器から聴こえてきたのは知らない男の声だ。
「結城貴司先生ですよね。わたくし、ライターの習志野という者です。ウェブ・サンシャインはご覧になられましたか?」
記者のようだ。
原田は何も答えられないまま、
「ちょっと待ってくれ」
そう言って、慌ててパソコンを見に戻る。
ブラウザを起動して検索をする。すぐ週刊誌のウェブサイトが開いた。
派手な記事の見出しがいくつも踊っている中に、結城貴司の名前があった。
そこを、クリックする。
「……村瀬さんたち、何も言ってなかったのに」
そこには桜庭美樹とのツーショットだけでなく、原田のマンションに彼女が出入りする様子や、原田が彼女を玄関先まで送っていった時の写真など、複数枚、明らかに付き合っているんじゃないかと見た人間が確信するような角度で、撮られたものが掲載されていた。
「桜庭さん。これ」
「先生……」
彼女も驚いているようだ。
「わたし、どうしたら」
今度は原田の電話が鳴る。村瀬ナツコからだった。
「もしもし、村瀬さん。今ウェブ版のサンシャインを見たんだけど」
「こっちも大変ですよ。今から車を回します。とにかくそのマンションを出て下さい。マスコミが駆けつけてます。何とかするんで、折り返し電話するまで、絶対に外に出ないで下さい。いいですね」
そこまで言うと、電話は慌てて切られた。
「なんか、マスコミが来てるって……」
原田が彼女に困惑の表情を向けると、続いて玄関ドアを叩く音が響いた。
「結城さん? いるんですよね? ひょっとして彼女もご一緒なんですか? ちょっと取材に答えてもらいたいんですけど」
先程の男だ。どうやって中に入ったのだろう。
「先生」
「分かってる」
そう答えたものの、原田はスマートフォンを握ったまま、その場から動き出すことが出来なかった。
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