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派手髪の怪我人
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「いった……」
最悪の目覚めと言っても過言ではないだろう。ベッドからいつのまにか転がり落ちて、頭を打った。
即座にバタバタと駆けてくる足音。……ああ、ツバサさんだ。
「何やってんの!?」
「んー転がり落ちた」
「馬鹿なの? ねえ馬鹿なのね」
「ひどっ」
ツバサさんと出会って三ヶ月。こんな会話をするくらいには仲良くなった……と思う。彼は結構軽口を言っていじめてくるけれど、実際はコケただけで飛んでくるような過保護だ。
「どっか打ってない?」
「……頭打った」
「マイファ! ちょっと来て、ステラが頭打ったんだけど」
シエルが呆れたというように、にゃーと鳴く。……うん、私も頭打った程度でここまで心配するのは過保護すぎると思うよ。
「ツバサさん、もう痛くないから大丈夫だって」
「いやでも、内出血してたりしたら大変じゃん。死なれたら困るんですけど」
「死なないから! 人を勝手に殺さないでくださーい」
「ステラの言う通り、別に怪我してないから大丈夫だって、主」
でもでも、と言い続けるツバサさんにマイファがぴしゃりと言い放つ。……おお、助かった。
「ツバサさん、着替えてから適当に森でフルーツ採ってくるー」
フルーツなどの食べられるものを森から採ってくるのは私の日課だ。市場まで買いに行ってもいいんだけれど、値段がちょっとお高いのだ。
「気をつけるんだぞ、いってらっしゃい」
「はーい」
ツバサさんとマイファが出ていってから、パジャマ代わりにしてる薄いワンピースのようなのを脱いで動きやすい服装に着替える。
「さて、行ってくるね。いい子にしてるんだぞ、シエル」
私は一階に降りて、森へと駆け出した。
酸っぱめの、ジャムやコンポートにするのがおすすめのりんごや、野いちごなど、森には色々なフルーツが生えている。
「お、りんご見っけ」
りんごの木がどこに生えているのか数か所知ってはいるけれど、そこには行かずにどんどん新しい場所に移っていかなきゃいけない。私達二人のせいで生態系を崩すわけにはいかないから。
風を魔法で出して、りんごをひょいと落とす。ツバサさんによると、やはり私には魔法の才能がなかったらしく教えてもらってもこの程度しかできるようにはなってくれなかった。……魔法には憧れていたのだけれどな、残念。
「うん、これくらいでいっか」
りんごを五、六個採ってやめにすることにした。家にはまだ野いちごとラズベリーが残っていたはず。だから他は採らなくても大丈夫だ。
帰ろうと家に向かって歩いていこうとりんごを布袋に放り込む。すると、うめき声のようなものが反対の方から聞こえてきた。
「……人間だよね。よし、行くか」
魔物だったら逃げよう、なんて呑気に考えながら魔法で加速して走っていった。見捨てるのは性に合わない。
声が聞こえた方を辿っていくと、白っぽい髪の男性が倒れていた。見た目から見ておそらくツバサさんと同じくらい。……それにしても白の髪なんて派手派手だ。
「えーと、大丈夫ですか……?」
返事が返ってこない。……え、生きてるよね?
心配になって手を首元に当てると、鼓動を感じた。それにしてもなんで倒れてるんだろう。怪我をしているわけでもなさそうなのに。とりあえずマイファに診てもらうことにした。精霊だからたぶん分かる。
私はその男性を魔法で地面から五センチほど浮かせる。たぶんこれくらいじゃないと動かせない。おそらく家まではもたないだろう。
「ツバサさんー! 怪我人がいます! ちょっと運んでいくんで、少し降りてきてくれると嬉しいです!」
大声で叫んでツバサさんを呼んでおく。ツバサさんが気づかなくてもマイファが気づいてくれるはずだ。
私は男性が木にぶつからないように慎重に動かす。もともと緻密な作業とか苦手なせいで、ものすごく難しい。そうやって悪戦苦闘しているうちにツバサさんがやってきた。
「ほんとに不器用なんだから。で、そいつ? 怪我してんのは」
「はい。と、いっても怪我らしきものは見当たらないんですけど」
ツバサさんは目を細める。一見不機嫌そうではあるがどうやらこの人を心配しているらしい。
「マイファ」
「はいはい。そいつは魔力の使いすぎで倒れてるだけだよ。主が一気に魔力注いであげたら直ぐに回復するから魔力だけ注いで立ち去ったらいいと思う」
「それは可哀想だろ」
ツバサさんがマイファをポカリと殴る。マイファが痛いとツバサさんをポカポカ殴っているが彼はお構いなしだ。
「ステラ、こいつにちょっと魔力を注いでやってから上に運ぶわ。こいつ、このままじゃ魔物のエサになって死ぬからさ。ちょっと起きるまで見ててやって」
「分かった」
ツバサさんは白髪の人に手を当てて魔力を注いでいく。そうしてから全員に転移魔法をかけた。
最悪の目覚めと言っても過言ではないだろう。ベッドからいつのまにか転がり落ちて、頭を打った。
即座にバタバタと駆けてくる足音。……ああ、ツバサさんだ。
「何やってんの!?」
「んー転がり落ちた」
「馬鹿なの? ねえ馬鹿なのね」
「ひどっ」
ツバサさんと出会って三ヶ月。こんな会話をするくらいには仲良くなった……と思う。彼は結構軽口を言っていじめてくるけれど、実際はコケただけで飛んでくるような過保護だ。
「どっか打ってない?」
「……頭打った」
「マイファ! ちょっと来て、ステラが頭打ったんだけど」
シエルが呆れたというように、にゃーと鳴く。……うん、私も頭打った程度でここまで心配するのは過保護すぎると思うよ。
「ツバサさん、もう痛くないから大丈夫だって」
「いやでも、内出血してたりしたら大変じゃん。死なれたら困るんですけど」
「死なないから! 人を勝手に殺さないでくださーい」
「ステラの言う通り、別に怪我してないから大丈夫だって、主」
でもでも、と言い続けるツバサさんにマイファがぴしゃりと言い放つ。……おお、助かった。
「ツバサさん、着替えてから適当に森でフルーツ採ってくるー」
フルーツなどの食べられるものを森から採ってくるのは私の日課だ。市場まで買いに行ってもいいんだけれど、値段がちょっとお高いのだ。
「気をつけるんだぞ、いってらっしゃい」
「はーい」
ツバサさんとマイファが出ていってから、パジャマ代わりにしてる薄いワンピースのようなのを脱いで動きやすい服装に着替える。
「さて、行ってくるね。いい子にしてるんだぞ、シエル」
私は一階に降りて、森へと駆け出した。
酸っぱめの、ジャムやコンポートにするのがおすすめのりんごや、野いちごなど、森には色々なフルーツが生えている。
「お、りんご見っけ」
りんごの木がどこに生えているのか数か所知ってはいるけれど、そこには行かずにどんどん新しい場所に移っていかなきゃいけない。私達二人のせいで生態系を崩すわけにはいかないから。
風を魔法で出して、りんごをひょいと落とす。ツバサさんによると、やはり私には魔法の才能がなかったらしく教えてもらってもこの程度しかできるようにはなってくれなかった。……魔法には憧れていたのだけれどな、残念。
「うん、これくらいでいっか」
りんごを五、六個採ってやめにすることにした。家にはまだ野いちごとラズベリーが残っていたはず。だから他は採らなくても大丈夫だ。
帰ろうと家に向かって歩いていこうとりんごを布袋に放り込む。すると、うめき声のようなものが反対の方から聞こえてきた。
「……人間だよね。よし、行くか」
魔物だったら逃げよう、なんて呑気に考えながら魔法で加速して走っていった。見捨てるのは性に合わない。
声が聞こえた方を辿っていくと、白っぽい髪の男性が倒れていた。見た目から見ておそらくツバサさんと同じくらい。……それにしても白の髪なんて派手派手だ。
「えーと、大丈夫ですか……?」
返事が返ってこない。……え、生きてるよね?
心配になって手を首元に当てると、鼓動を感じた。それにしてもなんで倒れてるんだろう。怪我をしているわけでもなさそうなのに。とりあえずマイファに診てもらうことにした。精霊だからたぶん分かる。
私はその男性を魔法で地面から五センチほど浮かせる。たぶんこれくらいじゃないと動かせない。おそらく家まではもたないだろう。
「ツバサさんー! 怪我人がいます! ちょっと運んでいくんで、少し降りてきてくれると嬉しいです!」
大声で叫んでツバサさんを呼んでおく。ツバサさんが気づかなくてもマイファが気づいてくれるはずだ。
私は男性が木にぶつからないように慎重に動かす。もともと緻密な作業とか苦手なせいで、ものすごく難しい。そうやって悪戦苦闘しているうちにツバサさんがやってきた。
「ほんとに不器用なんだから。で、そいつ? 怪我してんのは」
「はい。と、いっても怪我らしきものは見当たらないんですけど」
ツバサさんは目を細める。一見不機嫌そうではあるがどうやらこの人を心配しているらしい。
「マイファ」
「はいはい。そいつは魔力の使いすぎで倒れてるだけだよ。主が一気に魔力注いであげたら直ぐに回復するから魔力だけ注いで立ち去ったらいいと思う」
「それは可哀想だろ」
ツバサさんがマイファをポカリと殴る。マイファが痛いとツバサさんをポカポカ殴っているが彼はお構いなしだ。
「ステラ、こいつにちょっと魔力を注いでやってから上に運ぶわ。こいつ、このままじゃ魔物のエサになって死ぬからさ。ちょっと起きるまで見ててやって」
「分かった」
ツバサさんは白髪の人に手を当てて魔力を注いでいく。そうしてから全員に転移魔法をかけた。
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