10 / 47
転生編
夏は暑い
しおりを挟む
なんだかんだで魔法の勉強を始めて十日が経過した。魔法は下級のものなら無詠唱で使えるようになったし、中級のものも多少ならば使える。ネロにスパルタで叩き込まれたお陰である。
いつもであればこの時間はネロと勉強しているのだが、今日は婦人方のお茶会があるのでなしということになっている。
「それにしても、あついなあ……」
シャルメーテには日本と同じように四季がある。春・夏・秋・冬…… そして、非常に残念なことにこの国は夏は暑く、冬は寒いという最悪な気候なのだ。
アイスが食べたい。お手軽なスー○ーカップ、少しばかりお高いハーゲ○ダッツ。なんでもいいから食べたい。なのに、こんなに食べたいのにも関わらず、この世界にはアイスがないのだ。
「作るか」
厨房でご飯を作ってくれているララに厨房の一角を借りよう、そうしよう。思い立ったが吉日、私は彼女に厨房を貸してもらいに行くことにした。
「どうしたんだい、お嬢様」
こちらを見ながらフライパンのようなものでパンケーキを焼き続ける。今日のお茶会でお菓子が足りなくなった時用らしい。
「厨房を、端の方でいいので貸していただけませんか?」
「いーよ。火には気をつけるんだよ」
左端の方に行かせてもらった。冷蔵庫からミックスジュースのような飲み物と砂糖を取り出し、混ぜる。そして、砂糖をどろどろに溶かすために魔法で少し温めた。中身を少しずつお洒落な容器に移し替える。
『アイス』
そして、急激に冷やす。中級魔法なのでちゃんと唱えないと使えないし、魔力も結構消費したのでふらふらする。でも、出来た。アイス、ではなくどちらかというとシャーベットだが成功だろう。
スプーンで掬って一口食べてみる。冷たくて美味しくて至福の味。
「お嬢様、それ何ですか!?」
パンケーキを作っていたはずのララが飛んでくる。興味津々といった様子で。これが料理人の本能というものか。
「シャーベット、って言うんです」
「それ、お茶会に出していい? それ冷たいんでしょ、夏の時期にめっちゃ受けが良さそう」
キラキラした目で見つめられ、自分で食べるつもりだった残りを全て差し出した。……食べたかったら追加を作ればいいし。
「出してきますっ」
シャーベットをひたすら食べ、夏に耐える。シャーベットが美味しすぎる。日本の洗練されたアイスには敵わないが。手作りとは思えない。……魔法で凍る具合を調整したからかしら。もっと研究して美味しいのを作りたいな。
「ミカエルちゃーん」
この呼び方はお母様だ。私にちゃん付けして呼ぶ猛者はお母様しか居ない。私に公爵以下の位の人が呼んだらお父様の手によって首が飛ぶ。
「どうかしましたか?」
「さっき出したシャーベット、ものすごく評判が良くてね― 本来聞けないような情報まで聞けちゃった。……だから毎回うちでやるお茶会で出してほしいの。名物にしたら上手く情報が取れるし、暑い外でやるせめてもの慰めになるしねー」
お母様はお茶会で疲れ切ってしまったらしく、いつも言わないような本音が次々と飛び出していた。……暑かったもんな。
「いいですよ、何ならララに教えて……」
「それは駄目よー もし教えちゃって外に流されるなんてことがあったら名物にならないからねー」
お母様は普通に商魂逞しい。そんなに気をつけていたら疲れるのだが。お母様はそこへ更に追い打ちを掛けるような言葉を放つ。
「作ったのはミカエルちゃんだって広めておくわねー 社交の時に有利になるから」
広めないで、と叫びそうになった。……異世界でどんどん有名になっていく主人公の気持ちが分かってしまった。わざとのように見えてもそれは否応無しになっているに過ぎないのだ。私がそうだから。故郷の味を求めただけだというのに。話題にあがるなんて。
最近は本当にハプニングが多い。……前世のような、まだ平穏な日常を送りたいと切実に思う。
いつもであればこの時間はネロと勉強しているのだが、今日は婦人方のお茶会があるのでなしということになっている。
「それにしても、あついなあ……」
シャルメーテには日本と同じように四季がある。春・夏・秋・冬…… そして、非常に残念なことにこの国は夏は暑く、冬は寒いという最悪な気候なのだ。
アイスが食べたい。お手軽なスー○ーカップ、少しばかりお高いハーゲ○ダッツ。なんでもいいから食べたい。なのに、こんなに食べたいのにも関わらず、この世界にはアイスがないのだ。
「作るか」
厨房でご飯を作ってくれているララに厨房の一角を借りよう、そうしよう。思い立ったが吉日、私は彼女に厨房を貸してもらいに行くことにした。
「どうしたんだい、お嬢様」
こちらを見ながらフライパンのようなものでパンケーキを焼き続ける。今日のお茶会でお菓子が足りなくなった時用らしい。
「厨房を、端の方でいいので貸していただけませんか?」
「いーよ。火には気をつけるんだよ」
左端の方に行かせてもらった。冷蔵庫からミックスジュースのような飲み物と砂糖を取り出し、混ぜる。そして、砂糖をどろどろに溶かすために魔法で少し温めた。中身を少しずつお洒落な容器に移し替える。
『アイス』
そして、急激に冷やす。中級魔法なのでちゃんと唱えないと使えないし、魔力も結構消費したのでふらふらする。でも、出来た。アイス、ではなくどちらかというとシャーベットだが成功だろう。
スプーンで掬って一口食べてみる。冷たくて美味しくて至福の味。
「お嬢様、それ何ですか!?」
パンケーキを作っていたはずのララが飛んでくる。興味津々といった様子で。これが料理人の本能というものか。
「シャーベット、って言うんです」
「それ、お茶会に出していい? それ冷たいんでしょ、夏の時期にめっちゃ受けが良さそう」
キラキラした目で見つめられ、自分で食べるつもりだった残りを全て差し出した。……食べたかったら追加を作ればいいし。
「出してきますっ」
シャーベットをひたすら食べ、夏に耐える。シャーベットが美味しすぎる。日本の洗練されたアイスには敵わないが。手作りとは思えない。……魔法で凍る具合を調整したからかしら。もっと研究して美味しいのを作りたいな。
「ミカエルちゃーん」
この呼び方はお母様だ。私にちゃん付けして呼ぶ猛者はお母様しか居ない。私に公爵以下の位の人が呼んだらお父様の手によって首が飛ぶ。
「どうかしましたか?」
「さっき出したシャーベット、ものすごく評判が良くてね― 本来聞けないような情報まで聞けちゃった。……だから毎回うちでやるお茶会で出してほしいの。名物にしたら上手く情報が取れるし、暑い外でやるせめてもの慰めになるしねー」
お母様はお茶会で疲れ切ってしまったらしく、いつも言わないような本音が次々と飛び出していた。……暑かったもんな。
「いいですよ、何ならララに教えて……」
「それは駄目よー もし教えちゃって外に流されるなんてことがあったら名物にならないからねー」
お母様は普通に商魂逞しい。そんなに気をつけていたら疲れるのだが。お母様はそこへ更に追い打ちを掛けるような言葉を放つ。
「作ったのはミカエルちゃんだって広めておくわねー 社交の時に有利になるから」
広めないで、と叫びそうになった。……異世界でどんどん有名になっていく主人公の気持ちが分かってしまった。わざとのように見えてもそれは否応無しになっているに過ぎないのだ。私がそうだから。故郷の味を求めただけだというのに。話題にあがるなんて。
最近は本当にハプニングが多い。……前世のような、まだ平穏な日常を送りたいと切実に思う。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
115
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる