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学園編
シナリオと大混乱
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学園の図書室に向かって歩いていく。すると図書室に入るドアの前に一匹のうさぎ。と、いうよりうさぎ型の魔獣だろう。誰かの使役獣だろうか。うさぎがぴょんと飛ぶ。そして私に寄ってきた。
「かわいいぃ……」
瞳は桜色でふわふわの毛は雪のように真っ白。とりあえずモフる。気持ちよさそうに目を閉じるうさぎはとってもかわいい。かわいい以外の言葉が出てこない。
「君、どこから来たの?」
一旦モフるのをやめてうさぎを見つめる。うさぎはキョトンとして、腕から抜けようとジタバタするばかり。
「きゃっ……!」
ぴょんと抜け出て図書館の中に入っていってしまった。私はさながらアリスのようにうさぎを追いかける。
「おっと。驚かせちゃったみたいですね」
アンリ・オスティーヴだ。私と同じ銀髪に少しこの世界では珍しい黒目。彼は攻略対象の一人である。動物好きで、将来は研究者になりたいという乙男だ。料理上手で裁縫も得意、そして攻略対象の中で一番優しいと評判。その分マジラブプレイヤーには彼の熱狂的信者がたくさんいた。
――あれ、ちょっと待て。これって、出会いイベントじゃない? うさぎに出会うなんて場面は無かったけれど、図書館で出会うというのは同じ。
私は数日前にソフィと話していた内容を思い出す。
『ミカエルって、うちが思ってるよりそそっかしいからなあ…… うっかりしてて会っちゃった、とかありそうやから怖い……』
『フラグ立てんな』
……見事にフラグ回収してるなあ。取り敢えず、何か返さねば。好感度が一番下がるものを選ばないといけない。
「いえ、大丈夫です。随分と可愛らしい魔獣ですね」
貴族らしい作り物の笑顔で応対する。きっとこれが最善。ミカエルが貴族令嬢に似つかわないような滅茶苦茶な動きをするとともに好感度が上がる。つまりその逆をすればいいのだ。貴族らしく、予想できるような模範生のような行動を取ればいい。
「でしょう? ファイラというんです」
「まあ! あのファイラですか?」
ファイラは凶暴で凶悪といわれる魔獣。私も何度もクエストで倒せなくて苦戦した。見た目は確かにうさぎだったけど。
「懐いたら可愛いんです。懐くまではすぐに攻撃してきて大変だったんですけど。今では人間を見ても攻撃しなくなりましたよ」
動物好きで片付けてしまっていいのだろうか。普通魔物は懐かない。
「あの、貴方ってミカエル・フィレネーゼ公爵令嬢ですよね?」
「はい、ミカエル・フィレネーゼと申します」
「僕はアンリ・オステ……」
言葉が遮られ、驚いたように目を見開く。彼の腰に回された腕、そしてふわふわしたピンクブロンドの髪のこれまた美少女。美少女は彼の後ろからぴょこりと顔を覗かせた。
「こんにちはっ! 私、リリー・オズヴァルトっていうのー 確か一年生で主席の……」
「ミカエル・フィレネーゼです。よろしくお願いします」
リリーはアンリの婚約者だったはず。ゲーム内では顔さえ描かれないモブ。ゲーム内ではアンリに対する独占欲丸出しなメンヘラ女って設定だった。……ぜんぜん違う。気さくで超かわいいじゃないか。
「ねーアンリ」
「ん?」
「昨日の魔法学の授業ちょっと分からなかったんだ。教えてほしいなーなんて……」
「ふふっ、仕方ないなあ。いいよ、教えてあげる」
正にデレデレと言った状態の二人。これをバカップルというんだ、と思わされるレベルの。……お邪魔だよね、私。
「すいません、私、用事があるので…… 今日はありがとうございました、失礼いたします!」
駆け足で図書館を出ていく。……何、シナリオと違いすぎない!? あの二人が目に毒なレベルで仲良くなっている。いいことだし、攻略対象として彼のことを避ける手間が省けたので助かるのだが、シナリオと違いすぎて私は大混乱を起こしていた。
「かわいいぃ……」
瞳は桜色でふわふわの毛は雪のように真っ白。とりあえずモフる。気持ちよさそうに目を閉じるうさぎはとってもかわいい。かわいい以外の言葉が出てこない。
「君、どこから来たの?」
一旦モフるのをやめてうさぎを見つめる。うさぎはキョトンとして、腕から抜けようとジタバタするばかり。
「きゃっ……!」
ぴょんと抜け出て図書館の中に入っていってしまった。私はさながらアリスのようにうさぎを追いかける。
「おっと。驚かせちゃったみたいですね」
アンリ・オスティーヴだ。私と同じ銀髪に少しこの世界では珍しい黒目。彼は攻略対象の一人である。動物好きで、将来は研究者になりたいという乙男だ。料理上手で裁縫も得意、そして攻略対象の中で一番優しいと評判。その分マジラブプレイヤーには彼の熱狂的信者がたくさんいた。
――あれ、ちょっと待て。これって、出会いイベントじゃない? うさぎに出会うなんて場面は無かったけれど、図書館で出会うというのは同じ。
私は数日前にソフィと話していた内容を思い出す。
『ミカエルって、うちが思ってるよりそそっかしいからなあ…… うっかりしてて会っちゃった、とかありそうやから怖い……』
『フラグ立てんな』
……見事にフラグ回収してるなあ。取り敢えず、何か返さねば。好感度が一番下がるものを選ばないといけない。
「いえ、大丈夫です。随分と可愛らしい魔獣ですね」
貴族らしい作り物の笑顔で応対する。きっとこれが最善。ミカエルが貴族令嬢に似つかわないような滅茶苦茶な動きをするとともに好感度が上がる。つまりその逆をすればいいのだ。貴族らしく、予想できるような模範生のような行動を取ればいい。
「でしょう? ファイラというんです」
「まあ! あのファイラですか?」
ファイラは凶暴で凶悪といわれる魔獣。私も何度もクエストで倒せなくて苦戦した。見た目は確かにうさぎだったけど。
「懐いたら可愛いんです。懐くまではすぐに攻撃してきて大変だったんですけど。今では人間を見ても攻撃しなくなりましたよ」
動物好きで片付けてしまっていいのだろうか。普通魔物は懐かない。
「あの、貴方ってミカエル・フィレネーゼ公爵令嬢ですよね?」
「はい、ミカエル・フィレネーゼと申します」
「僕はアンリ・オステ……」
言葉が遮られ、驚いたように目を見開く。彼の腰に回された腕、そしてふわふわしたピンクブロンドの髪のこれまた美少女。美少女は彼の後ろからぴょこりと顔を覗かせた。
「こんにちはっ! 私、リリー・オズヴァルトっていうのー 確か一年生で主席の……」
「ミカエル・フィレネーゼです。よろしくお願いします」
リリーはアンリの婚約者だったはず。ゲーム内では顔さえ描かれないモブ。ゲーム内ではアンリに対する独占欲丸出しなメンヘラ女って設定だった。……ぜんぜん違う。気さくで超かわいいじゃないか。
「ねーアンリ」
「ん?」
「昨日の魔法学の授業ちょっと分からなかったんだ。教えてほしいなーなんて……」
「ふふっ、仕方ないなあ。いいよ、教えてあげる」
正にデレデレと言った状態の二人。これをバカップルというんだ、と思わされるレベルの。……お邪魔だよね、私。
「すいません、私、用事があるので…… 今日はありがとうございました、失礼いたします!」
駆け足で図書館を出ていく。……何、シナリオと違いすぎない!? あの二人が目に毒なレベルで仲良くなっている。いいことだし、攻略対象として彼のことを避ける手間が省けたので助かるのだが、シナリオと違いすぎて私は大混乱を起こしていた。
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