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転生編
私と薔薇と推し
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早速私は王様たちの非常にブラックな仕事部屋を出て、お城の探索を始めた。が、十歳の少女ではやはり足が遅い。ちまちまとしか歩けない。ミカエルの体は走っても疲れないのだから走って移動したいのだが、フィレネーゼのご令嬢は品がないというように悪い意味で評判になってしまっては困るので走って移動するわけにはいかないのだ。
「随分とお転婆なお嬢さんですのね」
というようなことをもし他のお貴族様から言われたらお父様とお母様の顔に泥を塗ることとなる。それは避けたい。
だから城の中をゆったりのったり優雅にすることを心掛けて歩いていたら。
「迷った……」
誰もいない薔薇の庭。赤、黄、白…… 色とりどりの薔薇が咲き乱れている。どうやら何時の間にか建物の外へ出てしまっていたようだ。方位を確かめようにも周りは薔薇が高くまで伸びすぎて上まで茨で覆われてしまっているせいで、建物なんて見えやしない。取り敢えずタイルが敷き詰められた道にそって進んでいく。
やがて前が開けて、お茶会をするような椅子とテーブルが置かれた広場にでた。……そこには人が、私だけでなくもう一人。青髪が風でさらさらと揺れている物憂げに目を伏せた少年がいた。
ネロ・ルートヴェング。ミカエルよりニ歳年上の筈なので今は十ニだと思う。ルートヴェング公爵家の次男であり、魔法師団長よりも凄い魔法の才能があるものの病弱だったため師団長になることが出来ない。不憫である。そして最後はあのドS王子を守って死んでしまうのだ。ネロが「ラブマジ」を初プレイした時は死んでしまった時は泣いた、大泣きした。その後他のルートをプレイしたみたが全てのルートで例外なく死ぬという悲しさ。そう、ネロは非常に死亡率が高い、いや死亡率が百パーセントなのである。……つまり、ネロは攻略対象ではなくただの脇役なのだ。
「……誰」
ネロが私の方に振り向いてそう言った。……ちょっと待って、イケメンすぎる。今のビジュが良すぎる。ああもう、写真を撮って永久保存したい。
推しが尊すぎて悶えているのを顔に出さないようにして、必死で返す。
「ルートヴェング様、お初にお目にかかります。わたくし、ミカエル・フィレネーゼと申します」
スカートの裾を掴み、絶妙な角度でお辞儀する。爵位は同じだしインフォーマルな場で会っているので敬語は使わなくてもいいのだが、家の格は向こうの方が他人から見ると上だ。一応敬語を使っておく。
「ああ、フィレネーゼ公爵の…… 僕はネロ・ルートヴェング。フィレネーゼ嬢、敬語で話さなくていいよ。僕みたいな奴に使う必要はないから」
『僕みたいな奴』。そう、彼は自己肯定感が極端に低いのだ。病気で動けないという理由で役立たずと罵られてきたから。自分なんて、が口癖となっているのだ。
「分かった、敬語を使うのはこれで止めるね? でも『僕みたいな奴』って言うのは止めよう。私も悲しいし、貴方もきっと傷ついてるから」
ゲーム内での彼はずっと自分が生まれてきたことを責めていた。そんな辛い人生を送ってほしくない。病気で動けないのが一番辛いのは自分自身なのに、そのせいで周りにケチをつけられる。その辛さは私にもよく分かる。私の前世がそうだったから。
彼は目を皿のようにして驚いていた。……少し言い過ぎたかな?
「ところでルートヴェング様。どうやったら城の中に帰れるか知ってます?」
帰れなかったらお父様とアンナに怒られてしまう。多分。
「……まさか迷ったの?」
城は沢山の人が出入りするため、簡単な構造になっている。だから意図的にここへ来たと思っていたのだろう。……なんで迷ったのか自分でも分からないくらいだ。前世の方向音痴を引き継いでいるのだろうか。
「迷いましたね」
場に沈黙が満ちる。しばらくすると、彼があははっ、と笑いだした。……笑いかた可愛い。
「ごめん、まさか迷ったなんて思わなくって。あっちの道を真っ直ぐ行ったら城のほうに帰れるよ。良かったら送っていこうか」
「いいんですか!? なら是非送っていただきたいです」
別に道を教えてさえもらえれば帰れるのだけれど、推しと少しでも一緒に居たいという下心から送ってもらうことにした。
「随分とお転婆なお嬢さんですのね」
というようなことをもし他のお貴族様から言われたらお父様とお母様の顔に泥を塗ることとなる。それは避けたい。
だから城の中をゆったりのったり優雅にすることを心掛けて歩いていたら。
「迷った……」
誰もいない薔薇の庭。赤、黄、白…… 色とりどりの薔薇が咲き乱れている。どうやら何時の間にか建物の外へ出てしまっていたようだ。方位を確かめようにも周りは薔薇が高くまで伸びすぎて上まで茨で覆われてしまっているせいで、建物なんて見えやしない。取り敢えずタイルが敷き詰められた道にそって進んでいく。
やがて前が開けて、お茶会をするような椅子とテーブルが置かれた広場にでた。……そこには人が、私だけでなくもう一人。青髪が風でさらさらと揺れている物憂げに目を伏せた少年がいた。
ネロ・ルートヴェング。ミカエルよりニ歳年上の筈なので今は十ニだと思う。ルートヴェング公爵家の次男であり、魔法師団長よりも凄い魔法の才能があるものの病弱だったため師団長になることが出来ない。不憫である。そして最後はあのドS王子を守って死んでしまうのだ。ネロが「ラブマジ」を初プレイした時は死んでしまった時は泣いた、大泣きした。その後他のルートをプレイしたみたが全てのルートで例外なく死ぬという悲しさ。そう、ネロは非常に死亡率が高い、いや死亡率が百パーセントなのである。……つまり、ネロは攻略対象ではなくただの脇役なのだ。
「……誰」
ネロが私の方に振り向いてそう言った。……ちょっと待って、イケメンすぎる。今のビジュが良すぎる。ああもう、写真を撮って永久保存したい。
推しが尊すぎて悶えているのを顔に出さないようにして、必死で返す。
「ルートヴェング様、お初にお目にかかります。わたくし、ミカエル・フィレネーゼと申します」
スカートの裾を掴み、絶妙な角度でお辞儀する。爵位は同じだしインフォーマルな場で会っているので敬語は使わなくてもいいのだが、家の格は向こうの方が他人から見ると上だ。一応敬語を使っておく。
「ああ、フィレネーゼ公爵の…… 僕はネロ・ルートヴェング。フィレネーゼ嬢、敬語で話さなくていいよ。僕みたいな奴に使う必要はないから」
『僕みたいな奴』。そう、彼は自己肯定感が極端に低いのだ。病気で動けないという理由で役立たずと罵られてきたから。自分なんて、が口癖となっているのだ。
「分かった、敬語を使うのはこれで止めるね? でも『僕みたいな奴』って言うのは止めよう。私も悲しいし、貴方もきっと傷ついてるから」
ゲーム内での彼はずっと自分が生まれてきたことを責めていた。そんな辛い人生を送ってほしくない。病気で動けないのが一番辛いのは自分自身なのに、そのせいで周りにケチをつけられる。その辛さは私にもよく分かる。私の前世がそうだったから。
彼は目を皿のようにして驚いていた。……少し言い過ぎたかな?
「ところでルートヴェング様。どうやったら城の中に帰れるか知ってます?」
帰れなかったらお父様とアンナに怒られてしまう。多分。
「……まさか迷ったの?」
城は沢山の人が出入りするため、簡単な構造になっている。だから意図的にここへ来たと思っていたのだろう。……なんで迷ったのか自分でも分からないくらいだ。前世の方向音痴を引き継いでいるのだろうか。
「迷いましたね」
場に沈黙が満ちる。しばらくすると、彼があははっ、と笑いだした。……笑いかた可愛い。
「ごめん、まさか迷ったなんて思わなくって。あっちの道を真っ直ぐ行ったら城のほうに帰れるよ。良かったら送っていこうか」
「いいんですか!? なら是非送っていただきたいです」
別に道を教えてさえもらえれば帰れるのだけれど、推しと少しでも一緒に居たいという下心から送ってもらうことにした。
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