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学園編

交換条件 (ソフィ視点)

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「そうですね、私は転生者ですよ? おそらく貴方と同じですね。関西出身です。疑うのなら関西弁でも喋ってみましょうか?」

転生者ということはこの世界ではできるだけ伏せておきたかったが、相手はおそらく私を疑っているので、これだけ情報開示すれば信じてもらえるだろう。できるだけ安心させて、ぽろっと喋ってくれればいいのだけれど。

「おや、関西の人だったのか。僕は関東の方だったな」

……転生者だと信じはしたらしい。でも、ひたすらにこいつは狡猾――というか頭のいいやつらしくて、それから前世の話を色々とふっかけるが私が開示した情報以上には話してくれない。……あぁ、思っていたけど面倒なやつ。

「――で、君は何を聞きたいの? こんな話をしに来たわけでもないだろう? なにか僕に尋ねたいことか知りたいことでもあるんじゃない? ――例えば、『ラブマジ』の続編情報とか」

クッ、と意地悪そうに口角を上げてそう図星を突かれた。……やっぱやだわ、苦手。自分と似ていることがよく分かって余計。私が考えて、どうしようとしているのかをすーぐ読まれてしまう。

「だとしたら何です? そう簡単に教えてくれるわけではないんでしょう?」

「そうだね、フィレネーゼ嬢へのいい交渉材料になるし」

――交渉材料。その言葉を聞いて、改めて背筋が凍った。ミカエルが言っていた、続編の情報を対価に婚約を迫られた、と。こいつはミカエルを、役に立つ道具程度にしか思っていないのだ。

「そう。――ねぇ、貴方が欲しがっているのは前世の知識でしょ? 合ってますよね」

「そうだね、フィレネーゼ嬢に聞いたのかい? 釣っても無駄だよ、僕が欲しいのは前世の知識自体じゃなくて、前世の知識を有する人間だ。そうすれば、永続的に得られるからね」

……わぁ、とにかく性格悪いな。たしかにそうかもしれないけども。

「……では、それを承知の上で提案させてください。貴方はこれから起こることをだいたいご存知なんですよね? 重要事項だけでもいいので、そのときに警告してほしいんです。その代わり、貴方には私の知るすべての知識を貴方の留学中に提供します。ミカエルのじゃなくても、前世持ちであればなんでもいいわけでしょう? いかがでしょう?」

「……へぇ、悪くない。口約束だと信憑性が低いよね。契約書でも作ろうか」

乗ったな。

「魔術契約でも? 紙よりも契約違反に気づきやすいですし」

魔術契約、というのは、拇印などの代わりに自らの血を使い、魔力を込め、契約に違反したときに自動的に定められた罰が下る、という恐ろしいものだ。

「もちろん。僕もしっかりした契約のほうが好きだしね」


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