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学園編
戦争のわけ
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「……そもそも、なんで戦争なんか、」
「クロリアスはうちよりだいぶ寒い。国全体が雪国なせいで作物は不作。飢饉が起こり、周りの国は我関せず。今でもそうや。この国もクロリアスに支援なんて一切してない。だから、危機を脱するために攻めてくる、と」
……言われてみればたしかにそうだ。クロリアスとシャルメーテの間には一切交流がない。フィクリーナ山脈という非常に高い山々の連なる山脈が国境に立ち塞がっているため、私にも非常に遠いイメージがある。
「……なるほど、ね……」
「セレナーデによると、今回のミカエルを狙った誘拐事件もおそらくはクロリアス人がやったことやって。聖女の癒しを使えるミカエルのことを警戒してじゃないか、と。着ていた服がクロリアスの北西の民族衣装に似てたって言っとったわ」
なるほど納得。私は向こうにとって戦争には邪魔でしかないもんね。怪我を瞬時に直して全員の体力回復をするヒーラーなんていたら長期戦は圧倒的に不利になってしまう。
「ネロには伝えた?」
「うん、情報源は伏せたけどなー」
「ならよかった」
これで捜索がうまくいってくれたらいいものである。やっぱり難航しているらしくて、手がかりひとつ見つかっていなかったらしい。どこの国の人間なのかわかっただけで絞り込みはだいぶしやすくなるのではないだろうか。
「あ、そうだ」
「どしたんミカエル」
「メインストーリーの中にあったクロリアスとの関係を示唆する描写ってどんなのがあったの? 思いつかなくって」
「あー、ひとつはな、うーん、たまたま王城に訪れていたうちの兄――ネロ・ルートヴェングが王子の暗殺に気づいて庇い、亡くなるシーンあるやろ。あれの犯人がどこの国出身か覚えてるやろ? ちらって出てきてたやつ」
「えっと、たしかクロリアス…… あ、そういうこと!」
あの刺客のシーンは戦争の幕開けのようなものだったのか。ミステリーでいうなら伏線のような。
「そうそう。これらから考えたら、戦争はほぼ確定やな」
ソフィが悲しげに目を伏せ、ふぅ、と絞り出すような深い溜息をついた。
「ミカエル」
数秒して、ソフィは顔を上げて、私に向き直る。
「うち、止めたいねん。ここさ、ゲームの世界って感じがはじめは強かったけど、いつのまにかさ、やっぱり何年も過ごしてきてたくさん大切な人ができて、大切な世界になっててん。……危ないことに巻き込むことになるからもちろん強制はしない。けど、もしミカエルさえよければ手伝ってほしいんや」
緊張した面持ちでソフィはゆっくりと、そう話してくれた。
私はそんなソフィにギュッと、突然抱きついた。
「協力するに決まってるでしょ。私だって、ここは守りたい人がたくさんいる大切な場所だって思ってるんだから。頑張って、戦争なんて止めちゃおう」
「……ありがとう。うん、頑張ろうな」
私達は顔を見合わせて笑い合う。みんなが幸せになれるように、絶対に止めてみせるんだから。
「クロリアスはうちよりだいぶ寒い。国全体が雪国なせいで作物は不作。飢饉が起こり、周りの国は我関せず。今でもそうや。この国もクロリアスに支援なんて一切してない。だから、危機を脱するために攻めてくる、と」
……言われてみればたしかにそうだ。クロリアスとシャルメーテの間には一切交流がない。フィクリーナ山脈という非常に高い山々の連なる山脈が国境に立ち塞がっているため、私にも非常に遠いイメージがある。
「……なるほど、ね……」
「セレナーデによると、今回のミカエルを狙った誘拐事件もおそらくはクロリアス人がやったことやって。聖女の癒しを使えるミカエルのことを警戒してじゃないか、と。着ていた服がクロリアスの北西の民族衣装に似てたって言っとったわ」
なるほど納得。私は向こうにとって戦争には邪魔でしかないもんね。怪我を瞬時に直して全員の体力回復をするヒーラーなんていたら長期戦は圧倒的に不利になってしまう。
「ネロには伝えた?」
「うん、情報源は伏せたけどなー」
「ならよかった」
これで捜索がうまくいってくれたらいいものである。やっぱり難航しているらしくて、手がかりひとつ見つかっていなかったらしい。どこの国の人間なのかわかっただけで絞り込みはだいぶしやすくなるのではないだろうか。
「あ、そうだ」
「どしたんミカエル」
「メインストーリーの中にあったクロリアスとの関係を示唆する描写ってどんなのがあったの? 思いつかなくって」
「あー、ひとつはな、うーん、たまたま王城に訪れていたうちの兄――ネロ・ルートヴェングが王子の暗殺に気づいて庇い、亡くなるシーンあるやろ。あれの犯人がどこの国出身か覚えてるやろ? ちらって出てきてたやつ」
「えっと、たしかクロリアス…… あ、そういうこと!」
あの刺客のシーンは戦争の幕開けのようなものだったのか。ミステリーでいうなら伏線のような。
「そうそう。これらから考えたら、戦争はほぼ確定やな」
ソフィが悲しげに目を伏せ、ふぅ、と絞り出すような深い溜息をついた。
「ミカエル」
数秒して、ソフィは顔を上げて、私に向き直る。
「うち、止めたいねん。ここさ、ゲームの世界って感じがはじめは強かったけど、いつのまにかさ、やっぱり何年も過ごしてきてたくさん大切な人ができて、大切な世界になっててん。……危ないことに巻き込むことになるからもちろん強制はしない。けど、もしミカエルさえよければ手伝ってほしいんや」
緊張した面持ちでソフィはゆっくりと、そう話してくれた。
私はそんなソフィにギュッと、突然抱きついた。
「協力するに決まってるでしょ。私だって、ここは守りたい人がたくさんいる大切な場所だって思ってるんだから。頑張って、戦争なんて止めちゃおう」
「……ありがとう。うん、頑張ろうな」
私達は顔を見合わせて笑い合う。みんなが幸せになれるように、絶対に止めてみせるんだから。
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