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死に戻り令嬢の華麗なる復讐
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「お姉様……!」
「フィーナ、仕方ないんだ。あの女が悪いことをしたから…… あれほど嫌がらせをされたのにこれから処刑される姉の心配をするなんて、なんて君は心優しいんだ!」
嫌だ。嫌だ。嫌だ。死にたくない、死にたくない――
私を見下ろしている二人は慈愛に満ちたような、ロマンス劇の一節みたいなセリフを言いつつ、表情を歪めて私を見ていた。
……私、何もしてないのに。この妹に嵌められたのに。どうして誰一人それに気づいてくれないの?
「おねが、い、しにたくな、」
ごとん、とそこで私の首が落とされた。最後に見えたのは、それはそれは嬉しそうな妹の顔だった。
◇
「お嬢様? 御髪の用意ができましたよ?」
「は?」
「大丈夫ですか? どこか調子が?」
「いいえ、ごめんなさい。少しぼうっとしていただけなの」
……嘘、私、どうして生きてるの? さっき、確かに死んだはずだったのに。
「そういえば、ヘレン。今年で私、何歳になるんでしたっけ?」
「16歳ですよ? 本当に大丈夫ですか、お嬢様?」
「ふふ、大丈夫よ、誕生日が待ち遠しくて聞いてみただけよ」
「なるほど! それなら安心しました。今年もまた盛大にお祝いしましょうね」
……私が処刑されたのは、17歳の誕生日。そして、今は16歳になる少し前。と、いうことは、私は1年前の過去に戻ったということ?
「ごめんなさい、ヘレナ。少し下がってもらっても構わない?」
「はい、もちろんです。調子が悪そうなので、お大事に」
ヘレナに出ていってもらって、考える。私はさっき処刑されて、一年前の自室に帰ってきた。つまり、今はまだ処刑される原因になったあの出来事は起きていない。つまり、あの悲惨な処刑は回避可能だということ?
整理しよう。私が処刑されたのは、聖女たる妹に魔法を使って怪我を負わせたという理由からだ。そしてその怪我というのは、襲ってきた魔物を倒す際に私が出した魔法の巻き添えで妹が負ったもの。普段なら絶対に当てないし、その時も当てる気はなかったのに、突然飛び出してきたせいで右腕と右肩にほぼ直撃する形となっていた。……咄嗟に庇おうとってそこでは言っていたけれど、今思えば明らかに意図的に怪我をしに行っている。……はじめから私に罪を被せる気だったということよね。
そして、突然現れたいじめ案件。私が学園で妹をずっといじめていたという根も葉もない問題が突然現れて、それもついでに罪状に追加されていた。
……よく考えるまでもない。これって全部冤罪じゃない。
理由に心当たりはある。妹は王子に取り入っていた。好きだったんだと思う。そして私は筆頭公爵家の長女ということで王子の婚約者。だから、私を蹴落とすことで婚約者の座を獲得しようとしたのだろう。
「だとしても、くだらない」
妹は化けの皮を被ったとんでもない悪女だった。それならば私はどうしようか。そう、もっと妹を超える悪女となって妹に復讐してやるのだ。私をあの笑みの下で殺そうと企て、処刑した妹に。
◇
着々と準備を進め、例の魔法で焼き殺し未遂冤罪事件(仮)の日がやってきた。もちろん魔物は同じように飛び出てくる。大きめのワイバーンだ。もちろん同じ手は喰らわない。同時に魔道具を数台発動させる。これが今回の鍵である。本当は火属性の魔法を避けたかったのだけれど、このタイプのワイバーンは残念ながら火属性以外で倒せない。だから、最小限の高火力で上半身を焼き切る。このために半年で魔法を超訓練した。元々国のトップスリーに入るくらいには魔法が得意だったので今ではもう賢者も引くレベルの魔法の使い手となったくらいだ。
「ファイアボール」
一点集中、高火力。妹は「お姉様っ!」と叫びながら飛び出してきたが、ほとんど何も当たることなくワイバーンを倒せた、偉い。妹は右腕を少し負傷したらしいのでそちらに向き直り一言。
「ヒール」
前回はあまりにひどい火傷だったせいで治らなかったから証拠として出されてしまった。しかし、今回のような掠っただけの火傷なら私でも簡単だ。もう既に跡形もなく傷跡は消えている。
「大丈夫?」
「あ、はい……」
魔道具をそこで停止させた。もはや使わなくてもどうにかなるかもしれないが一応ポケットの中にしまい込む。これで前準備は完了だ。
◇
そしてほどなくして運命の日。私はやはり裁判にかけられていた。王城の裁判用の部屋にて、やはり同じように。
「殿下。私が何をしたというのでしょうか」
「とぼけるな! フィーナに先日のワイバーン討伐に乗じて怪我をさせたと聞いている! それだけではない、フィーナを学園でずっといじめていたそうだな!? 聖女への暴力、差別は処刑に値するぞ!」
――そう、前回はこれで釈明もできずにむざむざ処刑されたのだ。この胸糞悪い聖女ルールによって。あのころは婚約者としてしっかりと愛を持っていた殿下相手に、断罪された。
「なるほど、では一つ一つ釈明させていただきましょうか。まずは先日のワイバーン討伐の件ですが、あれは不運な事故ですね。私を心配して飛び出してきた妹がかわいそうに、私の放った魔法に巻き込まれて怪我を負ってしまったのです」
「証拠がないだろう! わざとに決まっている!」
「……証拠はありますよ。そのように決めつけるのは王太子としてふさわしくない行動かと思われますが。まぁ、そう仰るのであればさっさと証拠を開示いたしましょう。――証拠はこの映像です。当時魔法を使っていたときのものです」
「そのようなものがどうして! おかしいだろう、合成に決まっている!」
「私最近、魔法の訓練のために魔法を使う際には映像を撮って後日確認しているんです。そのときのものが残っているのでお見せします」
これが私の単純でありながら最強の秘策である。割とこの録画、魔力を食うので結構練習したのだ。カモフラージュに他にも動画を取ってあるので理由に出した訓練のためというのを納得させられるようにもしてある。聖女パワーで証拠がかき消えないように一応だ。ぴっと魔道具のボタンを押せば、その時の映像が流れ始める。私が魔法を発射してから「お姉様!」とわざとらしく飛び出してくる妹の映像が。
「これは……やはり事故だったのでは?」
「むしろこれは聖女様の飛び出しを注意すべきでは?」
「そうだ、聖女としてはあるまじきサポートの仕方だな」
「これで意図的に傷つけたというのは無理があるだろう」
流れは完全にこちらに傾いた。あともう一押しで、完全に逆転する。
「あと、いじめに関する情報に関して提出させていただきます」
同じ魔道具のボタンをもう一度押すと、別の映像に切り替わる。
そこに映るのは、自分の弁当に虫を入れる妹の姿が。そしてそのあと、キャー、っと悲鳴を上げて叫んでいた。
『いやぁぁぁぁ、誰かが私の弁当に虫を!』
『今までお弁当を触られたのは誰か覚えていらっしゃいますか?』
『……学校に来てからは誰にも。ずっとカバンの中に入れていたから…… でも、家で、その……』
『誰ですの? 大丈夫です、信じますから教えて下さいな』
『っ、お姉様がお弁当を開けていたような気がするの! でも、そんなわけないわ、だってお姉様は優しくて、っ……』
そこで映像は途切れている。
「いじめを受けていると噂される妹を心配して撮影したものです」
「なんと……っ! これは明らかに聖女様に非があるだろう!」
「いくらなんでもこれは! 釈明してください、聖女様!」
「なぜこのようなことを!」
王子の後ろで勝ち誇ったようにしていた妹は一転、顔を真っ青にしていた。……あぁ、勝ったな。
これにて復讐は終了でいいだろう。実際今回は処刑されていないわけだし、これで王子と妹は失脚だ。
「あぁ、そういえばもう一つ。殿下、このような不名誉を押し付けられ大変遺憾でございますので婚約を解消させていただきますわね」
と付け加えれば、後ろ盾すら失った王子まで真っ青に顔を一瞬で染め上げたのが見えた。
「フィーナ、仕方ないんだ。あの女が悪いことをしたから…… あれほど嫌がらせをされたのにこれから処刑される姉の心配をするなんて、なんて君は心優しいんだ!」
嫌だ。嫌だ。嫌だ。死にたくない、死にたくない――
私を見下ろしている二人は慈愛に満ちたような、ロマンス劇の一節みたいなセリフを言いつつ、表情を歪めて私を見ていた。
……私、何もしてないのに。この妹に嵌められたのに。どうして誰一人それに気づいてくれないの?
「おねが、い、しにたくな、」
ごとん、とそこで私の首が落とされた。最後に見えたのは、それはそれは嬉しそうな妹の顔だった。
◇
「お嬢様? 御髪の用意ができましたよ?」
「は?」
「大丈夫ですか? どこか調子が?」
「いいえ、ごめんなさい。少しぼうっとしていただけなの」
……嘘、私、どうして生きてるの? さっき、確かに死んだはずだったのに。
「そういえば、ヘレン。今年で私、何歳になるんでしたっけ?」
「16歳ですよ? 本当に大丈夫ですか、お嬢様?」
「ふふ、大丈夫よ、誕生日が待ち遠しくて聞いてみただけよ」
「なるほど! それなら安心しました。今年もまた盛大にお祝いしましょうね」
……私が処刑されたのは、17歳の誕生日。そして、今は16歳になる少し前。と、いうことは、私は1年前の過去に戻ったということ?
「ごめんなさい、ヘレナ。少し下がってもらっても構わない?」
「はい、もちろんです。調子が悪そうなので、お大事に」
ヘレナに出ていってもらって、考える。私はさっき処刑されて、一年前の自室に帰ってきた。つまり、今はまだ処刑される原因になったあの出来事は起きていない。つまり、あの悲惨な処刑は回避可能だということ?
整理しよう。私が処刑されたのは、聖女たる妹に魔法を使って怪我を負わせたという理由からだ。そしてその怪我というのは、襲ってきた魔物を倒す際に私が出した魔法の巻き添えで妹が負ったもの。普段なら絶対に当てないし、その時も当てる気はなかったのに、突然飛び出してきたせいで右腕と右肩にほぼ直撃する形となっていた。……咄嗟に庇おうとってそこでは言っていたけれど、今思えば明らかに意図的に怪我をしに行っている。……はじめから私に罪を被せる気だったということよね。
そして、突然現れたいじめ案件。私が学園で妹をずっといじめていたという根も葉もない問題が突然現れて、それもついでに罪状に追加されていた。
……よく考えるまでもない。これって全部冤罪じゃない。
理由に心当たりはある。妹は王子に取り入っていた。好きだったんだと思う。そして私は筆頭公爵家の長女ということで王子の婚約者。だから、私を蹴落とすことで婚約者の座を獲得しようとしたのだろう。
「だとしても、くだらない」
妹は化けの皮を被ったとんでもない悪女だった。それならば私はどうしようか。そう、もっと妹を超える悪女となって妹に復讐してやるのだ。私をあの笑みの下で殺そうと企て、処刑した妹に。
◇
着々と準備を進め、例の魔法で焼き殺し未遂冤罪事件(仮)の日がやってきた。もちろん魔物は同じように飛び出てくる。大きめのワイバーンだ。もちろん同じ手は喰らわない。同時に魔道具を数台発動させる。これが今回の鍵である。本当は火属性の魔法を避けたかったのだけれど、このタイプのワイバーンは残念ながら火属性以外で倒せない。だから、最小限の高火力で上半身を焼き切る。このために半年で魔法を超訓練した。元々国のトップスリーに入るくらいには魔法が得意だったので今ではもう賢者も引くレベルの魔法の使い手となったくらいだ。
「ファイアボール」
一点集中、高火力。妹は「お姉様っ!」と叫びながら飛び出してきたが、ほとんど何も当たることなくワイバーンを倒せた、偉い。妹は右腕を少し負傷したらしいのでそちらに向き直り一言。
「ヒール」
前回はあまりにひどい火傷だったせいで治らなかったから証拠として出されてしまった。しかし、今回のような掠っただけの火傷なら私でも簡単だ。もう既に跡形もなく傷跡は消えている。
「大丈夫?」
「あ、はい……」
魔道具をそこで停止させた。もはや使わなくてもどうにかなるかもしれないが一応ポケットの中にしまい込む。これで前準備は完了だ。
◇
そしてほどなくして運命の日。私はやはり裁判にかけられていた。王城の裁判用の部屋にて、やはり同じように。
「殿下。私が何をしたというのでしょうか」
「とぼけるな! フィーナに先日のワイバーン討伐に乗じて怪我をさせたと聞いている! それだけではない、フィーナを学園でずっといじめていたそうだな!? 聖女への暴力、差別は処刑に値するぞ!」
――そう、前回はこれで釈明もできずにむざむざ処刑されたのだ。この胸糞悪い聖女ルールによって。あのころは婚約者としてしっかりと愛を持っていた殿下相手に、断罪された。
「なるほど、では一つ一つ釈明させていただきましょうか。まずは先日のワイバーン討伐の件ですが、あれは不運な事故ですね。私を心配して飛び出してきた妹がかわいそうに、私の放った魔法に巻き込まれて怪我を負ってしまったのです」
「証拠がないだろう! わざとに決まっている!」
「……証拠はありますよ。そのように決めつけるのは王太子としてふさわしくない行動かと思われますが。まぁ、そう仰るのであればさっさと証拠を開示いたしましょう。――証拠はこの映像です。当時魔法を使っていたときのものです」
「そのようなものがどうして! おかしいだろう、合成に決まっている!」
「私最近、魔法の訓練のために魔法を使う際には映像を撮って後日確認しているんです。そのときのものが残っているのでお見せします」
これが私の単純でありながら最強の秘策である。割とこの録画、魔力を食うので結構練習したのだ。カモフラージュに他にも動画を取ってあるので理由に出した訓練のためというのを納得させられるようにもしてある。聖女パワーで証拠がかき消えないように一応だ。ぴっと魔道具のボタンを押せば、その時の映像が流れ始める。私が魔法を発射してから「お姉様!」とわざとらしく飛び出してくる妹の映像が。
「これは……やはり事故だったのでは?」
「むしろこれは聖女様の飛び出しを注意すべきでは?」
「そうだ、聖女としてはあるまじきサポートの仕方だな」
「これで意図的に傷つけたというのは無理があるだろう」
流れは完全にこちらに傾いた。あともう一押しで、完全に逆転する。
「あと、いじめに関する情報に関して提出させていただきます」
同じ魔道具のボタンをもう一度押すと、別の映像に切り替わる。
そこに映るのは、自分の弁当に虫を入れる妹の姿が。そしてそのあと、キャー、っと悲鳴を上げて叫んでいた。
『いやぁぁぁぁ、誰かが私の弁当に虫を!』
『今までお弁当を触られたのは誰か覚えていらっしゃいますか?』
『……学校に来てからは誰にも。ずっとカバンの中に入れていたから…… でも、家で、その……』
『誰ですの? 大丈夫です、信じますから教えて下さいな』
『っ、お姉様がお弁当を開けていたような気がするの! でも、そんなわけないわ、だってお姉様は優しくて、っ……』
そこで映像は途切れている。
「いじめを受けていると噂される妹を心配して撮影したものです」
「なんと……っ! これは明らかに聖女様に非があるだろう!」
「いくらなんでもこれは! 釈明してください、聖女様!」
「なぜこのようなことを!」
王子の後ろで勝ち誇ったようにしていた妹は一転、顔を真っ青にしていた。……あぁ、勝ったな。
これにて復讐は終了でいいだろう。実際今回は処刑されていないわけだし、これで王子と妹は失脚だ。
「あぁ、そういえばもう一つ。殿下、このような不名誉を押し付けられ大変遺憾でございますので婚約を解消させていただきますわね」
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