ペットボトルで能力開放!?【ソロキャンパーの異世界バックパッキング】

吉田C作

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第1章 ソロキャンパー、大地に立つ(異世界の)

1、ソロキャンパー、光に呑まれる。

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 ****



 9月4日、天気は快晴、まさに絶好のキャンプ日和だ。

 窓を開けるといつもは霞んで見える遠くの山々まではっきり見える。
 今日は余程空気が澄んでいるのだろうか?
 そんな事を考えながら、僕は今から行く予定のキャンプ地へ想いを馳せる。

 僕の名前は石動弓弦いするぎゆづる、キャンプやトレッキングといったアウトドア、それにアニメやゲーム等のインドアという両極端な趣味を持つ大学生だ。学生の夏休みもそろそろ終わりの時期、バイトに明け暮れた夏休みだったけどバイト先の店長に必死で交渉し、なんと一週間もの休みをもらったのである!

 今回はその一週間の休みをまるまるソロキャンプに使うつもりで準備してきた。
 ソロキャンプって何?と思われる諸兄もいるかもしれないから説明しておく。
 ソロキャンプというのは単純に一人でキャンプすることだ。

 今「ぼっちww」とか思っただろ!違うから!一人でキャンプするっていうのは楽しいんだからな!決して誘う友だちがいないとかそういうんじゃないからな!?
 ……まあいいや、話を先に進めよう。

 ともかく、僕がやりたいキャンプってのはは所謂『ブッシュクラフト』的なキャンプなのだ。
 ブッシュクラフトっていうのは、簡単に言えば必要最小限の荷物を持ってキャンプに行き、その他は現地で賄うって感じのキャンプのやり方。

 落ちてる枝や木を切って、椅子やテーブルなんかを作ったりして過ごすんだ!
 勿論焚き火を焚いて、食事はその焚き火をメインに作って……、って、いけないいけない。説明が長くなりすぎたね。

 何はともあれ75ℓのザックに装備を詰め込んだ僕は、愛車であり伯父さんの形見でもある『ザニートラック、通称:ザニトラ』に乗り込んだ。
 ザニトラの持ち主だった長見誠ながみせいおじさんは、僕にキャンプの楽しさを教えてくれた大好きなおじさんだ。それが6年前の明日、9月5日にキャンプ場で行方不明になった。

 このザニトラを残して。

 そう、今日は前から決めていた日。

 20歳になってお酒も飲めるようになって…、おじさんがいなくなったキャンプ場で、キャンプした場所で、おじさんの好きだったウイスキーを飲んで…。

 とにかくそういう訳でキャンプを楽しみながらも、おじさんの供養を一緒にやっちゃおうって感じの旅だ。しめっぽいのが嫌いな人だったし旅は楽しく行かなくちゃね!
 そう思いながら、僕はザニトラのエンジンを掛ける。
 おっと、ペットボトルのゴミ出しを忘れてた。部屋から空のペットボトルを5つ程持って来てなぜか助手席に放り込む。

 捨てようとしたペットボトルを助手席に放り込んだのかは今でも正直分からない。

 でもこの先に待っていた不思議で奇妙な旅路のなかで、このペットボトル達はとてもとても役に立ってくれるんだ……。



 ****



 家から二時間ちょっと、目的地の『茶屋のっぱらキャンプ場』に着いた僕は車から降りると、運転で凝り固まった体を伸ばしながら思わず声を出す。

「いらっしゃい!……ん?前にも来た事があるかい?それにその車、誠さんのだね」

 管理人のおじさんが受付から顔を出し声をかけてくる。

「はい!もう7年程前になりますが、誠おじさんと一緒に来た事があります!」

「そうかいそうかい。何となく覚えがある顔だったから、思わずね」

「はい、明日でちょうど7回忌だし、供養もあわせて伯父の好きだったキャンプ場で酒でも酌み交わそうと思いまして、って伯父はもういないんですけどね……」

「……あの事件か……、良く覚えてるよ。誠さんは常連も常連だったからねえ。あの日も、次は甥っ子を連れてくるから!なんて言ってたのに…車以外何も無くなっててさ、本当に不思議な事件だった。それにしても、もう6年も経ったのか…」

「本当に、いったい何があったんでしょうね。まあ、それはともかく今日から一週間!お世話になります!」

「こちらこそ!困った事があれば言ってくれ。何でもという訳にはいかないが、誠さんの甥っ子だ、ある程度は融通効かすよ!」

「ありがとうございます。何かあったらお願いしますね!」

「うんうん、それじゃあ楽しんで!」



 ****



 あの日送ってくれたメールの写真を見ながら、おじさんがキャンプした場所を探して広大な敷地をザニトラでうろつく。
 この『茶屋のっぱらキャンプ場』は敷地の広さもだけど、直火もOKでロケーションも抜群、更に快適設備が少ない為ハイシーズンでも客が少ないという、僕みたいなブッシュクラフト的キャンプを好むキャンパーにとっては夢みたいな場所だ。
 写真の場所を見つけると車を止めてザックとソフトクーラーを下ろす。
 そこは川に沿っていて、クヌギやコナラの木が心地良さげな木漏れ日を作っていた。

 早速設営を始めようとザックからキャンプの設営に必要な道具を出していく。
 今回は所謂タ―プ泊だ。

 この日の為に新調した『ヘルバーグ』のタ―プをに張って行く。
 タ―プの短辺の片側を地面にペグダウン、木と木の間に張ったロープにタ―プの中央部分の端をそれぞれプルーじっくで止める。
 そのあとにペグダウンした辺と逆の短辺にロープをつなぎそれぞれそこそこの高さの木に結び付けていく。

 このままでも充分なのだが、折角だからとポールを立てて間口を広くとることにする。
 川沿いの倒木から150㎝程度の枝を2本切り出してポールにし、先程木に結んで浮かせていた方の辺にポールを立てる。
 後はポールを刺した部分から地面にロープをペグダウンすれば、大体の寝床は完成だ。
 そこにマットや寝袋なんかを敷いていく。


 蚊帳は張らないことにした。高所の為か蚊や蠅がいないのだ。
 まあ川沿いなので虻やブヨはいるが、焚き火が虫除けになるので気にならない。

 寝床が出来たら次は台所、といっても竈を簡単に組むだけだけどね。
 河原から適当な石を拾ってきて竈状に組み上げる。
 その奥に拾ってきた枝を積み上げて『リフレクター』を作る。
 これは焚き火の火を反射させて暖を取りやすくするための物。更には薪にもなる。
 最後に『シアッズ』のランタンを準備、このランタンもおじさんから貰ったものだ。

 とりあえずの設営は出来た。後は細々した物なのですぐに準備出来る。そう考えた僕は焚き火の準備に取り掛かった。

 ザックから『ハルタシュフォッシュ』の手斧を取り出し薪を手頃な大きさに割っていく。
「カコンッ、カコンッ!」と心地良い響きが谷間に響き渡る。これはキャンプの醍醐味の一つだと僕は自信を持って言える。ある程度のサイズになった薪を更に『小割《こわり》』という細いサイズに割っていく。

 小割が出来たら次は『バックリバーナイフ』の出番だ。
このナイフは刃先から持ち手の最後まで鋼材が繋がった、所謂『フルタング』タイプのナイフで、薪に当てナイフを叩いて薪割りをする『バトニング』に最適なのだ。ちなみに予備で折りたたみタイプのナイフも持ってきている。

 おおよそ2㎝角になった小割を角から薄く削って端の方へ纏めていく。
 そうすると、先の方が羽毛の塊の様に見える『フェザースティック』が出来上がる。

 なんでこんな面倒くさい事をしてるかって思うだろ?やってみればわかる。
これは良いものなのだよ。どこかの壺好きの大佐の様な口調になってしまったけど、ライターや着火剤を使わない焚き火は本当に楽しいんだ。 そして妙な達成感もある。

 僕は現代版の火打石『ファイアスチール』を取り出すと、ほぐした麻ひもの塊に向かって『ストライカー』で火花を散らす。
 麻ひもが少し湿気っていたのか一発では火が入らず、3度ほど火花を散らしてようやく麻ひもに火が入った。火口の出来上がりだ。

 その火口を慎重にフェザースティックの一本に移す。細く長く息を吹きかけてあげるとスティックから優しい炎が上がる。更にそれをピラミッド状に組み上げた薪に移してやる。
 そうすると炎が徐々に大きくなり優しい揺らめきを見せてくれる。

「ウホッ、良い焚火!」

 焚き火が出来たところで、少し小腹が減ってきた為ザックからカップ麺を取り出す。
 このカップ麺はカップが無い。
 登山用品店なんかで売ってある、中身だけを真空パックしてある『リフィル』ってやつだ。
 ちなみに1週間分持ってきている。

 何故かって?決まってるじゃないか、料理がそこまで得意ではないからだよ。煮る・焼く・茹でるは出来るけど、得意とはとても言えない。

 お湯を沸かしてカップ麺を食べたところでふと気付いた。車にペットボトルを載せて来てしまったのだ。
まあ、水汲みなんかに使えるかなと、ペットボトルを取りに行く。
5本のペットボトルをとりあえずザックに詰め込むと、僕はマットに寝転がる。

 この場所でおじさんはいなくなった、でもなんでザニトラだけ残ったんだろう?
 キャンプの装備はなぜ残ってなかったんだ?
 そもそも、忽然と人が消えるなんてあり得るのか?

 想いを馳せる。

 当時の天気は晴れ、鉄砲水なんて起こってない、行方不明になる要素特に無かった。
 まあ、今更考えても仕方がないかと僕は目を閉じる。
 連勤の疲れか、眠気が襲い僕はそのまま僕は微睡んでいった。

「……寒っ!って暗くなってるじゃないか」

 急いでランタンに灯を入れ、焚き火を大きくする。時刻は23時。9月とはいっても山の夜は冷え込む。
 24時になっていない事に安堵する。と同時にお腹が大きく鳴った。

 ソフトクーラーから奮発した牛サーロインを取り出すと『タック』の鉄フライパンを火にかけ、暖まったところで牛脂とニンニクのスライスを落とし入れる。

「得意じゃなくてもこれ位は出来るんですよ?」

 誰に言うでもなくステーキを焼きあげると、ウイスキーを取り出す。時刻は23時30分。

 僕はキャンプと併せて、5日のちょうど零時に、おじさんと乾杯する為にここに来た。
 それが自分なりの供養だと考えたからだ。

 食事を終えると同時に腕時計のアラームが鳴る。23時55分にセットしていた。

 ウイスキーをマグに注ぐ。2杯分。 腕時計を見る。23時57分。

 マグの1つをテーブルの対面に置き、もう一つのマグを手に取り、時計を見る。


 23時59分30秒、――零時れいじ


「やっと一緒に飲めるよ、おじさん……カンパッ……!!!?」


 ――それは光だった。白くもあり、赤くもあり、青くもあった。七色に見えて、一色にも見えた。
 人間の手の形にも見えて、渦の様にも、荒れ狂う波のようにも見えた。

「な!何!?何なんだっ……っ!?」

 唐突に表れ、こちらに迫りくるその光の奔流に僕は為すすべも無く呑みこまれていった・・・。



 ****



 ――細い窓の向こうに今まで見たことの無いような光が奔った。一体あの光は何なのだろう?

 少女は興味深げな表情で一人呟く。

「なんでしょう?あの光、不思議な光ですね。神山の方向ですか…。気になりますねぇ。行ってみましょうか!好奇心には逆らうなと言いますし!」
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