ペットボトルで能力開放!?【ソロキャンパーの異世界バックパッキング】

吉田C作

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第2章 ソロキャンパー、世界をめぐる

28、盗賊討伐、ソロキャンパー。

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****



 僕達、いや僕達改め、――パーティー『明けの明星』はオ・グーニを離れ、もうすぐココノという所まで歩みを進めている。

 パーティー名を決める時、絶対色々言われると思ったのだけど珍しく文句が出なかった。
どうも『明けの明星』についての逸話、そう、神に反逆した堕天使、彼の話に皆感じる所があった様で1発OKが出てしまったのだ。
我ながら中二くさいなと思うけれども、今の自分達のおかれている状況を考えると中々お似合いじゃないかな。

 閑話休題。この世界にも勿論領地や国境の線引きはあり、それぞれの境に砦や関所の様な建造物と町がある。ココノはそういった境の町なのだけど、丁度クジュの山――、そのふもとに位置していて、オ・グーニと同じ様にフィーゴとブンゴール双方の交易でそこそこ賑わっている町の様だ。

 そのせいもあってか、町の入り口、城門には長い列が出来ている。
 僕達は未だクジュの山を下っているところなのだけど、見晴らしが良いからその行列が良く見えるのだ。

「これ、門が閉まるまでに入れるかなあ?」

「今のペースで進めば問題無いとは思います。特に何もなければですが」

 物知りリゼルさんがそう答えてくれる。

 その言葉に僕は何となく引っかかりを覚える。何の事かといえばエルダーについてだ。
ファンタジー物のラノベなんかでは『従魔登録』なんて言葉が良く出て来る。フィーゴではそんな事全く考えないで良い位素通りだったのだけど、ブンゴールではどうなのだろう?

 うん。こういう時は物知りリゼルさんにもう一度質問だ。

「ねえリゼルさん、エルはこのままで大丈夫なの?登録とかいるんじゃないかな?」

「さあ?どうでしょうか?公国では大丈夫でしたが、ブンゴールでは違うかもしれませんね。まあそうだとしても問題は無いでしょう」

 どうやらその辺はどの国も無頓着と言ったらなんだけど、余り気にすることが無いらしい。要はきちんと飼い主や主人が対応できればOKって事みたいだ。
なんというかこの世界の人達は性善説に基づいて生きているのかな……なんて。

――そう思った時期が僕にもありました。



****



「金目のもんと女、全部置いて行けって言ってんだよ!分かんねえかな?僕ちゃん!?」

「ギャハハハハハッ!!お頭!僕ちゃんは無えでしょ!ギャハハハハハッ!」

「そうですぜ!そりゃ可哀そうってもんだ!なあお坊ちゃん!?」

「あれあれ~!?お手手がプルプル震えてますよぉ!?どうちたんでちゅか~!?」

 ……只今絶賛絡まれ中です。

 まさかここまでテンプレ通りの盗賊に出会うとは思わなかった。おかげで笑いを堪えるのに精一杯である。盗賊の数は10人ほど、サーチで確認したが、お頭以下とてもじゃないが僕らに勝てるとは思えない。

なんでそこまで余裕かって?

 考えてみて欲しい。ほぼ毎日がドラゴンとの戦闘の日々だよ?今更最大レベルが20程度の盗賊に怯えると思う?タラちゃんが手を出さないにしても、ぶっちゃけ俺とリゼルさんで充分過ぎるんじゃないかな。

 僕は1歩前に出ると盗賊達に向かって言い放つ。

「金目の物も女性も渡さない。それよりも逃げるなら今のうちだよ?」

 その言葉に盗賊達は激昂すると物も言わずに襲いかかってくる。なんというか煽り耐性無さ過ぎだろ、この人達。僕は向かってくる盗賊を見据えながら『空間移動』のスキルを発動すると、リーダーの後ろへ回り込む。
 途端になんだか変な好奇心が生れてしまった様でついつい試してみる。

 そう『首トン』だ。

  色々な漫画やアニメに出てくる首トン、あれは果たして効果があるものなのか?いつも気になっていた。ネットで検索しても効果があるという意見もあれば全く無いという記事もある。命の危険に言及するサイトもあった。
 
 ――気になるよね?自分の中の好奇心が是非とも試せと轟き叫ぶよね?

 というかここまで落ち着いている自分にびっくりだな……、と戦闘中であるのに益体もない事を考えながらリーダーのうなじに手刀を叩きつける。
 直後、「トン」ではなく「ドンッ!」という音と共に盗賊のリーダーが10メートル程吹っ飛んだ。地面と平行に。

 ……は?

 盗賊のリーダーはそのまま直線状にあった木にぶつかると、意識を失った様でズルリと崩れ落ちる。

 いやいやいや、嘘でしょ?僕本当に「トン」位の力加減で叩きつけたよ?そこまで吹っ飛ぶとかあり得なくない?周りを見れば盗賊達も呆然だ。むしろ僕が呆然だ。
 
 「好機です!そのまま倒しますよ!」

 リゼルさんの声で我に返ると、空間移動を駆使して盗賊達の背後に周るとひたすら首トン。

 「ドンッ!」「ドンッ!」「ドンッ!」

 明らかにおかしい音が響き渡る。というかこれ人が出せるような音じゃないだろ。そして飛び交う盗賊達。彼らの悲鳴を添えて。

 ……うわ…僕の攻撃力、強すぎ……?

 視界の端ではリゼルさんとレッドアイが剣やら斧やらをブンブンしているのが見える。その後ろでは、千切れかかった盗賊達の腕やら足やらを治癒魔法でくっ付けているアイーシャの姿。って、は!?なんでタラちゃん竜になってんの!?うん。あれだね。これはなんとも化け物揃いのパーティーになったもんだね。
 結果から言うと盗賊達は物の数分で撃退された。勿論全員生け捕りだ。

 ……門番に引き渡された盗賊達を町の管理官が尋問した時の証言を一部抜粋する。

 ――人は平行に飛べるものだ。信じられねえかも知れないが、俺達は平行に飛ばされた。

 他にも竜を見ただの、黒ギャル怖いだの、まるでおかしくなったとしか思えない言動を繰り返す彼らは、精神に異常を来たした可能性もあるとして、連邦医療監獄に送られることとなった。




****



 門が閉まるぎりぎりにココノの街に着いた僕たちは、撃退した盗賊達を門番に引き渡すと宿を決める為に街をぶらつく。しかし困った事に宿はどこもいっぱいだった。トライアでもこんな事があったなと、野宿できる場所を探すことにする。
 そうそう、懸念していたエルダーの登録問題だけどリゼルさんの言った通り、特に何も言われなかった。まあ寝るのは町の外だけどね。
 
 ……結局良い場所が見つからず、門番にお願いして町の外にキャンプを張ることになった。今回は買い物も出来なかったため、夕食はメロウボアのみ、残念だ。美味しいけどね。
 
 夕食の後はお決まりのコーヒータイムである。鼻腔に心地良いコーヒーの香りを楽しみながら、ふとブンゴールにいる神代の方が気になったのでタラちゃんに聞いてみた。

「ねえタラちゃん、ブンゴールにいる神代の方ってどんな感じなの?」

『『ヴァエルフか、あ奴はのう…』』

 タラちゃんの話によると、名をヴァエルフと言い本来の姿は首を9つ持った大蛇の姿らしい。ああ……なるほどヒュドラって奴ね。

 性格は温厚だが、怒るとタラちゃんでもひく位怖いみたい。そのうえ頭が9つあるだけに人格も9つ、所謂多重人格らしく、いつも話が支離滅裂で意味が分からず、姦しい事この上ないらしい。
 それでも【収穫】の時は人格が統一される様で、戦いにおいては無類の強さを誇るとの事。タラちゃんが強いっていうくらいだから滅茶苦茶強いのだろうな。

 ちなみに序列は4位、それに女性だ。1位のヴィルナシーヴァさんと3位の方の事も聞いて見たけど『『そこは会ってからのお楽しみじゃの』』と教えてくれなかった。

 ともかく明日には彼女がいるところに到着する予定だ。このまま何もなければね。
人格が9つもあるなんて意味が分からないけど、ちょっと興味をひかれるな……。
いや、でも出来れば統一された人格で会いたいかな。僕聖徳太子じゃないしね。

 それと僕の力がとんでも無い事になっているのが分かったな。今までの鍛錬相手が強すぎた所為か、ここまで自分が強くなってるなんて思ってなかった。まあ、これでもタラちゃんに勝てる気は全くしないんだけども。

 むう。色々考えていたら瞼が重くなってきた。明日の道行きは気になるけれど、今日は寝袋にもぐりこむ事にしようかね――。
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