神さまの寵愛も楽じゃない

藤雪花(ふじゆきはな)

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第2夜 探しもの

5-2、

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 せっかく逃げ込んだのだけれど、ここも長く耐えられそうにない。
 足元のライトが点々と出入口を示す。映画館なみに暗かった。
 腰を落として目立たぬよう講堂を出ようと扉に手を掛けた。
 重い扉をそっと押す。
 ぱすんと音がして光とともに外気が流れ込んだ。

「歌舞伎の虎三郎、ハリウッドの映画監督、往年の銀幕スター。文楽の人間国宝。すごい人たちを呼べる力をもっているってすごいですね。藤原優子さんは」

 横の壁に背中をもたせかけて、舞台を見下ろす男に、外界の光が横顔を照らす。この前と違う、白いちぢみの着物に博多帯。半分闇に沈ませた姿の彼は、目の錯覚かぞくぞくするほど美しい男に見えた。
 

「わたしを、待ち伏せ……?」

 言葉はぽろりとこぼれ出る。
 しまったと思っても遅い。
 また、やってしまった。
 自分が彼に興味を持っているからって、彼もわたしに関心を持っているとは限らないって、さっき思い知ったばかりのはずなのに。
 わたしは彼の前で、恥ずかしいことばかりしているような気がする。

「え、待ち伏せしていたのわかりましたか?目の前で逃げられると追いたくなりますし、あなたにはあまり興味のない分野の講演でしょうから、すぐにでられるんじゃないかと思いまして。さくら君、違いますか」

 違わない。
 男は照れたように笑い、無精髭のないつるりとした顎をこすった。






 
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