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蛮族の王
13、運命の娘
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「ズインとはあの男か!彼は獣人で豹なのか」
シアノは片手で剣をもちながら上着をきる。
「あなたが助けてくれたのだな」
「助けたのはあなたの国を立て直して欲しいから!それができないというのなら、バラモンの為に僕は戦っても良い」
「加護の力でか?あなたの力は封じているはずだが?」
シアノは腕輪を指した。
「あなたの暗示は既に解けている」
リリアスがそういうと、シアノは豪快に笑った。
シアノが使えるのはただの暗示にすぎないが、多くの者は簡単に暗示に掛かる。
だが一部の者は自力でその暗示を解除することもできるのだ。
リリアスの前で守るように、頭を低くして、毛を逆立てる豹を牽制しながら、悠然と馬に乗った。
「そのようだな。私の命を助けてくれてありがとう!
あなたはわたしの運命そのものだ!
あなたの提案、しかと聞き入れる!まだ私がバレンチンの王でいられるならな!」
そして、リリアスの姿を焼き付けるように見る。
「あなたがその豹人と結婚しないなら、そしてムハンマドという男に飽きたら、バレンチンにこいっ!
わたしと一から国造りをしよう!」
リリアスは真っ赤になる。
なんだかそれは結婚の申し込みのようではないか!
蛮族の王は投げキッスをリリアスに寄越して、駆け出した。
それからしばらくして、西のジャンバラヤ族とバラモンの正規兵の軍団にリリアスとズインは助けられ、昨晩の内に助け出されていた商団の団長や荷受人、旅行者に合流する。
バラモンの正規兵は白地に赤い鷹の刺繍のムハンマド王弟の旗を掲げていた。
襲撃の夜、旅人に扮していた男二人のカップルのうち一人は、パリスに向かうムハンマドのところへ駆けた。
一人はあえてとどまったのだ。
一報を聞き、ムハンマドは自分の兵を寄越したのだった。その数100名。
ズインは助け出された時に、誰にもみられない間に豹に変わり、闇に消えた二人を追っていた。
ズインが変身できることは、誰も知らない。
ただ、救出後すぐに彼の姿がなくなり、ズインが脱ぎおとした服だけが残されていたのが不思議ではあった。
西のジャンバラヤ族はその後、正式に砂漠全土をバラモンの警察兵に替わってパトロールする役目を担うことになる。
族長は若くも厳しく強い男、イーサンだった。
リリアスが無事に助けられるのを見届けると、彼らは去ろうとする。
「イーサン!待って!!」
リリアスは呼びかけ駆け寄った。
「助けてくれてありがとう」
馬上の若き族長は一瞬ためらうも、馬から降りて、リリアスを正面からとらえた。
彼はこの二年で別人のような強い風格を備えていた。
イーサンはかなり怒っていた。
「あなたはふらふらと何をしている。バーライトにムハンマド、そして蛮族に拐われる!
商団にいて、砂漠を馬で渡っているのを見たとき我が目を疑った」
間近で見る、リリアスはイーサンの記憶よりもさらに美しく、そして洗練されていた。
「あなたが無事で、再会できてうれしい。あなたは今は幸せか?」
リリアスは悲しく笑う。
「幸せかどうかもわからないけど、わたしもイーサンが助けに来てくれて嬉しかった」
二人はぎゅっと抱き合った。
「あなたの行く道が愛に溢れていますように」
リリアスはいう。
軽くイーサンはリリアスの額にキスをした。
「あなたも!!リリー!」
ジャンバラヤ族の若き族長は、厳しさを忘れて、優しい笑顔をかつての養い子に向けたのだった。
その後のバレンチン国のこと。
シアノ王は、国内で取れる乳香、オリバナム ルバーンを貿易の柱に据える。
希少性と薬効の高さと香りの良さから金と同等の価値のある乳香は、バレンチン産は特に品質が良いとされ、さらなる高値で取引される。
この乳香の採取、精製方法、および、乳香をベースにした媚薬は門外不出とされ、さらに神秘性を高め、各国の貴族や王族、権力者たちはこぞって買い求めたのだった。
リリアスが予言したとおり、過酷な地と天変地異に苦しめられていたバレンチンを、立て直す基盤となったのだった。
蛮族の王(完)
シアノは片手で剣をもちながら上着をきる。
「あなたが助けてくれたのだな」
「助けたのはあなたの国を立て直して欲しいから!それができないというのなら、バラモンの為に僕は戦っても良い」
「加護の力でか?あなたの力は封じているはずだが?」
シアノは腕輪を指した。
「あなたの暗示は既に解けている」
リリアスがそういうと、シアノは豪快に笑った。
シアノが使えるのはただの暗示にすぎないが、多くの者は簡単に暗示に掛かる。
だが一部の者は自力でその暗示を解除することもできるのだ。
リリアスの前で守るように、頭を低くして、毛を逆立てる豹を牽制しながら、悠然と馬に乗った。
「そのようだな。私の命を助けてくれてありがとう!
あなたはわたしの運命そのものだ!
あなたの提案、しかと聞き入れる!まだ私がバレンチンの王でいられるならな!」
そして、リリアスの姿を焼き付けるように見る。
「あなたがその豹人と結婚しないなら、そしてムハンマドという男に飽きたら、バレンチンにこいっ!
わたしと一から国造りをしよう!」
リリアスは真っ赤になる。
なんだかそれは結婚の申し込みのようではないか!
蛮族の王は投げキッスをリリアスに寄越して、駆け出した。
それからしばらくして、西のジャンバラヤ族とバラモンの正規兵の軍団にリリアスとズインは助けられ、昨晩の内に助け出されていた商団の団長や荷受人、旅行者に合流する。
バラモンの正規兵は白地に赤い鷹の刺繍のムハンマド王弟の旗を掲げていた。
襲撃の夜、旅人に扮していた男二人のカップルのうち一人は、パリスに向かうムハンマドのところへ駆けた。
一人はあえてとどまったのだ。
一報を聞き、ムハンマドは自分の兵を寄越したのだった。その数100名。
ズインは助け出された時に、誰にもみられない間に豹に変わり、闇に消えた二人を追っていた。
ズインが変身できることは、誰も知らない。
ただ、救出後すぐに彼の姿がなくなり、ズインが脱ぎおとした服だけが残されていたのが不思議ではあった。
西のジャンバラヤ族はその後、正式に砂漠全土をバラモンの警察兵に替わってパトロールする役目を担うことになる。
族長は若くも厳しく強い男、イーサンだった。
リリアスが無事に助けられるのを見届けると、彼らは去ろうとする。
「イーサン!待って!!」
リリアスは呼びかけ駆け寄った。
「助けてくれてありがとう」
馬上の若き族長は一瞬ためらうも、馬から降りて、リリアスを正面からとらえた。
彼はこの二年で別人のような強い風格を備えていた。
イーサンはかなり怒っていた。
「あなたはふらふらと何をしている。バーライトにムハンマド、そして蛮族に拐われる!
商団にいて、砂漠を馬で渡っているのを見たとき我が目を疑った」
間近で見る、リリアスはイーサンの記憶よりもさらに美しく、そして洗練されていた。
「あなたが無事で、再会できてうれしい。あなたは今は幸せか?」
リリアスは悲しく笑う。
「幸せかどうかもわからないけど、わたしもイーサンが助けに来てくれて嬉しかった」
二人はぎゅっと抱き合った。
「あなたの行く道が愛に溢れていますように」
リリアスはいう。
軽くイーサンはリリアスの額にキスをした。
「あなたも!!リリー!」
ジャンバラヤ族の若き族長は、厳しさを忘れて、優しい笑顔をかつての養い子に向けたのだった。
その後のバレンチン国のこと。
シアノ王は、国内で取れる乳香、オリバナム ルバーンを貿易の柱に据える。
希少性と薬効の高さと香りの良さから金と同等の価値のある乳香は、バレンチン産は特に品質が良いとされ、さらなる高値で取引される。
この乳香の採取、精製方法、および、乳香をベースにした媚薬は門外不出とされ、さらに神秘性を高め、各国の貴族や王族、権力者たちはこぞって買い求めたのだった。
リリアスが予言したとおり、過酷な地と天変地異に苦しめられていたバレンチンを、立て直す基盤となったのだった。
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