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パリスの闇
34、パリスの神官長
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パリスには精霊の加護の力をもつ者を密かに集めている者たちがいる。
彼らは噂をきいたり、事情を知るものから情報が持ち込まれたりして、加護の力をもつ者を狩る。
狩られたものは、軍部や、王宮内や、また神官などに売り渡されたりする。
リリアスは水の巫女だったという眉唾物ではあるがその情報もあり、狩られ、神官に持ち込まれた。
神官は高額で購入してくれる。
密かな組織の、一番のお得意さまであった。
彼らから別のところに譲り渡すこともあるようだった。
買われた者がどうなるかは、狩るものには預り知らぬことだった。
黒髪の巫女を捕らえた!という話は神官長にまで伝わった。
神官長はそれをきき、奥の部屋から久々にでる。
その体は途方もなく長い年月の間に、縮み、しなびて、人の顔を付けた枯れた枝のようだった。
杖と支えがないと歩けないほど。
仕える神官たちも彼が本当はいくつなのか知らない。
150才とも200才とも言われていた。
彼は王専属で仕事をしていた。
最近はルージュ王子に肩入れをしている。
神官長が支持しているので、次の王は第二王子に決まったも同然という見方もある。
「その娘は売り渡すな」
彼の長寿の秘訣は、加護の力のある娘たちを食らっているからという暗い噂がある。
彼はパリスの生字引であった。
何か問題があれば相談をする。
的確な回答が与えられる。だから、神殿には悩める者たちの相談事も多い。
娘は連れてこられたまま、部屋に寝かされていた。
薬で眠らされ、神官長が体を引摺りながら入ったことにも気が付かない。
彼女は城の守護ともいえる水の精霊の成れの果てを解放したものだ。
長年に渡り、張り直し続けた呪術は、彼女の舞にあっさりとほどかれてしまった。
まさか、あれを解放できるとは思ってもみなかった。
神官長としては、あれを解放して国内を暴れまわって水害などを起こされるよりかは、古い時代に縛り付けた同じ位置に、呪術を強化してそのまま閉じこめておくのが良いという判断だった。
あんなに淀んで半ば実体をもつにいたったものを、まさか綺麗に浄化できるなんて思いもしなかった。
あれを定期的に鎮めるために、何百という娘の命を捧げ続けていた。
この娘はパリスに益をもたらすであろう、と神官長は直感していた。
ただ、水の祭を最後までうかがうに、彼女はルージュ王子にも、バラモン国の王弟にも縁のある者のようだった。
思いがけずもここに戻ってきた、このチャンスを決して逃すつもりはなかった。
神官長は骨に皮を貼ったような手を伸ばす。
見えぬ目を見開いて、見ようとする。
だが、白濁した目はよく娘の顔を見れなかった。
神官長はひとまず諦めた。
自分の体はとても弱っている。
少し回復が必要だった。
また体を引摺りながら部屋をでて、何やら神官に指示をだす。
準備ができた頃、別の部屋に入る。
彼は、裸でベッドに縛り付けられた者を眺めた。
水の巫女の娘は実はこの者に良く似ていた。
黒い髪、半開きの呆けた黒い目、既にここにきて15年ぐらいはたっていた。
この者はここに来たとき、大変珍しいプロトタイプだった。
古き人の二つの印を持っていた。
今は娘の印が退化し、男性化している。
樹海の民なのだろうが、そのものから確かなことを聞き出せないままだった。
長年に渡り使い続けた薬のために、既に正気を失っている。
その体を現王に捧げ、現王の命を繋ぎ続ける役目をはたしていた。
その王もこの者はもう不要だった。
王の寿命はいくら引き伸ばしても、もう限界にきていた。
神官長は、王から不要になった加護の力あるものを今までも、自分用に頂いていた。
神官長は衣服をのろのろと脱いでいく。
巫女に似た者に被さる。
(わたしに生命エネルギーを送れ)
言葉を使わずに命令した。
数刻後、よろよろだった神官長にはもう支えは不要だった。
杖さえもいらない。
「ゲーレン様」
部屋の外で待っていた白髪の神官はその不思議を目の当たりをすると、その都度驚かされる。
今年は建国300年。
初代のルシル王にはゲーレンという側近がいたな、と白髪の神官は思い出した。
パリスの神官長は代々その名を引き継いでいるのだった。
彼らは噂をきいたり、事情を知るものから情報が持ち込まれたりして、加護の力をもつ者を狩る。
狩られたものは、軍部や、王宮内や、また神官などに売り渡されたりする。
リリアスは水の巫女だったという眉唾物ではあるがその情報もあり、狩られ、神官に持ち込まれた。
神官は高額で購入してくれる。
密かな組織の、一番のお得意さまであった。
彼らから別のところに譲り渡すこともあるようだった。
買われた者がどうなるかは、狩るものには預り知らぬことだった。
黒髪の巫女を捕らえた!という話は神官長にまで伝わった。
神官長はそれをきき、奥の部屋から久々にでる。
その体は途方もなく長い年月の間に、縮み、しなびて、人の顔を付けた枯れた枝のようだった。
杖と支えがないと歩けないほど。
仕える神官たちも彼が本当はいくつなのか知らない。
150才とも200才とも言われていた。
彼は王専属で仕事をしていた。
最近はルージュ王子に肩入れをしている。
神官長が支持しているので、次の王は第二王子に決まったも同然という見方もある。
「その娘は売り渡すな」
彼の長寿の秘訣は、加護の力のある娘たちを食らっているからという暗い噂がある。
彼はパリスの生字引であった。
何か問題があれば相談をする。
的確な回答が与えられる。だから、神殿には悩める者たちの相談事も多い。
娘は連れてこられたまま、部屋に寝かされていた。
薬で眠らされ、神官長が体を引摺りながら入ったことにも気が付かない。
彼女は城の守護ともいえる水の精霊の成れの果てを解放したものだ。
長年に渡り、張り直し続けた呪術は、彼女の舞にあっさりとほどかれてしまった。
まさか、あれを解放できるとは思ってもみなかった。
神官長としては、あれを解放して国内を暴れまわって水害などを起こされるよりかは、古い時代に縛り付けた同じ位置に、呪術を強化してそのまま閉じこめておくのが良いという判断だった。
あんなに淀んで半ば実体をもつにいたったものを、まさか綺麗に浄化できるなんて思いもしなかった。
あれを定期的に鎮めるために、何百という娘の命を捧げ続けていた。
この娘はパリスに益をもたらすであろう、と神官長は直感していた。
ただ、水の祭を最後までうかがうに、彼女はルージュ王子にも、バラモン国の王弟にも縁のある者のようだった。
思いがけずもここに戻ってきた、このチャンスを決して逃すつもりはなかった。
神官長は骨に皮を貼ったような手を伸ばす。
見えぬ目を見開いて、見ようとする。
だが、白濁した目はよく娘の顔を見れなかった。
神官長はひとまず諦めた。
自分の体はとても弱っている。
少し回復が必要だった。
また体を引摺りながら部屋をでて、何やら神官に指示をだす。
準備ができた頃、別の部屋に入る。
彼は、裸でベッドに縛り付けられた者を眺めた。
水の巫女の娘は実はこの者に良く似ていた。
黒い髪、半開きの呆けた黒い目、既にここにきて15年ぐらいはたっていた。
この者はここに来たとき、大変珍しいプロトタイプだった。
古き人の二つの印を持っていた。
今は娘の印が退化し、男性化している。
樹海の民なのだろうが、そのものから確かなことを聞き出せないままだった。
長年に渡り使い続けた薬のために、既に正気を失っている。
その体を現王に捧げ、現王の命を繋ぎ続ける役目をはたしていた。
その王もこの者はもう不要だった。
王の寿命はいくら引き伸ばしても、もう限界にきていた。
神官長は、王から不要になった加護の力あるものを今までも、自分用に頂いていた。
神官長は衣服をのろのろと脱いでいく。
巫女に似た者に被さる。
(わたしに生命エネルギーを送れ)
言葉を使わずに命令した。
数刻後、よろよろだった神官長にはもう支えは不要だった。
杖さえもいらない。
「ゲーレン様」
部屋の外で待っていた白髪の神官はその不思議を目の当たりをすると、その都度驚かされる。
今年は建国300年。
初代のルシル王にはゲーレンという側近がいたな、と白髪の神官は思い出した。
パリスの神官長は代々その名を引き継いでいるのだった。
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