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戴冠パーティー
第三部 第二話「王族の子」完
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パリスの王宮でバーライト王の在位一周年を記念するパーティーが開かれていた。
前王スピネルの長かった喪が明ける。
実質上の戴冠祝いである。
当日はバーライトの100名の親衛隊と王都学校の音楽隊を伴った華やかなパレードが行われる。
アルゴンの住民300万人は連日祭りで仕事を忘れた!
国中のあちらこちらでバーライト王の一周年を祝う祭りが行われた。
学校も長期休みに入る。しばらく寮も無人になる。
リリアスはズインの南国の獣の精霊の王国に招待されている。ムハンマドはパリスの国事に王代理で行く予定がある。
この長期休暇の過ごし方をリリアスはまだどうするか決めていない。
王宮にはバラモン王都国立学校の生徒も招待されていた。
今日は授業ではなく本番である。
評価されることはなく、学んだことを活かしつつ、そうありたいようにパーティーを楽しむ。
「お姫さま、踊っていただけますか?」
ムハンマド王弟は黒髪を高々と結い上げて、髪にま白い大きなカサブランカを飾る娘に声を掛ける。
ドレスにもカサブランカの金の刺繍。
においたつ美しさだった。
娘は王弟に花の笑顔を向ける。
見るものを虜にする笑顔だった。
ムハンマドはリリアスの手をとり二人は滑るように舞台中央に躍り出る。
トムはアンジェラを誘う。
バーライトは王妃のシーラの手をとった。
アルマンはジュリア。
ズインは逆に女子からの積極的なお誘いで踊り出す。
次々、舞台にドレスの花が咲く。
「あなたはきれいになった」
ムハンマドはリリアスの腰を引き寄せる。
ふわっと二人は回転する。
「あなたが学校にいれてくれたから」
リリアスは一年の間に洗練されて、美しくまた賢く気高くなっていた。
「わたしは、自分らしく偽らないことを学んだように思う。ドレスであってもどんな姿でもわたしはわたし」
「あなたはあなただ。私の愛しい人」
ムハンマドは音楽隊に情熱的で激しい曲を所望した。
曲を聞き、リリアスはドレスの裾を高く捲り上げて結んでしまう。
伸びやかな足を惜しげもなくさらけ出す。
二人は笑顔で激しいステップで踊り出す!
バーライト王は小さくため息。
砂漠でスカートの裾を腰までたくしあげて、馬で駆けた姿と重なる。
リリーは砂漠で出会った頃となんにも変わっていないではないか!
招待された学生たちは、ダンスのクラスでは流れない激しい曲に最初は戸惑いつつも、楽しく踊るムハンマドと黒髪の娘につられて、たたきこまれた礼儀正しさも忘れて躍りだした!
パーティーに呼ばれていた吟遊詩人のノアールは、こちらも少々あきれぎみ。
会場に控えるムハンマドの親衛隊隊長で顔に傷のある男、バラーと視線が合う。
赤い肩あて胸あて姿の彼もあきれ顔。
「まったく、全然あの二人は成長していないのではないか?」
とはいいながら、元気な二人の姿は自分がこうあってほしいと思い描いていたもののように、ノアールには思えた。
そろそろ、ノアールの出番だった。
妖艶な笑みを浮かべて、小振りなたて琴を手に前に出る。
今回は解放も解呪も必要ない。
バーライト王の御代の新しきバラモンを歌うのだ。
第三部 いにしえの約定
第二話 「王族の子」完
前王スピネルの長かった喪が明ける。
実質上の戴冠祝いである。
当日はバーライトの100名の親衛隊と王都学校の音楽隊を伴った華やかなパレードが行われる。
アルゴンの住民300万人は連日祭りで仕事を忘れた!
国中のあちらこちらでバーライト王の一周年を祝う祭りが行われた。
学校も長期休みに入る。しばらく寮も無人になる。
リリアスはズインの南国の獣の精霊の王国に招待されている。ムハンマドはパリスの国事に王代理で行く予定がある。
この長期休暇の過ごし方をリリアスはまだどうするか決めていない。
王宮にはバラモン王都国立学校の生徒も招待されていた。
今日は授業ではなく本番である。
評価されることはなく、学んだことを活かしつつ、そうありたいようにパーティーを楽しむ。
「お姫さま、踊っていただけますか?」
ムハンマド王弟は黒髪を高々と結い上げて、髪にま白い大きなカサブランカを飾る娘に声を掛ける。
ドレスにもカサブランカの金の刺繍。
においたつ美しさだった。
娘は王弟に花の笑顔を向ける。
見るものを虜にする笑顔だった。
ムハンマドはリリアスの手をとり二人は滑るように舞台中央に躍り出る。
トムはアンジェラを誘う。
バーライトは王妃のシーラの手をとった。
アルマンはジュリア。
ズインは逆に女子からの積極的なお誘いで踊り出す。
次々、舞台にドレスの花が咲く。
「あなたはきれいになった」
ムハンマドはリリアスの腰を引き寄せる。
ふわっと二人は回転する。
「あなたが学校にいれてくれたから」
リリアスは一年の間に洗練されて、美しくまた賢く気高くなっていた。
「わたしは、自分らしく偽らないことを学んだように思う。ドレスであってもどんな姿でもわたしはわたし」
「あなたはあなただ。私の愛しい人」
ムハンマドは音楽隊に情熱的で激しい曲を所望した。
曲を聞き、リリアスはドレスの裾を高く捲り上げて結んでしまう。
伸びやかな足を惜しげもなくさらけ出す。
二人は笑顔で激しいステップで踊り出す!
バーライト王は小さくため息。
砂漠でスカートの裾を腰までたくしあげて、馬で駆けた姿と重なる。
リリーは砂漠で出会った頃となんにも変わっていないではないか!
招待された学生たちは、ダンスのクラスでは流れない激しい曲に最初は戸惑いつつも、楽しく踊るムハンマドと黒髪の娘につられて、たたきこまれた礼儀正しさも忘れて躍りだした!
パーティーに呼ばれていた吟遊詩人のノアールは、こちらも少々あきれぎみ。
会場に控えるムハンマドの親衛隊隊長で顔に傷のある男、バラーと視線が合う。
赤い肩あて胸あて姿の彼もあきれ顔。
「まったく、全然あの二人は成長していないのではないか?」
とはいいながら、元気な二人の姿は自分がこうあってほしいと思い描いていたもののように、ノアールには思えた。
そろそろ、ノアールの出番だった。
妖艶な笑みを浮かべて、小振りなたて琴を手に前に出る。
今回は解放も解呪も必要ない。
バーライト王の御代の新しきバラモンを歌うのだ。
第三部 いにしえの約定
第二話 「王族の子」完
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