悪女がお姫さまになるとき

藤雪花(ふじゆきはな)

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第六章 収穫祭

第45話 未来2

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 季節は確実にめぐっている。
 この世界の夏にわたしは呼び寄せられて、もう三月が経つ。
 転々と焚かれたかがり火が色づき、かさつきはじめた樹木を照らす。
 護衛の影はあるが遠い。
 会話がとどきそうな範囲に誰もいないことを確かめた。
 シャディーンの口から真実が知りたいのだ。

「アイリス王妃はジュリア姫は暴漢ではなく、自殺かもしれないというの。自分の将来を悲観しての自殺だって。だからどんなに努力しても目覚めることはないだろうって。ジュリアを再び目覚めさせるために呼び寄せられたわたしは、本当のことを知る権利がある、そうでしょ?この国では自殺はひどい罪に問われるの?だからひた隠しにされているの?ルシルス王子は暴漢に襲われたと思い込んでいるようだけれど」

 マントがないと細身が際立つその身体が、さらに細くなったように見えた。
 シャディーンの表情に苦悩ともう一つ濃厚な感情が入り混じる。
 後悔だった。

「自殺をしたものは、社会から黙殺されることになる。これだけは言える。姫の精神も身体も修復されつつある。つぎの儀式で目覚めるだろう」
「自殺を否定はしないのね。それで目覚めなければ、また四回目、五回目の儀式を受けるの?」

 さらりと聞いた。
 貴文との結婚生活がどうであれ元の世界に戻る未来を見て、かなり気持ちは楽になっていた。
 すこし気がかりなのは時折、激しくせきこむことがあること。
 赤い本に書かれた『できるだけ早い段階で異世界人を彼らの世界に戻すことが、彼らの早すぎる死を免れる方法である』という記述の内容である。
 とはいえ、まだ抜き差しならないような深刻な状況に陥っていない。
 シャディーンが体を重ねながら、あくまで治療のクルアーンを口移しで与えてくれる、その効果が出ているのだろう。

「いや、次で終わりにする」
「ルシルス王子は、目覚めるまでするつもりだと思うわ」
「そうだとしても」

 魔術師の目は夜闇の中で濃く見えた。

「お前は十分役に立ってくれた。これ以上『輝ける命の光』を分け与える必要はない。呼び寄せたからには、送り返すところまで責任をもってするつもりだ」

 ジュリア姫が目覚めなくても?
 シャディーンはジュリア姫をとても大事に思っていた。
 身体を重ねるうちに、わたしを愛し始めているのかも?
 それは思い違いにちがいないと、すぐさま自分を納得させる。
 身体を重ね、結婚をしたとしても、未来の貴文のように誰かを愛し続けている場合もある。
 貴文は死ぬまでわたしをだまし続けた。
 死んでからも、だましてほしかったのに。

 その時、背後で小枝を踏む小気味良い音がした。




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