65 / 72
第七章 目覚める
第52話 最後の儀式③2
しおりを挟む
痛くて苦しくて中にとどまり続けるのは至難の業だった。
シャディーンの切実な愛は絶えず流れ込んできては苦痛を流していく。
この世界で三ヶ月も生きて元気にいられたのはひとえにシャディーンが必死に治癒を行い彼の命を注ぎこんでくれていたおかげなのだと、今更ながらに知る。
だけど当然ではないの?という気持ちもある。
わたしをこの世界に引き寄せたのは彼なのだから、最後まで責任をもって送り返すところまでができる男の仕事なのじゃないの?
シャディーンはもう少し頑張ってくれるはず。
わたしの未来は、元の世界の貴文と共にあると水盤が教えてくれたじゃないの。
戻ったら、美奈とのレトロで効果的な愛をはぐくむ手段となった手紙を見つけ出して捨ててやる。
貴文の目の前で破り捨ててもいい。
美奈は奥手なんだから、遅い結婚相手と離婚してひとりで打ちひしがれて地元に戻ってこないように、イイ男を紹介してあげよう。実家の家業の酒蔵を継ぐ弟がうらやましいからといって避けるのではなくて、気まずかろうが、うっとうしがられようが、毎年三回は実家に戻るつもり。もちろん、旦那となった貴文を連れ、別行動なんてぜったいにしない。よそ見なんてさせない。自由にしないんだ。
水盤がみせた未来は、ひとつの可能性に過ぎないと、シャディーンは言っていなかったっけ?
もう、うまくいかないポイントだったり、不幸への分岐点、遠因は掴んだ。
もう一度、不安を解消したくて未来をみたかったけれど、正直、見る必要なんてないじゃない?
でも、本当に苦しい。
目を開きたい。
息が苦しいからやめてと、早く元の世界に戻してとシャディーンに訴えたい。
銀に輝くシャディーンのクルアーンは、いつから真っ赤になったっけ?
指一本動かせない。
もがき、あがき、焦り始めた。
不安が膨れる。
わたしの未来は、元の世界にあるのだから、大丈夫。
だから、大丈夫だとシャディーン、言って。
答えて!
わたしは生きたいの!
身体の痛みに苦しみのたうちまわり始めたわたしの意識に、ひっそりと重なるものがあった。くすりと笑った気配で、わたしじゃない何かだとわかったのだ。
シャディーンの切実な愛は絶えず流れ込んできては苦痛を流していく。
この世界で三ヶ月も生きて元気にいられたのはひとえにシャディーンが必死に治癒を行い彼の命を注ぎこんでくれていたおかげなのだと、今更ながらに知る。
だけど当然ではないの?という気持ちもある。
わたしをこの世界に引き寄せたのは彼なのだから、最後まで責任をもって送り返すところまでができる男の仕事なのじゃないの?
シャディーンはもう少し頑張ってくれるはず。
わたしの未来は、元の世界の貴文と共にあると水盤が教えてくれたじゃないの。
戻ったら、美奈とのレトロで効果的な愛をはぐくむ手段となった手紙を見つけ出して捨ててやる。
貴文の目の前で破り捨ててもいい。
美奈は奥手なんだから、遅い結婚相手と離婚してひとりで打ちひしがれて地元に戻ってこないように、イイ男を紹介してあげよう。実家の家業の酒蔵を継ぐ弟がうらやましいからといって避けるのではなくて、気まずかろうが、うっとうしがられようが、毎年三回は実家に戻るつもり。もちろん、旦那となった貴文を連れ、別行動なんてぜったいにしない。よそ見なんてさせない。自由にしないんだ。
水盤がみせた未来は、ひとつの可能性に過ぎないと、シャディーンは言っていなかったっけ?
もう、うまくいかないポイントだったり、不幸への分岐点、遠因は掴んだ。
もう一度、不安を解消したくて未来をみたかったけれど、正直、見る必要なんてないじゃない?
でも、本当に苦しい。
目を開きたい。
息が苦しいからやめてと、早く元の世界に戻してとシャディーンに訴えたい。
銀に輝くシャディーンのクルアーンは、いつから真っ赤になったっけ?
指一本動かせない。
もがき、あがき、焦り始めた。
不安が膨れる。
わたしの未来は、元の世界にあるのだから、大丈夫。
だから、大丈夫だとシャディーン、言って。
答えて!
わたしは生きたいの!
身体の痛みに苦しみのたうちまわり始めたわたしの意識に、ひっそりと重なるものがあった。くすりと笑った気配で、わたしじゃない何かだとわかったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる