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第三話 ラストノート
12、思いっきり公私混同してマス!
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「假屋崎真吾と再会したんだって?
この前、彼から連絡があってイロイロ聞いてきたわよ?」
紗良は外に出るついでに詩乃とランチである。
好きなベーグルをチョイスして、ガッツリサラダとミニデザート、コーヒーがついてお手頃値段である。
紗良はそれを聞いて、ベーグルを喉に詰めかけ、慌ててコーヒーで流し込んだ。
「え、うそ。何してんのよ、あいつ」
「再会したあんたがきれいになっていたから、急にヨリを戻したくなったんじゃあない?
あんた誰ともあれから付き合っていないでしょう?」
「そうだけど、真吾とは本当に終わったから!」
詩乃はファッション雑誌をめくる。
イケメン調香師二階堂清隆の記事が載っている。
そこには写真があって、詩乃が選んだドレスの紗良と、後ろからネックレスをつけるイケメンの二階堂、ダンディなデジャン氏、そして精悍な假屋崎真吾も写っている。
紗良の表情がうっとりしているのは、二階堂のせいだろうと、詩乃は思う。
「一度手放してから、その次にもう一度手にいれたいと男が思うなら、その気持ちは本物よ?
なんていうか、手放さないとわからないのよね、女の本当の良さというのは。
それに、紗良の前にはイケメンの二階堂清隆がチラチラしている。
假屋崎が次にあんたに告白するときは、付き合ってください、ではなくて結婚してくださいになるでしょうよ?どうするの?
あんたの、念願の夢が叶うかも」
「どうするもなにも、、。
仮定の話をされてもねえ。何年も経っているし、真吾は他につきあっている人もいるでしょうから。
万が一、結婚を申し込まれても、寿退社も今は仕事が面白すぎて考えられないし、それに今は、、、」
紗良は真吾に再会したことよりも、今は二階堂のことで寝ても覚めても頭が一杯である。
「頭が一杯って、それはまるで恋じゃない?」
詩乃はいう。
目の前の紗良は、いつみても同じようなリクルートスーツ姿から変わっていた。
眼鏡もやめて、髪もパーマをかけてまとめやすくなったこともあり、弛くシニオンにまとめている。
そして、二階堂のフレグランスをホンの少しつけている。
思わず振り返るほどのいい女っぷりである。
陳腐な表現ではあるが、サナギから孵った蝶のように、紗良は変わった。
賛辞の言葉も、身構えることなくふわっと受け入れるようになっている。
なんていうか、美人オーラをまとっているのだ。
紗良からほんのりと香る、二階堂のローズのフレグランスが紗良にきれいになってもいいのだと自信を持たせたのかもしれない。
その紗良を見ると、香りの力は偉大だと思う。
先日、C社の銀座本店で限定販売された2000個も、2日で完売だそうである。
「このところ、あんた、二階堂清隆のことばっかり話しているわよ?
それにあんなに頑なにお堅いOLだった鉄の紗良が、ほんとうにきれいになった」
「恋?まさか。彼はプロジェクトに必要な人材であって、恋愛対象にはならないわ」
紗良は否定した。
そう言いつつも、紗良は肌に触れる二階堂の熱い息やネックレスをつけたときに触れた肌の感触を思い出すと、体が熱くなる。
その胸に顔を思いっきり押し付けて、彼の匂いを嗅ぎたいと思うのだ。
彼はどんな風に愛をささやくのだろうと思う。愛しい人に向ける眼差しは、どんなのだろう。
そして、彼はどんな風に愛し合うのだろうかと想像せずにはいられない。
彼とのキスはどんな感じなのだろう。
彼を押し倒し、胸元をはだけさせ、その肌に唇を沿わせたらどんな風に彼は反応するのだろうと思う。
驚いて引きはなそうとするのか、それともそのまま紗良のしたいようにさせるのか。
こんな風に、紗良は生々しく男性を見たことがないので不思議である。
彼に近づくと、なぜかぞくぞくと体の芯が熱くなるのも事実である。
彼が今まで付き合った女性を羨ましく感じるのだ。
彼はプロジェクトの成功のための肝である優れた調香師であるということもあるが、彼を自分のプロジェクトに引き入れることによって、二階堂清隆を独占したい気持ちで一杯である。
こんな気持ちで仕事をしてもいいのかどうか疑問ではあるが、
「とにかく、今度の香りのテストに勝ち残り、絶対に彼を手にいれるわ!!」
紗良は気迫を込めて言った。
詩乃も握りこぶしを作る。
「恋も、香りテストも頑張ってね!
二階堂があんたのところでフレグランスを出したら、うちのお店に出させてもらうからね!」
「ありがとう~詩乃!がんばるっ!」
詩乃が職場に戻ると、まだ少し時間がある紗良は鞄からアロマテラピーのテキストを取り出した。
どんなテストかわからないので、取り合えず、香りについての本を片っ端から読んでいる紗良であった。
この前、彼から連絡があってイロイロ聞いてきたわよ?」
紗良は外に出るついでに詩乃とランチである。
好きなベーグルをチョイスして、ガッツリサラダとミニデザート、コーヒーがついてお手頃値段である。
紗良はそれを聞いて、ベーグルを喉に詰めかけ、慌ててコーヒーで流し込んだ。
「え、うそ。何してんのよ、あいつ」
「再会したあんたがきれいになっていたから、急にヨリを戻したくなったんじゃあない?
あんた誰ともあれから付き合っていないでしょう?」
「そうだけど、真吾とは本当に終わったから!」
詩乃はファッション雑誌をめくる。
イケメン調香師二階堂清隆の記事が載っている。
そこには写真があって、詩乃が選んだドレスの紗良と、後ろからネックレスをつけるイケメンの二階堂、ダンディなデジャン氏、そして精悍な假屋崎真吾も写っている。
紗良の表情がうっとりしているのは、二階堂のせいだろうと、詩乃は思う。
「一度手放してから、その次にもう一度手にいれたいと男が思うなら、その気持ちは本物よ?
なんていうか、手放さないとわからないのよね、女の本当の良さというのは。
それに、紗良の前にはイケメンの二階堂清隆がチラチラしている。
假屋崎が次にあんたに告白するときは、付き合ってください、ではなくて結婚してくださいになるでしょうよ?どうするの?
あんたの、念願の夢が叶うかも」
「どうするもなにも、、。
仮定の話をされてもねえ。何年も経っているし、真吾は他につきあっている人もいるでしょうから。
万が一、結婚を申し込まれても、寿退社も今は仕事が面白すぎて考えられないし、それに今は、、、」
紗良は真吾に再会したことよりも、今は二階堂のことで寝ても覚めても頭が一杯である。
「頭が一杯って、それはまるで恋じゃない?」
詩乃はいう。
目の前の紗良は、いつみても同じようなリクルートスーツ姿から変わっていた。
眼鏡もやめて、髪もパーマをかけてまとめやすくなったこともあり、弛くシニオンにまとめている。
そして、二階堂のフレグランスをホンの少しつけている。
思わず振り返るほどのいい女っぷりである。
陳腐な表現ではあるが、サナギから孵った蝶のように、紗良は変わった。
賛辞の言葉も、身構えることなくふわっと受け入れるようになっている。
なんていうか、美人オーラをまとっているのだ。
紗良からほんのりと香る、二階堂のローズのフレグランスが紗良にきれいになってもいいのだと自信を持たせたのかもしれない。
その紗良を見ると、香りの力は偉大だと思う。
先日、C社の銀座本店で限定販売された2000個も、2日で完売だそうである。
「このところ、あんた、二階堂清隆のことばっかり話しているわよ?
それにあんなに頑なにお堅いOLだった鉄の紗良が、ほんとうにきれいになった」
「恋?まさか。彼はプロジェクトに必要な人材であって、恋愛対象にはならないわ」
紗良は否定した。
そう言いつつも、紗良は肌に触れる二階堂の熱い息やネックレスをつけたときに触れた肌の感触を思い出すと、体が熱くなる。
その胸に顔を思いっきり押し付けて、彼の匂いを嗅ぎたいと思うのだ。
彼はどんな風に愛をささやくのだろうと思う。愛しい人に向ける眼差しは、どんなのだろう。
そして、彼はどんな風に愛し合うのだろうかと想像せずにはいられない。
彼とのキスはどんな感じなのだろう。
彼を押し倒し、胸元をはだけさせ、その肌に唇を沿わせたらどんな風に彼は反応するのだろうと思う。
驚いて引きはなそうとするのか、それともそのまま紗良のしたいようにさせるのか。
こんな風に、紗良は生々しく男性を見たことがないので不思議である。
彼に近づくと、なぜかぞくぞくと体の芯が熱くなるのも事実である。
彼が今まで付き合った女性を羨ましく感じるのだ。
彼はプロジェクトの成功のための肝である優れた調香師であるということもあるが、彼を自分のプロジェクトに引き入れることによって、二階堂清隆を独占したい気持ちで一杯である。
こんな気持ちで仕事をしてもいいのかどうか疑問ではあるが、
「とにかく、今度の香りのテストに勝ち残り、絶対に彼を手にいれるわ!!」
紗良は気迫を込めて言った。
詩乃も握りこぶしを作る。
「恋も、香りテストも頑張ってね!
二階堂があんたのところでフレグランスを出したら、うちのお店に出させてもらうからね!」
「ありがとう~詩乃!がんばるっ!」
詩乃が職場に戻ると、まだ少し時間がある紗良は鞄からアロマテラピーのテキストを取り出した。
どんなテストかわからないので、取り合えず、香りについての本を片っ端から読んでいる紗良であった。
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