無頼・証券マン、哲二

ハリマオ65

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1話:小田哲二の生い立ち

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 小田哲二は1949年6月12日生まれたが父親の顔は知らず一番昔の思い出は菓子屋の陳列棚だった。その理由は母が希望せずに妊娠して生まれてきて世話ができないので親切な駄菓子屋の、おばあさんに預けて、飲み屋で働いていたからだ。3歳の頃は店に買い物に来る近所のおばさん達に随分と可愛がられたそうだ。

 食べるものは、黄色い果肉のサツマイモと漬物、たまに団子とお茶だった。それでも何とか生き延びて6歳になり、その駄菓子屋から小学校へ通った。母ちゃんに新しいランドセルと買ってもらったのが本当のうれしくて枕元に
置いて寝ていた。しかし小さいときから、おばあちゃんの駄菓子の売買を見て育ったせいか、計算は素早く、ちゃんと大人と話せる明るい子供に育った。

 5歳の時は、おばあちゃんが何か用事をしてる時など、お客さんに、お金をもらい、品物と、お釣りを計算して渡してた。その頃は、おばあちゃんは、たまに昼寝をするようになった。小学生になると学校から帰ってきて夕方に
なると、お客さんを頼むと言い、夕飯を支度をするようになった。

 母ちゃんは夜遅く、一緒に食事するのは、いつも朝だけだった。それでも、なにも不思議に思わずに育っていった。やがて12歳になり中学生になった。地元の中学へ行き、母は相変わらず水商売を続けて、毎晩、小田哲二が
寝た後に布団に入る生活をしていた。

 それでも中学校では小田はクラス一の切れ者で女の子に勉強を教えてくれ数人のガールフレンドができた。その中でも重信香織という娘は賢い小田と一緒に給食を食べ、何でも質問してきて、小田の腰巾着と呼ばれているうちに
、小田の女だから手を出すなと言われるようになり仲良くなった。

 小田よりも重信香織の方が熱くなって、くっついていた。しかし小田は彼女の父親が闇市商人の親分で神田、御徒町、上野の闇市を仕切っていたことを知っていて怖くて、胸を触るくらいで、それ以上踏み込まなかった。

 その頃の小田は中学での成績は数学がトップで国語も理科、英語も記憶力が良いせいか、いつもトップクラスだった。中学の思い出は、何と言っても修学旅行。旅行の費用も母が工面してくれ、いくことができた。仲間と 修学旅行専用列車で語り合いながら出かけて、名所旧跡をめぐり、夕飯を仲良くとって、寝室では枕投げをしてはじけた。

 その楽しい修学旅行が終わり、しばらくして高校を受験して都立M高校というこの地区では1番の進学校を受験して難なく合格した。重信香織は女子校へ入り、しばらく会わなくなった。その後、高校に入ってもクラブ活動をせず毎日、早く帰り店番を続け、お客がいない時に教科書を見て復習を欠かさなかった。
*写真の列車は、1960年代、実際に使えわれていた修学旅行専用列車「ひので」です。
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