3 / 31
3話:住専問題の穴埋めに多額の公的資金支出
しおりを挟む
それというのは、1995年、世の中の目と耳は住専問題に奪われていた。住専とは住宅専門貸付会社の略称で、住宅ローン専門の貸付業者のことである。誕生したのは1970年代で、これがバブル経済に乗って急成長した。
この年の住専7社の総融資残高は11兆4千億円に達していた。その74%にあたる8兆4千億円が不良債権となり、その処理のために6850億円の公的資金を投入するという閣議決定が騒動の始まりである。
国会はこの問題を巡って紛糾し、テレビも新聞も連日大々的に報道した。問題はこの資金投入が、住専への債権者の一角をなす農協を救うためのものだと宣伝されたことである。
たしかに住専7社の債務総額12兆6千億円のうち、農協資金「農林中金、信連、共済連」の合計は5兆6千億円で全体の44%を占めていた。残りは銀行と保険会社であるが、銀行融資のほとんどは住専を設立した「母体行」のものだった。
この母体行が口をそろえて「農協の責任」を語り、マスコミがそれに乗って農協批判に追い打ちをかけた。ノンバンクの中でも悪名高いのが、住専「住宅金融専門会社」。
バブル以前は住宅ローンなど個人向け融資に力を入れていなかった銀行が、当時の大蔵省主導の下、住宅金融専門の会社を共同出資で設立したのが最初。たとえば三和銀行などが出資していた「日本住宅金融」、日本興業銀行、日本債券信用銀行が中心となって設立した「日本ハウジングローン」。
富士銀行、住友銀行など都銀が中心となって設立した「住宅ローンサービス」、住友信託銀行など信託銀行が設立した「住総」などだ。1980年代後半になって大企業が間接金融離れを起こす。
銀行からの借り入れに頼るのではなく、資本市場から資金を直接調達するようになると、銀行は住専のテリトリーだった住宅金融市場へ注力し始める。一方、住専は不動産融資にのめり込んでいった。末野興産など問題会社への貸し出しも膨らんだ。
しかも、母体行といわれる親銀行から、銀行本体では融資をしたくない質の悪い融資先を紹介されたり、既に不良債権化した融資の肩代わりをさせられたりと、住専は掃きだめ扱いだった。都内から数時間かかる地方の別荘地。
しかも別荘がある土地は崖地だった。だがその土地を担保に数億円の融資が行われた事例もあった。反社会勢力とのつながりがある「企業舎弟」と深い関係にある不動産会社にも、銀行やノンバンクは融資をした。
1社で数千億円もの融資を受けていた企業も複数あった。ある反社会勢力とつながりのある不動産会社は、かつてラブホテルをいくつか経営していた。そこへ銀行から舞い込んできた話は、飲食店やキャバクラなど風俗店が入っている商業ビルを買ってくれないか、というものだった。
そのビルのオーナーは家賃滞納で困っていた。テナントのほとんどは暴力団とつながりがあり、取り立てに行けば命の危険さえ感じることもあった。 ビルオーナーは「このビルを売りたいので買い手を探してきてほしい」と銀行に泣きついた。
そこで銀行は、同じ反社会勢力とつながりのある、この不動産会社にお願いすることになったのだ。こうしたトラブルシューティングも含めた不動産取引で銀行と反社会勢力が深くつながりを持つようになった。
なぜ、銀行は行き過ぎた担保主義の下で乱脈融資を続けたのか。1990年、大蔵省の行政指導として「土地関連融資の総量規制」が行われたのを契機に、土地取引は縮小、地価下落と共に景気も急速に冷え込んでいく、バブル経済の崩壊。
その後も、資産価格「株価、地価」の下落は続き、日本経済のデフレが進行する。1990年代に日本を襲った不良債権問題による金融機関の破綻は、まず体力の弱い小さな金融機関から始まった。
この当時、銀行の健全経営は信用の源泉であるとして、大蔵省・日銀の強力な行政指導の下で採用されていたのは、護送船団方式。その根底には「銀行はつぶれない」という神話があった。
経営が怪しくなった中小金融機関は、大銀行や近隣の金融機関に救済合併してもらうというのがお決まりのパターンだった。しかし、不良債権問題は思わぬところから国会の与野党対決案件になる。
この年の住専7社の総融資残高は11兆4千億円に達していた。その74%にあたる8兆4千億円が不良債権となり、その処理のために6850億円の公的資金を投入するという閣議決定が騒動の始まりである。
国会はこの問題を巡って紛糾し、テレビも新聞も連日大々的に報道した。問題はこの資金投入が、住専への債権者の一角をなす農協を救うためのものだと宣伝されたことである。
たしかに住専7社の債務総額12兆6千億円のうち、農協資金「農林中金、信連、共済連」の合計は5兆6千億円で全体の44%を占めていた。残りは銀行と保険会社であるが、銀行融資のほとんどは住専を設立した「母体行」のものだった。
この母体行が口をそろえて「農協の責任」を語り、マスコミがそれに乗って農協批判に追い打ちをかけた。ノンバンクの中でも悪名高いのが、住専「住宅金融専門会社」。
バブル以前は住宅ローンなど個人向け融資に力を入れていなかった銀行が、当時の大蔵省主導の下、住宅金融専門の会社を共同出資で設立したのが最初。たとえば三和銀行などが出資していた「日本住宅金融」、日本興業銀行、日本債券信用銀行が中心となって設立した「日本ハウジングローン」。
富士銀行、住友銀行など都銀が中心となって設立した「住宅ローンサービス」、住友信託銀行など信託銀行が設立した「住総」などだ。1980年代後半になって大企業が間接金融離れを起こす。
銀行からの借り入れに頼るのではなく、資本市場から資金を直接調達するようになると、銀行は住専のテリトリーだった住宅金融市場へ注力し始める。一方、住専は不動産融資にのめり込んでいった。末野興産など問題会社への貸し出しも膨らんだ。
しかも、母体行といわれる親銀行から、銀行本体では融資をしたくない質の悪い融資先を紹介されたり、既に不良債権化した融資の肩代わりをさせられたりと、住専は掃きだめ扱いだった。都内から数時間かかる地方の別荘地。
しかも別荘がある土地は崖地だった。だがその土地を担保に数億円の融資が行われた事例もあった。反社会勢力とのつながりがある「企業舎弟」と深い関係にある不動産会社にも、銀行やノンバンクは融資をした。
1社で数千億円もの融資を受けていた企業も複数あった。ある反社会勢力とつながりのある不動産会社は、かつてラブホテルをいくつか経営していた。そこへ銀行から舞い込んできた話は、飲食店やキャバクラなど風俗店が入っている商業ビルを買ってくれないか、というものだった。
そのビルのオーナーは家賃滞納で困っていた。テナントのほとんどは暴力団とつながりがあり、取り立てに行けば命の危険さえ感じることもあった。 ビルオーナーは「このビルを売りたいので買い手を探してきてほしい」と銀行に泣きついた。
そこで銀行は、同じ反社会勢力とつながりのある、この不動産会社にお願いすることになったのだ。こうしたトラブルシューティングも含めた不動産取引で銀行と反社会勢力が深くつながりを持つようになった。
なぜ、銀行は行き過ぎた担保主義の下で乱脈融資を続けたのか。1990年、大蔵省の行政指導として「土地関連融資の総量規制」が行われたのを契機に、土地取引は縮小、地価下落と共に景気も急速に冷え込んでいく、バブル経済の崩壊。
その後も、資産価格「株価、地価」の下落は続き、日本経済のデフレが進行する。1990年代に日本を襲った不良債権問題による金融機関の破綻は、まず体力の弱い小さな金融機関から始まった。
この当時、銀行の健全経営は信用の源泉であるとして、大蔵省・日銀の強力な行政指導の下で採用されていたのは、護送船団方式。その根底には「銀行はつぶれない」という神話があった。
経営が怪しくなった中小金融機関は、大銀行や近隣の金融機関に救済合併してもらうというのがお決まりのパターンだった。しかし、不良債権問題は思わぬところから国会の与野党対決案件になる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる