龍神様の住む村

世万江生紬

文字の大きさ
62 / 81
季節話

龍神様と向日葵

しおりを挟む
 夏の暑さも本腰を入れ始めた時期。龍平は龍神様に乗って空を滑空していました。

「おおぉ~!これは!かなり楽しいですね!」

「空を飛ぶのも気持ちがいいものだろう。」

「はい!この風を切る感じ、とても気持ちいいです!」

「くはは!しっかり捕まっているのだぞぉ。」

「分かってますよ。ま、仮に落ちても龍神様は助けてくれると信じていますけど。」

「な、なんだ、急に愛を囁くなぁ。嬉しさで宙返りしそうになる。」

「囁いてはいません。」

龍神様の大きな背中に乗って風を切り、空を飛ぶ感覚を楽しんでいた龍平ですが、今日は単に空の散歩をしているわけではありません。龍神様に連れていきたいところがあると言われたので連れて行ってもらっているところです。

「ところで龍神様、どちらに向かっているのですか?」

「もう着くぞぉ。」

そう言って龍神様がそれ以上進むのをやめたのは、地面が一面黄色に染まっている土地でした。

「うわっ!すごい!これは...花ですか?」

龍平に負担をかけないようふわっと地上に降り立った龍神様は背中から龍平をそっと下ろします。上空からでは見えなかったそれが目の前に現れた龍平は、黄色いそれが花であることに気づきました。

「そうだぁ。これは向日葵と言う花だ。この時期に綺麗に咲いているのだぁ。」

「へぇー!これだけ大きな花がこんなに群れて咲いていると圧巻ですね。」

「そうだろう。この景色をお主に見せたくてのぉ。」

「確かにこれは見に来たかいがありますね...。ありがとうございます。龍神様。」

龍平は目の前に広がる向日葵に感動しながら龍神様にお礼を伝えます。照り付ける太陽に向かって全身で咲くそれをみて、どこか勇気をもらった龍平です。

「この花はいつだって太陽に向かって咲くそうでな。いつも前向きな龍平にぴったりだ。」

「俺そんなに前向きですかね。」

「くはは。お主は自分で思っている以上に前を向いて、力強く、格好良く生きておる。私が保証する。」

「...なんか、そう言う風に褒められると照れますね。」

龍神様はいつだって龍平に愛を伝えていますが、龍平の人間性を真正面から褒められたことはありませんでした。誰だって自分を見て、知って、褒めてもらえるのは嬉しいものです。龍平は思わず顔を赤くしながら龍神様から顔を背けます。

「まぁ、そんな勇ましいお前を嫁として甘やかすことに愉悦を感じるのだがぁ。」

「台無しです。せっかく分かりやすいくらいに照れたというのに。」

「ぬぁ!何故だ!なぜいつもの塩対応に戻る!」

「当たり前でしょう。もう...そんなことより向日葵を楽しみましょうよ。あ、龍神様、面白いこと考え付きましたよ。これだけ花が多ければ俺が中に入っても分からなさそうじゃないですか。俺この向日葵の中に隠れるので、どこにいるのか当てて下さいよ。」

「む、なかなか面白そうだな。良かろう。無事見つけられたらそのまま組み敷いてもよいか?」

「いいわけないでしょう。」

「これだけ花が多ければ外から見えんと思うぞ?」

「やかましいですよ。見つけられたら隠れる側交代です。ほら、十数えて下さい!」

龍平はそう言うと向日葵の中に入って行ってしまいました。そんな向日葵の中を駆け抜けていく龍平の後姿を見て、何とも言えず感慨深い気持ちになる龍神様なのでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とある冒険者達の話

灯倉日鈴(合歓鈴)
BL
平凡な魔法使いのハーシュと、美形天才剣士のサンフォードは幼馴染。 ある日、ハーシュは冒険者パーティから追放されることになって……。 ほのぼの執着な短いお話です。

僕のポラリス

璃々丸
BL
 陰キャでオタクなボクにも遂に春が来た!?  先生からだけで無く、クラスカースト上位の陽キャ達も、近隣に幅を効かせる不良達からも一目置かれるまるで頭上の星のようなひとだ。  しかも、オタクにまで優しい。たまたま読んでいたボクの大好きなコミック「恋色なな色どろっぷす」を指差して、「あ、ソレ面白いよね」なんて話しかけられて以来、何かと話しかけられるようになっていった。  これだけだとたまたまかな?と思うけど距離も何かと近くて・・・・・・コレ、ってボクの勘違い?それとも?  ・・・・・・なぁーんて、ボクの自意識過剰かな。  なんて、ボクの片思いから始まる甘酸っぱいお話。  みたいなBSS未満なお話。  

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

《うちの子》推し会!〜いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます〜お月見編

日色
BL
明日から始まる企画だそうで、ぜひとも参加したい!と思ったものの…。ツイッターをやっておらず参加の仕方がわからないので、とりあえずこちらに。すみませんm(_ _)m

処理中です...