龍神様の住む村

世万江生紬

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季節話

龍神様と旅

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 皐月の緑も深まる頃、龍平は空を見上げ目を細めておりました。

「んー、いい天気だ!こういう日は出かけたいなぁ。」

「妙案だな。」

「うお、いたんですか龍神様。」

龍平が伸びをした横に急に現れた龍神様は龍平の言葉に頷きました。

「こんな良い天気の日には旅行にでも行こうではないかぁ。」

「おー、龍神様にしてはいいことをいいますね。」

「にしては、とはなんだぁ。」

「普段突拍子もないことしか言わないから…。」

「失礼なやつだなぁ。まあいい。龍平はどこか行きたい場所はあるか?」

龍神様に聞かれた龍平は嬉々として答えようとして留まります。それもそのはず、龍平は生まれてからずっと村で暮らしてきました。村以外の場所を知らないのです。返答に困る龍平に龍神様は優しく微笑みました。

「龍平、私はお主と一緒に行ってみたい場所が山のようにある。」

「え、あ、はぁ。」

「だからこれから、ゆっくり色々な所へ行ってみたい。」

「…そうですか。」

「私と共に、旅に出てくれるか龍平。」

「え、それはちょっとめんどくさいな。」

「そこは肯定してくれまいかぁ!?」

いつものように受け入れ難い愛ゆえの要求をした訳でもないのに冷たくあしらわれるのは流石に憤慨する龍神様です。

「ふ、冗談ですよ。いいですね。ゆっくりと時間をかけて色々なところに旅に出るのも面白いかもしれません。」

「むぅ、なんだ冗談。本気にしか聞こえなかったぞぉ。」

「でも龍神様、俺は旅先に選ぶような場所は知りませんから、龍神様が選んでくださいよ。」

「それはもちろんそのつもりだぁ。」

「でも龍神様、俺と龍神様じゃ進む歩幅が違いますから、いざとなれば俺を運んでくださいよ。」

「それもまあ、そうだなぁ。」

「でも龍神様、俺は龍神様の屋敷に住んで農業をしているだけなので手持ちもありません。金銭は全て龍神様持ちでお願いしますよ。」

「そ、それも、まあ…。」

「でも龍神様…」

「分かった分かった!全て私がしようぞぉ!」

旅に出ると一言で言っても、細かい旅程や準備は大変大事。親しい仲であったとしても、甘えて、許容して楽しい旅にしていくのです。
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