龍神様の住む村

世万江生紬

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季節話

龍神様と日記

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 梅雨に入り、雨の降る日も多くなった頃。龍平は掃除のために入った龍神様の部屋で頁の開かれた書物を見つけました。

「ん?なんだこれ?」

龍平は開かれた頁に、龍神様の文字が書かれていることに気づきました。

「これは...日記か。」

龍神様直筆の文字が書いてあるということは龍神様の日記でしょう。ここに書かれていることに興味を覚えます。ウズウズと手を伸ばし、こっそり読んでしまおうと企みました。が、

「いや、人のものを勝手に読むのはよくないな。」

龍平はしっかりとした倫理観の持ち主でした。伸ばしかけた手をすぐに引っ込め、うっかり見てしまわないように頁を閉じると掃除に戻りました。

「いや読んでくれぬかぁぁあぁぁ!?」

思わず突っ込みの声を上げるのは龍神様でした。実は一連の流れを隠れて覗いていたのです。

「うお、なんですか大きな声出して。」

「いやそこは読むところだろう!?読んでくれぬのかぁ!?」

「なんですか、読んでほしかったんですか?」

「そうだぁ!?掃除のために部屋に入ると頁の開かれた日記が置いてあるなんて、こっそり読む以外の行動取らぬだろう!普段の私が何を思っているのか知るいい機会だし、自分のことをそう思っているのか赤裸々に描かれているのかもしれぬのだぞぉ!?気にならぬのか!?」

「あぁ、これ自作自演だったんですね。」

「ぬぅぅ、そうだぁ。隠れてこっそり日記を読み、私の隠れた本心を覗いてしまう龍平が見たかったのに...。」

龍平が掃除に入ることを知ったうえで、あえて見えるところに興味をそそるよう頁を開いて日記を置いていたのは龍神様の故意によるものでした。欲望のままに。

「いや...まあちょっと見てみようかなと思いましたけど、でも人のものを勝手に見るのはダメでしょう。」

「お主本当にちゃんとしているのだなぁ...。ちょっと魔が差すとかないのか。」

「なんですか、読んでほしいんですか?お願いされれば読みますよ?」

「そうじゃないのだぁ。こっそり読んでほしかったのだぁ。」

「?ちょっと意味が分かりませんね。」

「くっ...!この絶妙な意味合いが分からぬのか...。」

現代の漫画的表現ならばよくある状況ですが、龍平にしてみれば読んでほしいと言ってくれれば読むし、読まないでほしいと言ってくれれば読まないというただそれだけのことなので、意味が分かりません。

「それに、俺の事本当はどう思っているのか知りたい...とかそういうの、よく考えたらないですしね。龍神様はいつだって大事なことは言葉で伝えてくれるから。」

「龍平...。」

「ほら、そういうことなんで。別に俺がそれを読む必要性は感じませんけど、読んだ方がいいです?」

「...いや、良い。これからも私の思いのたけ、普段から口にしておる龍平への愛をしたためるとする。」

「そうですか。なんか怨念とか宿ってそうですねそれ。気持ち悪。」

「なんでこのいい話っぽく終わりそうなところでそんなこと言う!?」


 信じているから、こっそりしなくても何の問題もないわけです。それは龍神様も、龍平も同じことです。
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