ミソフォニアで苦しい話

世万江生紬

文字の大きさ
19 / 20

1月12日

しおりを挟む
 この日はいつものようによる9時頃、母と一緒にテレビを見ていました。あーだこーだと言いながらのんびりテレビを見る時間は私は結構好きです。ですが、この日は間が悪かったです。

「ウェッホン!ゲホォ!!」

この日、例の感染症の後遺症がまだ治らない母はいつもより酷く咳をしていました。しかもただコンコンッという可愛らしいものではなく、吐くんじゃないかと思うくらい嘔吐くような咳でした。母が可哀想だと、辛そうだと、まあ思うのが普通でしょうね。ですが私にはそんなこと考える余裕がありません。ただひたすらに耐えていました。自分の部屋に行っていれば良かったのでしょうか。でも私はゆっくり母とテレビを見る時間が好きなんです。我慢さえすれば、特に問題は無いと思っていました。でも、耐えられませんでした。

「うるさーい、お茶飲んで。」

これくらいならいいでしょう。咳をしているのだからお茶を促すのは間違っていないはずです。母もソファから立ち上がって机に向かおうとします。しかし、動作が遅い。ノソォッと立ち上がっては咳をして、動こうとしては咳をして、止まりません。治りません。その時無性に怒りが湧きました。

私はずっと我慢している。それこそ後遺症が出始めてからずっと我慢している。うるさいと口に出してはいるけどやめろとは言っていないし、もちろん手を挙げたりなんてしていない。ずっと一人誰にも理解されない苦しみに耐えている。それなのにこの人は、私が辛い思いをしているから何とかしなきゃという思いもなく、ただお茶を飲むという行為をこんなにもチンタラとするのか。というか咳が出るなら身近に飲み物を置いておけないのか。何も食べていないのだからのど飴とか舐められるだろう。グルグルと頭をネガティヴな思いが回りました。でもちゃんと分かっています。それを母に押し付けるのは違うと。声に出して文句を言うのは違うと。だから私はその場を逃げ出しました。「もおぉおお!」という声は出ましたが、文句を言わずただ立ち去るということが出来ました。

私にとっては本当に頑張った結果でも、理解してもらうことなんて出来ない。もう理解とか要らないので、私の逃げることが出来たという結果によく頑張ったねって誰か、言ってください。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

『大人の恋の歩き方』

設楽理沙
現代文学
初回連載2018年3月1日~2018年6月29日 ――――――― 予定外に家に帰ると同棲している相手が見知らぬ女性(おんな)と 合体しているところを見てしまい~の、web上で"Help Meィィ~"と 号泣する主人公。そんな彼女を混乱の中から助け出してくれたのは ☆---誰ぁれ?----★ そして 主人公を翻弄したCoolな同棲相手の 予想外に波乱万丈なその後は? *☆*――*☆*――*☆*――*☆*    ☆.。.:*Have Fun!.。.:*☆

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

感想欄を閉じます

有栖多于佳
エッセイ・ノンフィクション
感想欄に悪口を書く人がいるので、閉じる決意が出来ましたと言う話です。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...