僕が一人暮らしをするまで

世万江生紬

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第25話

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○月×日

 一人暮らしを始めて一か月も過ぎた頃、そろそろこの生活に悩みも出てきた。まずはシンプルに面倒くさくなってきたことだ。元々面倒くさがり屋な性格と几帳面な生活が同居している僕だがこの性格が本当に災いしてきたと思う。ご飯は丁寧に三食きちんとバランスの良いものを食べたい思いと作るのがとにかく面倒くさい気持ちが対立し、洗濯されて綺麗な衣服に袖を通したい思いと洗濯機を回すのも干すのも取り込むのも面倒くさい思いが対立している。世の人間はこの気持ちにどうやって折り合いをつけてきたのか、何なら僕は一人で暮らしているので何もかもが一人分だが家族の分まですべてやってのけていた世のお母さんたちはどれほど愛に満ち溢れているのか嫌でも考えさせられるものだ。

 そしてこれは僕の職業特有の悩みだろうが、生活サイクルが安定しないことだ。まず僕の職業は早出普通勤遅出があり、このため起床時刻も帰宅時刻も様々なのだ。寝る時刻は大体いつも一緒なのでシンプルに睡眠時間が毎日違うことになるのだが、まあそこは置いておいて帰宅時刻が毎日違うのは正直困る。ご飯を作ろうと思っても、早く帰れる日は時間があるけれど遅出で帰るのが遅くなる日はどうしても作る時間はない。もちろん買い物に行く時間なんてもってのほか。そしてさらに早出で早く帰れる日の予定でも子どもに関するトラブルで保護者と話をしなければならないとなった日には残業確定で早く帰宅することはできない。こんな安定しないサイクルで安定したルーティンなどこなせるわけもないのだ。

 そして小さな悩みとして床がべたべたする、ということに困っている。フローリングの床なのだがとある箇所だけ異様にべたべたするのだ。スリッパで歩いていたらつんのめってスリッパが脱げてしまうほどにべたつくので多少だが日常生活に支障も出て困っている。そしてこれが床全ての面というのであれば床が原因なのだろうと思うのだがべたべたするのは玄関からダイニングに入る扉前とサンルームの扉前だけなのだ。なぜこの二か所だけべたべたするのか不思議でならない。


○月×日

 床がべたべたする原因が判明した。特定の箇所だけべたべたするのがやはり異常だと感じ、この箇所だけに関係することを考えた結果ファブリーズが原因だと判明した。部屋の消臭や除菌を目的として寝る前カーテンにファブッていたのだがこれが原因だったのだ。玄関前扉にもサンルーム前扉にもカーテンをしており僕は毎日このカーテンにがブリーズをしていたのだがまさかこれが原因だとは思わなかった。調べてみるとファブリーズの液がフローリングに付着すると確かにべたべたするという結果もあるようで、気づいてすぐに止めるとべたべたすることはなくなった。ちなみにカーテンは床がべたべたするから網戸にしてみようかと試してみたのだが虫が大量発生したのですぐにやめた。ただ先ほどにも記した通り消臭や除菌を目的としていたのでそれの対処をするために専用の置き型ファブリーズは購入することになったが問題はない。これからもトライ&エラーで行こうと思った僕だ。

 そしてご飯のサイクルについてもトライ&エラーだ。毎日安定しない時間に帰ることになるので、そもそもすべての料理を作り置きにすることにした。休みの日に一気に大量に買い溜めして一週間分の食事を用意し、それを帰ってチンして食べれば時間はあまり関係なくなる。むしろ早く帰れた日にはご飯を作る時間が無くなった分余りあるので小説を書いたりゲームをしたり趣味の時間に回せるようになったのは莫大な利益だ。買い物をしているスーパーも月曜は魚が安い日で火曜はパンが安い...などといったお得なキャンペーンを毎日やっているのだがこれに乗っかることはもう不可能なので、土曜日のポイント8倍デーのみ気にするようにした。僕はお得な日に買っておかないととてももったいなく感じてしまうたちなので、もう最初から目当てのキャンペーンを一つに絞ることは僕にとってとても大切なライフハックなのだ。というわけで土曜日が僕のまとめ買いデーであり、この日に単価の高い米や箱買いしているお茶を買う。その他の曜日に買い物をするときはポイントを使って安く求めるのが新しい僕のルーティンだ。

 一人で生活していれば悩みも出てくるものだが、これもすべてやってみて良い方向へ変えていくというトライ&エラーが試せるのも一人暮らしだからこそだ。ここにも一人暮らしの醍醐味を感じられている。
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